文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

何度も説得したがダメで、しょうがないから文藝春秋で発表したらサンスポ芸能部に左遷された。

2022年05月19日 10時12分30秒 | 全般

以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである事を証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
読んでも分からない
新聞記者生活で何度か上とぶつかった。
その一つは戦後間もないころ日本人操縦士が米政府に雇われ、B17爆撃機でソ連や支那にスパイを送り込んでいたという特ダネを取ったときだ。
操縦士の中には日航機長になった人もいて、生々しい証言をしてくれた。
文句なしのネタだ。
長期連載もやる気だったが、編集責任者は「日米関係は微妙な時期にある。米国に不都合な話は載せられない」からボツだという。
意味が分からない。
何度も説得したがダメで、しょうがないから文藝春秋で発表したらサンスポ芸能部に左遷された。インディラ・ガンジー暗殺に続いたシーク教徒の大虐殺の報道でもぶつかった。
まだ燻るシーク教徒の遺体の遠景写真をカットに使ったら「朝食時に読む新聞に相応しくない」とボツを言ってきた。
宗教に絡む憎悪の凄まじさが一目で分かる。アングルもいい。読者には食事どきに読むなと言えば、と反論してまた処分された。
メキシコ南部で起きたマヤの反乱のルポでも上と意見がぶつかった。
スペイン人はここで黄金を奪い、男も女も殺し、処女だけは生かし、犯した。
それで混血のメスチソが生まれ、今ではメキシコ人口の6割を占める。
より白ければ社会的にもいい位置につけた。 
一方で森に逃げたマヤの末裔も1割を占めた。
ご先祖様なのに世間は汚いものを見るように存在を無視し続けた。
それでも政府は彼らに文化の光を、と森から出して近代的な村に住まわせた。
生活は保障されたが、ただ村を出ることは禁じられた。
それが不満で蜂起したのがその時の反乱だった。
隔離村で機(はた)を織る少女に話を聞けた。
彼女は「先祖が森に逃げたのを恨む」と言った。
「逃げずに犯されていたら白い血を貰え、外にも出られたのに」 
彼女はまた同じ肌色の日本人が高級メスチソを通訳に使い、指図している姿にも素直に驚いていた。
確かに通訳はほとんど白人に見えたが、メスチソ特有の悩みもあった。
「赤ん坊が生まれてくるとき白人顔か、それとも先祖の血が蘇るか、それが怖くて……」
そういう己の血への不条埋な嫌悪感も織り交ぜて送稿したら、ボツだった。
たった100行の中に犯すとか人種差別的な言葉とかが36ヵ所もあったからだと上は説明した。
反乱は優れて人種問題なのに人種を語るなという。
なぜなら日本では人種と宗教を人権と見做し、書かない方向にあった。
その分、よその国のことは良く書く。
そのためなら特ダネだって没にする。
それでも産経はまだいい方で、例えば朝日は在日の犯罪者ですら通名表記して民族を消す。
和風ペンネームを使う在日の作家に、日本批判をやらせた。ほとんど八百長だ。
些末な韓国報道はそれでもいいが、他の国際問題を人種、宗教抜きで書いたら意味不明になる。
マヤ反乱と同じころ、ハイチに米軍が出動した。大統領と軍部の対立だと新聞は書いたが、実際は白人混血の黒人と純粋黒人の対立だった。
白人が協力してみな混血児にするしか解決はないと言われる。
ウクライナ問題もまた人種宗教が複雑に絡む。
ウクライナはロシアと同じスラブだが、西半分はカソリックで東側がプーチンと同じ東方正教会系になる。
その東側でもスターリンに餓死させられたホロドモールの記憶が残る。
もう一つ。そのウクライナはユダヤ人殺戮のポグロムの本場だった。
それを題材にした『屋根の上のバイオリン弾き』はオデッサで書かれた。
そしてゼレンスキー大統領も、彼の背後に控えるオリガルヒのコロモイスキーもともにユダヤ系だ。
そして後方から支援するNATOはロシアと同じ東方正教会系のセルビアを倒している。
そのどれも新聞は書かない。
だから読んでも分からない。

 


最新の画像もっと見る