負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

十八世紀の怪奇小説作家による小さな博物館が残っている

2004年09月19日 | 詞花日暦
小さな博物館の、間口は狭くとも
奥の深い小宇宙の魅力を伝えたい
      ――清水晶子(ジャーナリスト)

 以前、イギリスを代表する作家ディッケンズの住まい跡に偶然出会った。ロンドンの住宅街、小さな建物の入り口には小さなプレートだけ、観光客の姿さえなかった。その国を知るにはひっそりとした、その国の人しか訪れない記念館がいい。
 ロンドン在住の清水晶子が紹介する「小さな博物館」に、一度訪ねてみたいストロウベリ-・ヒルの館がある。十八世紀末、「ゴシック小説」という恐怖小説の一大潮流をつくったホーレス・ウォルポールの住まいで、代表作『オトラント城奇譚』のモデル。十七世紀に建った小さな館に次々とゴシック様式の改造を加えた。
 館の主が「おもちゃの家」と呼んだのは知っている。清水は「劇的空間を創出し、芝居がかった人生を送りたかっただけ」という。ただしそれぞれの部屋には、作者と十八世紀が求めていた心の風景が、断片のように散りばめられている。そうした断片が英国人や時代を実感するミクロコスモスを構成する。歴史も神々も細部に宿り、その精髄を味わうのが楽しい。