以下は前章の続きである。
異常に男児が多い
台湾問題について、中国が台湾と国交を結んでいる国々に働きかけ、次々に断交させて台湾を孤立させている手法を、米国は批判した。
すると、楊氏は「台湾は中国の不可分の領土の一部だ」と主張し、魏氏も「中国は如何なる犠牲を払っても祖国統一を維持する。米国が南北戦争で払ったような犠牲を払ってでもだ」と強い口調で語っている。
南北戦争は、1861年から4年間も続いた激しい内戦だった。犠牲者は60万人以上とされる。
それ程の犠牲を払っても、中国は台湾の独立を許さないと力んだのだ。
イスラム教徒であるウイグル人に対する弾圧、虐殺についても米中両国の溝は全く埋まっていない。
北朝鮮の核に関しても、明確な核の放棄までは北朝鮮に見返りを与えないとする米国と、核廃棄と援助を同時進行で行い条件を緩和することもあり得るとする中国側の立場は、完全に合致することはない。
11月末に予定される米中首脳会談への瀬踏みの米中閣僚会議だったが、両国の基本的対立が解決に向かうとは思えない。
習主席は、自身にその力さえあれば、終身、中国の国家主席の地位にとどまることができる道を開いた。
選挙によって指導者が入れ替わる民主主義国と較べて、優位に立っていると、習氏は思っているであろう。
だが、11月の中間選挙でトランプ氏の共和党が下院で民主党に過半数を奪われ相対的に力を弱めたとはいえ、民主党は共和党よりはるかに保護主義的で人権問題にも厳しい。
トランプ政権以降に希望をつなぐのは早計というものであろう。
10月4日にペンス副大統領が行った演説の対中批判の厳しさについては、10月18日号の本誌当欄でもお伝えしたが、米国で超党派勢力が結束して中国に本気で怒っている理由は、習氏が高らかに謳い上げた「中国製造2025」という大目標にある。
中国は経済的にも軍事的にも世界最強の国となり、科学、技術の全分野において世界最先端の地位を確立すると誓った。
だがそのための手段は知的財産の窃盗であり、騙しであり、恫喝に他ならない。
こんな不公正な中国に、世界最強国の地位を明け渡してはならない、という米国の闘争心が掻き立てられたのだ。
中国が米国に取って代り、中国風の支配構造の中に組み込まれることなど、我々日本にとっても願い下げだ。
だが、そんな時代は恐らくやってくるまい。
フランスの歴史人口学者、エマニユエル・トッド氏は今年5月、シンクタンク「国家基本問題研究所」創立10周年の記念シンポジウムで、全世界の人口学者の一致した見方だとして、中国は基本的に異常事態の中に在ると、以下のように語った。
長年の1人っ子政策と女児よりも男児優先の価値観により、中国では女児100人に対して男児118人が生まれている。
通常の100対105乃至106に較べて異常に男児が多い。
結果、人口学的な不均衡が生じ、現時点でも3000万人の男性が結婚相手を見つけることができないでいる。
この稿続く。