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私の課長時代 伊藤忠商事社長 岡藤正広氏 商社の鉄則、逆張りで勝負…日経新聞9月5日13面より

2011年09月05日 16時32分41秒 | 日記
トラサルディとの覚書、翌日の契約書は数字変わる  伊藤忠商事社長 岡藤 正広氏

 伊藤忠商事の岡藤正広社長(61)は課長就任直後。「トラサルディ」と格闘する日々が続いた。

トラサルディとライセンス契約したのは1986年。ジーンズから時計、バッグ、婦人物と伊藤忠のブランド事業は大きく伸びました。ただ相手のニコラ・トラサルディ、この人には本当に振り回されました。

もめるたびにイタリア・ミラノ郊外の事務所に駆けつけるんですが、朝着いて少し話すと、ほかの人と電話で話しちゃう。午後に戻ると、どこにいるか分からない。じらし作戦ですわ。

何とか説得し、覚書にサインしてくれと頼むと「分かった。明日10時に来い」とやけに物わかりがいい。翌日行くと、秘書に渡され
た契約書は数字が変わっとるんですな。今の人は海外相手に簡単にサインしちゃうけど、僕は契約書は今でも1枚ずつ確認しますよ。

 次のビジネスにつながる教訓も得た。

ブランドはライセンス契約だけでなく、商標を丸ごと買収せなあかんと思い至りました。次に手がけたのが「ゴンバーズ」です。これが大成功。93年に始めて、96年の売上高は180億円。一躍業界トップです。

ところが問題が起きた。地方の小さな量販店でも売っていたのを知った米本社が「イメージが悪くなる。ライセンスを承認しない」
と突然言ってきた。結局ペナルティーを払って解決しましたが「こんなんでは駄目や」と思いました。

伊藤忠は2001年、経営破綻したゴンパーズの株式5%と日本での独占販売権を取得する。ゴンパーズは最終的にナイキが買収したんですが、今度はナイキが日本の権利を何度も買いにきました。それはそうでしょう。コンバースの世界戦略で、日本だけがすっぽり抜けているわけやから。お客さんが困るから売りませんけどね。

その後も海外ブランドとの提携をまとめ続けた。99年、10億円以上の利益を稼ぐ部門を表彰する社内制度ができました。ウチの部門は9回中7回受賞しましたが、最初のスピーチが受けた。商社の商売にはよく言われる鉄則があります。「大企業と商売せえ」 「ビジネスは簡単にせえ」 「クレーム起こさすな」の3か条です。僕は真逆のことを言った。

商社はある程度ビジネスがうまくいくといらなくなったりする。だからまず商社を必要とする中小企業と商売せえ。そしてビジネスの仕組みはできるだけ複雑にせえ。さらに商社機能を評価されているのだから、問題が起きることは歓迎せよと。印象が強かったのか今でも話題になります。

04年に繊維部門トップに。6年で部門利益を倍増させ、社長に登用された。
振り返れば苦労と失敗の連続ですよ。いつ失脚するとも知れず、前しか向きませんでした。出世はたまたま。若い人には「出世が遅いとか気にするな、なんぼのもんや」と言いたいな。会社人生、業績がついてくれば全部解決する。

悪いこともあればいいこともある。人生そんなもんですよ。


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