負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

仏教伝来以前の日本人の「あの世観」は沖縄とアイヌに残る

2004年09月21日 | 詞花日暦
日本人は今もなお、強いあの世の信奉者であり、
あるいは信奉者の振りをしている
――梅原猛(哲学者)

 梅原猛が柳田邦男や折口信夫と一線を画したのは、沖縄とアイヌの文化を日本文化の理解に取り入れたこと。梅原は、稲作文化が中心の柳田には「大きな誤りがある」、折口は「弥生文化の徒に留まっている」と語っている。彼の特長は縄文文化に焦点を絞り、しかも沖縄とアイヌの文化に原日本の姿を見たことである。
 仏教が伝来するまえの「あの世」観も、沖縄とアイヌは類似している。梅原によると、空間や時間の秩序がこの世と逆になり、ほぼすべての人は死後、霊になってあの世へ行き、神になって先祖の霊と一緒に暮らす。人間以外の生きものもあの世へ行き、あの世に行った魂はふたたびこの世に帰って来る。
 こうしたどこか素朴な世界観はいまも人々の記憶の奥にたゆたっている。複雑な仏教の教えより根深いのではないか。人々のおおくは、それでも饗宴に明け暮れる竜宮城、富と歓楽の世界をいつの間にかあの世に似たものとして祭り上げる。プラグマティックな近代人は、そのために地獄のような現世の生き方を余儀なくされている。