雲に乗って、鳥になろう

 自分の頭で考えて手を動かし、悩んで作って飛ばす模型飛行機愛好家のページ。半世紀ほど生きてきた髭親父の日々の出来事です。

新青丸 KS-14-1次航海 航海二日目 その2

2014-03-23 | 航海
 新青丸で初めてとなるのは、ビームトロールだけではありません。ふくしま海洋科学館(アクアマリン福島)が積み込んだROV(自走式水中カメラ)もその一つです。

 100Kgの重りをウィンチとクレーンで海底まで下し、そこを中心に半径50mの範囲内にいる生物の観察・録画、そして採集を行います。

 歴史的?観察の開始です。




 操縦しているのは、アフリカとインドネシアでシーラカンス調査もしているベテランのYさん。

 真剣そのものです。

 もう一つ、ちょっとした”初”があります。海洋観測に欠かせないCTD観測ですが、新青丸の研究航海でCTDシステムがフル稼働するのは、実はKS-14-1次航海が最初です。一連の画像は、その時のものです。今年の1,2月に行われたドックで大幅な改修がCTDシステムに施されて、初めて本来の性能を発揮することになりました。CTDは、海洋の物理・化学構造を知るうえで不可欠な観測装置です。水温、塩分、クロロフィル、溶存酸素、pHを鉛直的に計測し、これら基礎的な物理・化学パラメーターを収集します。得られたデータをもとに、海洋の鉛直断面図を作成します。また、船上から任意の水深で採水を行い、海水の深度ごとの詳細な化学分析や、微小プランクトンの分析試料を収集します。水産、生物系に限らず、物理、化学系、すべての研究分野が利用する観測機器です。

 CTDキャッチャーがガッチリとCTDを掴んで、船外へとだしてきます。このCTDキャッチャーのおかげで、今まではできなかったような荒れた海況でも、CTD観測ができるようになりました。


 いよいよ歴史的?観測の始まりです。灰色の筒が採水器。さまざまなセンサーは装置の中央部に収められています。


 海中の宇宙ステーション。あいにくの天候と、透明度の低い親潮系水での観測のため、今一美しくありません。ちょっと残念。これが晴れた日中で黒潮系水だったら、水深40mぐらいまで、目で追うことができます。結構幻想的な景色です。


 メヒカリが住む海底の泥の化学分析を行うために、マルチプルコアラーによる採泥も行いました。


 一度に八本のアクリル管を海底に挿し、管の上下に蓋をして、海底表層の泥を自然の状態で採集してきます。


 採集成功。泥が入っているのがお分かりになると思います。


 観測作業の紹介が、実際に行った順番とは多少前後しましたが、St.1ではご紹介したとおり、非常に豊富なメニューをこなしました。IKMT 300mと同時に、ニューストン・ネットによる表層プランクトンの採集や、CTDの前にNORPACネットによる大型植物プランクトンと動物プランクトンの同時採集も行っています。08:00に開始したSt,1での観測、終了したのは14:30でした。

St.1  観測項目一覧 水深100m
IKMT W.O. 200 m
IKMT W.O. 300 m & Neuston net
ROV
Beam Trawl
Multiple corer
Long NORPAC net
CTD

 採集された試料の整理を研究室で行いつつ、次の測点、水深200mのSt.2へと移動開始です。

続く。



 

新青丸 KS-14-1次航海 航海二日目

2014-03-22 | 航海
 追浜出航後、三浦半島を交わしたころから揺れ始め、夜になり野島崎の南を通過するなり、それなりに厳しい海況となりました。

 2014年3月2日 08:00 St.1 到着。いよいよ調査開始です。St.1は北緯37度線上の水深100 mに設けた観測点です。福島県、小名浜沖です。KS-14-1次航海の研究テーマが、「被災地いわき市の魚、メヒカリ(マルアオメエソ)の総合生態調査」ですから、小名浜沖は外せない海域です。当初の計画では北緯36度線(銚子沖)の側線も予定しておりましたが、海況が悪く、一気に小名浜まで北上しての観測開始です。

 純米酒「メヒカリ正宗」を出している、いわき市にある四家酒造店の「又兵衛 純米酒」で網をお清めしてから、IKMT投入です。お清め、私がしたので写真がありません。


 St.1では、IKMTのワイヤーアウト200 mと300 m、ニューストンネット、ビームトロール、ROV、マルチプルコアラー、NORPAC、CTDとフルメニューでの観測です。

 KS-14-1次航海、実は新青丸の歴史を作っています。なんちゃってね。一連の慣熟航海(テスト航海)で行えなかったビームトロールによる底生生物(海底の生き物)の採集を初めて行いました。

 網のお尻に付ける錘です。これだけで30Kgあります。

 白いのは、小型、微小底生生物を採集するためのコソ泥ネット。


 ビームトロール、投入開始。まさしく、歴史的瞬間です



 揚収後、自然と甲板に緊張感が走ります。何が獲れたかな?






