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サンスクリットの韻律 定義篇

2021年02月17日 | 梵語入門
[こころざし] カーリダーサの詩を読めるようになりたい。
[あらすじ] サンスクリットの詩は音の数で韻律を作るよ。
そして、音節には1拍分の長さのlaghu(軽)と2拍分の長さのguru(重)が有るよ。
軽重の組み合わせでいろんなリズムのパターンが有るよ。
「たたんたたん」というリズムがよく出てくるよ。
音節を三つずつに区切ったものを「gaṇa」(ガナ)と呼び、
その軽重8種類のパターンに一文字の名前を付けて、
यमापाराजभानसलगाः
yamātārājabhānasalagāḥ
ヤマーターらージャばーナサラガーは
と憶えると、य(ya)から読めばyamātā:軽重重などと、
リズムが分かるよ。インド人すごいよ。


昨日、とても間違ったことを書いたよ。
アプテ辞書のオマケに付いている韻律リストの種類は100以上
と書いたが、
実際は600以上だよ。

おお。お詫びと訂正。
まったく。
いちいち名前を付けるかね?
付けるよね。インド人は付けるのだ。



じゃあそのアプテ辞書のオマケのところに、どんなことが書いてあるか。

例えば、先日紹介した「パンチャチャーマラ」という韻律のところを見ると。
पंचचामर
Def. प्रमाणिकापदद्वयं वदंति पंचचामरम् ।
or जरौ जरौ ततो जगौ च पंचचामरं वदेत्
Sch. G. ज, र, ज, र, ज, ग (8. 8. or 4. 4. 4. 4)
Ex. सुरद्रुमूलमंडपे विचित्ररत्ननिर्मिते
लसद्वितानभूषिते सलीलविभ्रमालसम् ।
सुरांगनाभवल्लवीकरप्रपंचचामर-
स्फुरत्समीरवीजितं सदाच्युतं भजामि तम् ॥
こんなふうに書いてある。

一行目から読んでみる。

पंचचामर
paṁcacāmara
パンチャチャーマラ。
パンチャは「5」、チャーマラは「払子」のことのようだ。
坊さんが持っているでっかい筆のようなフサフサのアレ。

このように、韻律にはいちいち名前が付いている。インド人は名前を付ける。
それにどのような意味が有るのか、ってところに私は興味が有る。
今後、あれこれの韻律の意味を調べて、考えてみたい。
なんせ600以上有るのだから、お楽しみは当分続くだろう。

次。
Def. प्रमाणिकापदद्वयं वदंति पंचचामरम् ।
or जरौ जरौ ततो जगौ च पंचचामरं वदेत्

Def. とは、definitionつまり定義、
その韻律がどういうものかという説明なんだが、
これがまたインド人すごい。

प्रमाणिकापदद्वयं वदंति पंचचामरम्
pramāṅikāpadadvayaṁ vadaṁti paṁcacāmaram
「プラマーニカーの韻が二つで、パンチャチャーマラというよ。」
という定義である。
ほんじゃプラマーニカーは何か。
と、同じアプテの韻律リストで検索すると、見付かる。

प्रमाणिका
Def. प्रमाणिका जरौ लगौ ।
Sch. G. ज, र, ल, ग (4. 4)
Ex. पुनातु भक्तिरच्युता सदाच्युतांघ्रिपद्मयोः ।
श्रुतिस्मृतिप्रमाणिका भवांबुराशितारिका ॥

Sch. G. は多分、scheme of the Gaṇaの略だろう。
ガナのパターン、つまり上に書いた、音節三つずつのリズムパターンの名前だ。
プラマーニカーは ज, र, ल, ग (4. 4) だという。

全部で8音節なのを、便宜的に3,3,1,1と分けて、
それぞれのリズムがja,ra,la,gaだということだ。

यमापाराजभानसलगाः
yamātārājabhānasalagāḥ
ヤマーターらージャばーナサラガーは
を見ると、
jaからの3音節はjabhānaだから軽重軽、
raからの3音節はrājabhāだから重軽重。
laは軽、gaは重なので、全体は
「軽重軽重軽重軽重」だということが分かる。

さて、パンチャチャーマラはプラマーニカー二つのことを言う、というのだから、
「軽重軽重軽重軽重」×2=「軽重軽重軽重軽重軽重軽重軽重軽重」
というわけだ。

へいへい。

そして、こっからがすごいと私は思うのだが。
この定義の一行自体が、パンチャチャーマラの韻律になっているのだ!
प्रमाणिकापदद्वयं वदंति पंचचामरम्
pramāṅikāpadadvayaṁ vadaṁti paṁcacāmaram
プラマーニカーパダッドヴァヤンヴァダンティパンチャチャーマラム
たたんたたんたたんたたんたたんたたんたたんたたん
と、「軽重軽重軽重軽重軽重軽重軽重軽重」になっている。

カタカナを読んでもなかなかこのリズムには感じられないかもしれないが。

そして、パンチャチャーマラの場合、
Def.の下の行にorと有る。
定義の詩がもう一つ有るのだ。

これはまた明日。

つづく
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