なぜ週刊誌報道がこれほど注目されるようになったのか?:テレビや新聞への信頼毀損という背景

2024-02-05 11:25:56 | 生活

「旧NHK党はなぜ注目されたのか?」という話でも触れたんだけど、一定数の人間がある現象にコミットし、かつそれが社会の動向にも少なからず影響を与えている場合、単に「バカなヤツらが熱にうかされてるだけ」というスタンスでいるのはあまり得策ではない。

 

その一例が、松本人志の性加害問題に見られるように、「週刊誌報道はなぜこれほど注目されるようになっている(なってしまった)のか」という視点ではないかと思う。それまではゴシップ誌に毛が生えたような存在で、「他人の不倫をあげつらって何をしたいのか」みたいに言われてさえいたのに、今やこちらの方こそジャーナリズム=真実であるかのようにみなす人間までいる始末だ(もちろんそんな話が成り立たないことは、ヒカキンを巡る報道であったり、今係争中のサッカー選手に関する告訴を見るだけでも十分なのだが)。

 

その背景を考えてみると、一つ大きなポイントはテレビや新聞といった大手マスメディアの凋落とそれへの不信であろう。これにはもちろん様々な契機があったのだが、それが大々的に印象付けられたのは、2023年のジャニーズ問題とその報道であることは疑いない(参考記事として文春側のものではあるが、「吉本興業は『初動を反省』したが、松本人志問題でテレビがまだ報じてないこと」を挙げておく)。

 

つまり、「ジャニー喜多川の性犯罪を記事にしていた文春と、それを黙殺してきた大手メディア」という図式であり、結局そのことが腐敗の温存と被害の拡大へと繋がってしまったことは周知の通りである(なお、国会でも取り上げられていた以上、「週刊誌の報道だから信憑性に疑問があった」というのは全く成り立たない説明だ)。

 

こうして、前者が正しいというよりも、後者のあまりの悪辣さが継続的に暴露された結果、既得権益批判とも相まって、大手マスメディアへのヘイトがゴリゴリに高まっていったことで、今の状況が作り出されていると考えられる(もちろん、本来ならこういうのはフィールドワークで意識調査を行い、年齢別や性別も含めたメディア信頼度を集約するといった社会学的アプローチが必要なのだが、と問題提起をしておく)。

 

かかる状況において、本来ならテレビや新聞はいわば威信をかけて信頼回復に取り組まなければならないのだが、すでに官僚主義化して小役人化・保守化した組織にそんなことができるはずもなく(そしてこれからますますスポンサーの犬と化していくだろう)、むしろ24時間テレビの不祥事、取材する店舗を揶揄するような番組構成での炎上、メディアミックスにおける対応不備etcetc...とオウンゴールを決め続けているため、相対的に週刊誌の信頼が高くなってしまっていると言えるだろう(逆に今のテレビや新聞の惨状を見て、どこに一般人からの信頼が向上する要素があるのか、ご高説を賜りたいぐらいだ。既存体制の維持という意味で逆パターンではあるが、政治で言えば自民党からどれだけ多くの問題が噴出しても、「野党のどこかに任せるよりマシ」という発想で投票され続けていることを想起してもよい)。

 

というわけで、繰り返しになるが、「問題も多いけれども、貴重な情報を提供してくれる週刊誌」と、「とにかく保身に走るしかない無能で悪辣なテレビ・新聞」というイメージがかなり定着してきているわけで、ここで「いやいや週刊誌は色々おかしな報道もしているぞ!」と批判し抑制を求めたところで、「じゃあ自分たちは、一体どこから信頼できる情報を得ればいいんですか?」という反応が出るのは火を見るより明らかだろう(なお、先日の能登半島地震を「人工地震」とみなすデマを扱った記事で、地震大国としての歴史的無知とともに、大手マスメディアへの不信が陰謀論の跳梁跋扈とも関連している旨は指摘した通りだ)。

 

週刊誌の問題点を指摘している人たちには、このような視点が決定的に欠けている。その理由は、全員ではないにしても、発信者が起業家(例:堀江貴文)だったり編集者(例:箕輪厚介)だったりで、独自の情報網なども持っているし様々なニュースにも触れているがゆえに一般人の状況にまで考えが及ばないのだろうが、そうしてメタ認知を欠いたまま、ただ週刊誌報道への期待を批判しても、それは症状だけ問題視して病原には何ら意識を向けないのと同じことで、根治には何ら寄与しないため、ほとんど無意味な行為と言えるだろう(まあ始めから同じような発想をしている人々の賛同なら得られるだろうけどね)。

 

そしてゆえにこそ、私は今の状況を改善するには電波利権やクロスオーナーシップの解消を含めた大手メディアの解体的出直ししか方法がない、と言っているのである(まあそれでも情報の多チャンネル化はアメリカ始め多くの先進国に共通して見られる現象であり、決して昔に戻ることはないんだけどね)。


というわけで、ちょうど前の記事で、メタ視点というか構造解析の話を書いたんで、松本人志や大手メディアの問題点を何度か取り扱っていることに関連させてみましたよと。

 

以上。


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