 採集物を大型バット(ばんじゅう)に移したら、大きさごとに篩い分けます。

 そして研究室に持ち運び、生き物の選別作業が始まります。これが大変。体力、知力、すべてが試されるのが、研究航海です。

St.1の観測はまだまだ続きます。当然KS-14-1次航海も。

新青丸 KS-14-1次航海 出航

2014-03-18 | 航海
 出航前日の2月28日も追浜界隈で前日泊。3月1日09:30追浜駅集合で、乗船研究者一同、新青丸へと向かいました。

 乗船するや否や、作業開始です。調査で使うネットの組み立て。あいにくの雨の中、研究航海のユニフォームともういうべき雨合羽、長靴、メット、そして軍手着用です。男気溢れる現場です。

 一番手間のかかるニューストン・ネットの組み立て。ホント、こいつの組み立ては手間がかかります。



 ORIネットの組み立て。最もトラディッショナルなネットです。IKMT、ニューストン・ネットの予備網です。


 本航海が、新青丸にとって初めてとなるビームトロール。 


 メヒカリを一杯獲ってくれよ!と思わず口に出してしまいました。

 ふくしま海洋科学館の秘密兵器?ROV(自走式水中カメラ)です。


 こちらも新青丸にとって初物。

 ネットの組み立て作業をしている間に、気が付いたら新青丸は出航していました。

 出航直後に、総練です。



 この訓練、船が沈む時に避難する手順と集合場所を確認するためのものです。

 続いて食堂で船内生活のオリエンテーション。

 判りやすいパワポのプレゼンでした。

 ネット作りはまだまだ続きます。小型のものは、研究室内で組みました。

 MTDとNORPACネットです。

 作業が終了し、夕食。

 栄養のバランスがよく考えられています。

 翌朝08:00から観測開始です。以後、不規則極まりない日々が続きます。その前に、しっかり眠れる晩に、団結式です。


 今回も”まめな”?A氏が持ち込んでくれました。小分けにしたスコッチ。ボトルじゃないんだ??


 飲むにしても工夫が大切?グラスを忘れた?

 標本瓶で飲んでます。

 研究航海、開始です。

続く


新青丸 KS-14-1次航海  積み込み作業-2

2014-03-16 | 航海
 
 2月26日、追浜の住友重機埠頭にて積み込み作業です。さすが日本を代表する造船所。今回は大型クレーンが大活躍でした。コンテナー・ラボのような重量物を楽々と移動させていました。見ていて飽きません。



 微調整は人力です。


 主採集器具となるIKMTネットのディプレッサー。


 海底表層の堆積物を採集するためのマルチプルコアラー。


 フォークリフトが運んでいるのは、ふくしま海洋科学館(アクアマリン福島)が積み込むROV(自走式水中カメラ)です。



 細々とした荷物は、人海戦術、バケツ・リレー方式で運び込みます。慣れたものです。


 早速研究室の準備に入ります。顕微鏡の設置作業。船が揺れても大丈夫なように、ラッシング(縛り付け)します。

 研究機材を積み込んだのち、新青丸はいったん別の埠頭へ移動しました。



乗船・出航は3月1日でした。

続く





新青丸 KS-14-1次航海  積み込み作業-1

2014-03-15 | 航海

 東北海洋生態系調査研究船 新青丸 です。普通左舷を接岸するので、右舷付けは珍しく、左舷のきれいな写真って、なかなか撮れないんですよね。

 久々のカキコです。今日から、3月1-9日に実施した東北海洋生態系調査研究船 新青丸 のKS-14-1次航海の模様を紹介していきます。この航海、全国共同利用の一環として実施される航海です。共同利用に申し込み、採択となった時から緊張していました。そりゃそうです。新青丸は、昨年進水したばかりの、名実共に日本が世界に誇れる最新鋭の海洋調査研究船です。全長66m、1629tの大型調査船です。慣熟(テスト)航海を重ね、判明したもろもろの問題点をドックで修理し、フルスペックで機能するようになった最初の本格的な研究航海が、KS-14-1次航海です。そのような航海の主席研究員を務めてきました。乗船決定となった時から身の引き締まる思いがしていました。そんなわけで、下船後6日たちますが、いまだ疲れが抜けていません。

 もろもろの書類手続きがありましたが、液体窒素の充てんから作業が始まったことにしましょう。


 大海研の観測機器倉庫にある研究機材をトラックに積み込みます。

 大型ポリバケツも重要な研究機材です。

 ずた袋の中身は調査で使うプランクトンネットなどの網地です。

 平積みとアルミトラック各一台分の荷物となりました。

 積み込み作業が朝早くから始まるので、私は研究所から追浜へ。前日泊です。新青丸は追浜の住友重機の埠頭で待っています。

続く