<主張>石破氏と中東情勢 — 首相の資質欠如に呆れる
社説(2025年6月25日)
◎首相に必要な外交安保の資質が欠如
日本の首相の最大の責務は、外交安全保障を通じて国家と国民を守り抜くことだ。石破茂首相にはそれを担う資質に欠けていると指摘せざるを得ない。
◎中東情勢を無視した国会閉幕後の記者会見
国会閉幕を受けた首相記者会見の有様(ありさま)と、招待されていた、オランダでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に首相が欠席したことから、それが分かる。
石破首相は23日夜の会見で、国会で党派を超えて合意形成を進めた結果、令和7年度予算が成立したと胸を張った。先進7カ国首脳会議(G7サミット)などに参加し各国首脳と会談したと誇らしげに語った。
◎“キッチンカー”より優先されるべき国際危機
それはよいとしても、約20分間の冒頭発言で中東情勢に触れなかったのは極めておかしい。防災対策をめぐりキッチンカーなどの備蓄を増やす話をしたが、それくらいなら中東情勢にも時間を費やすべきだった。
この時点で、イスラエルとイランの戦いの行方がどのような展開をみせるか、予断を許さない情勢だった。首相が会見で真っ先に語るべきだったのは、中東における戦火に対し、日本政府がどのような見解を持ち、どのような対応をとるつもりか、だったはずだ。
◎エネルギー安全保障と国民不安への無配慮
ペルシャ湾は日本のエネルギー輸送の生命線である。国民や経済界の不安を解消し、必要であれば国民に協力を求めるべきだったろう。
首相が会見で中東情勢に言及したのは記者に質問されてからだ。それも体系だった答えではなく、別の複数の記者が質問を重ねた。
しかも、この首相の会見で、現地邦人の退避に尽力している外務省や自衛隊への感謝の言葉はなかった。内閣の長、自衛隊の最高指揮官であるのに、呆(あき)れるほかない。国際情勢への感度が鈍く、ことの軽重が判断できず、部下への思いやりに欠ける姿勢は看過できない。
◎NATO首脳会議を欠席—外交音痴の証明
NATO首脳会議を欠席したのも大問題だ。トランプ米大統領の出席見送りが理由の一つだったが、トランプ氏は結局出席することになった。なんと間の悪いことか。首相は24日朝、オランダへ出発すべきだった。
トランプ氏がいなくとも、他のNATO諸国の首脳と意見交換し、日本とNATOの結束を固めれば、大いに日本の国益を増したはずだ。それが分からないセンスの欠如は恐ろしい。