負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

日本もついにビッグ・ブラザーズ賞を受賞してしまった

2004年09月25日 | 詞花日暦
権力は一つの手段ではない、
れっきとした一つの目的なのだ
――G・オーウェル(作家)

 平成十三年、ちっぽけなニュースが新聞に載った。ロンドンに本拠のある国際NGO「プライバシー・インターナショナル」の日本支部が、「ビッグ・ブラザー賞」大賞に住基ネットを選んだ。ビッグ・ブラザーは、オーウェルが書いた名作『1984』に登場する全体主義国家の独裁者。
 一九四六年に書き始められたこの反ユートピア小説が、独裁国家の姿を克明に描いたのは知られている。鉄鋼とコンクリート、怪物じみた機械と兵器、同じ思想を持ち、絶え間なく働く人々、昼夜なくがなりたてるテレスクリーンといった未来都市。そんな社会はありえない極論と誰も思う。が、増幅され、極大化したさまざまな戯画には、まぎれもなく現在でも通用するものが数おおくある。最たる例が国民管理の住基ネットによる監視社会。
 かつての党幹部は主人公ウインストンを拷問しながら語る。「奴等は動物みたいに無力なのだ」。ビッグ・ブラザーズ大賞を受けるのは、監視システムに歯止めをかけない人々の無力さでもある。