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サンスクリットの韻律 ガナの名前篇

2021年02月16日 | 梵語入門

[こころざし] カーリダーサの詩を読めるようになりたい。
[あらすじ] サンスクリットの詩は音の数で韻律を作るよ。
そして、音節には1拍分の長さのlaghu(軽)と2拍分の長さのguru(重)が有るよ。
軽重の組み合わせでいろんなリズムのパターンが有るよ。
「たたんたたん」というリズムがよく出てくるよ。

ケルン大学がまとめている、
インターネット上でサンスクリット辞典を引けるサイト。
その中の、アプテという辞書のオマケページがこちら。
https://www.sanskrit-lexicon.uni-koeln.de/scans/csldev/csldoc/build/dictionaries/prefaces/ap90app1.html
サンスクリットの韻律論について書いてある。

インターネット上の辞書を引いているだけでは、
このページの存在には気付かない。
これは、東大仏教青年会のZOOM講座の中で、講師の先生が教えてくれた。
助かるぅ

そう言えば、漢和辞典の後ろのほうには、
中国古代の暦やら道具やら地図やら衣装の絵やら
何やら色々載っていて、眺めているだけでも楽しいものだった。
つくづく、辞書は単語を引くためだけのものではない。

さてここでもやっぱり最初にlaghu(軽)とguru(重)の説明をしている。
そしてその後、音の数によって韻律の種類が有るんだよ、という話をして、
その例が列挙されている。

その数、
えーと
100以上。



音の軽重を捉える際、便宜上、三つの音節をひとかたまりとして扱う。

たとえば、先日挙げた「パンチャチャーマラ」という韻律は
「たたんたたんたたんたたんたたんたたんたたんたたん」であった。
これを、「たたん、たたん、たたん、たたん…」ではなく、
「たたんた|たんたたん|たたんた|たんたたん|たたんた|たん」
と分ける。

この音節三つのかたまりを、「gaṇa」(ガナ)と呼ぶ。
先日、ガネーシャという神様の名前は、
gaṇa+īśa=gaṇeśaという構造で、
「団長」とか「民衆の主」とかいった意味だと書いた。
あのgaṇaである。

ガナは、その三つの音節の軽重の組み合わせで、
2の3乗=8種類有る。
軽重重、重軽重、重重軽、重軽軽、軽重軽、軽軽重、重重重、軽軽軽
という8つの組み合わせである。

そして、この組み合わせにそれぞれ一文字の名前が付いている。
य (ya)、र (ra)、त (ta)、भ (bha)、ज (ja)、स (sa)、म (ma)、न (na)。

へええ。
なんでそんなことをするんだろう。

これに、軽ल(la)、重ग(ga)を加え、
यमापाराजभानसलगाः
yamātārājabhānasalagāḥ
ヤマーターらージャばーナサラガーは
と憶える。

へええ。
どゆこと?

つまり。なんと。
य (ya)から読むとyamātāで軽重重、
म (ma)から読むとmātārāで重重重、
त (ta)から読むとtārājaで重重軽、
र (ra)から読むとrājabhā重軽重、
ज (ja)から読むとjabhānaで軽重軽、
भ (bha)から読むとbhānasaで重軽軽、
न (na)から読むとnasalaで軽軽軽、
स (sa)から読むとsalagāḥで軽軽重、
ल(la)は軽、
ग(ga)は重。

といった具合に、そのガナのリズムでできているのである。

「ヤマーターらージャばーナサラガーは」
さえ憶えれば、
ヤってどんなガナだったっけ?
ジャってどんなガナだったっけ?
サってどんなガナだったっけ?
いつでも、
「ヤマーターらージャばーナサラガーは」
を唱えれば良いのである。

すげー。
合理的。
なような気がする。
誰が考えたんだ。
インド人。



「パンチャチャーマラ」の韻律は、
「たたんたたんたたんたたんたたんたたんたたんたたん」の
音節を三つずつに分けると
「たたんた|たんたたん|たたんた|たんたたん|たたんた|たん」つまり
軽重軽、重軽重、軽重軽、重軽重、軽重軽、重
となるので、
これに先ほどの、ガナの呼び名を当てはめると、
जरजरजग
となるのだが、
こっからがまたすごいことになる。

それはまた今度。

つづく

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