[あらすじ] 新宿末廣亭、お目当ての権太楼さんの高座の最中、
隣の席のオバちゃんの携帯が鳴ること2回。
そして迎える仲入り。
※
仲入りに入ってすぐのことだった。
私からオバちゃんとその夫を挟んで向こう側にいる年配の男性客が、オバちゃんに向かって
「うるさいよ、迷惑だぞ」とキツく言った。
するとオバちゃん
「うるさいわね!電話かかってきちゃったんだからしょうがないでしょ!」
とキャンキャン吠え返す。
オバちゃんのあまりに堂々たる返答に、私はなるほどと納得させられそうにすらなった。
おそろしい。
男性客はそのまま立ってトイレへ向かった。
オバちゃんは席で夫相手に文句を言い始める。
オバちゃんの論理としては、自分だって寄席を楽しみたいのに、
電話が掛かってきてしまった、
しかも1度目は切ったものだから相手は再度掛け直してきたので、
自分はちゃんと外に出て掛け直すというマナーのある行動を取った、
ということになるようだ。
「○○さんからだったんだけど、いま寄席に来てるんだから、って言ったのよ。」
寄席に来ている時に電話を掛けてくるのが迷惑だ、と言わんばかりだ。
夫が何か返事をしているが、それは聞こえない。
オバちゃんの声だけは聞こえる。
「非常識って、あんなふうに言う方が非常識じゃないの!
知らないわよそんなのアタシ。」
やっぱり。
知らないのだ。マナーモードに設定する方法を。
ついに夫の声も聞こえる。
「あるだろう、マナーモードとか、音を消すボタンが。」
オバちゃん、カバンから携帯を出してしばしいじくって、またカバンにしまう。
横から見て思うに、これはボタンを見つけて設定できたのではなく、
わからなくて早々にあきらめてしまったのだ。
やはり、1分もしないうちにまた携帯を取り出して、夫に渡した。
「じゃあ、やってよ!アタシ知らない。」
よしよし。そうやって夫に甘えたほうが結果は良い。
これでおさまるかと思いきや、今度は夫をなじり始めた。
どうやらオバちゃんはこの日の寄席見物をとても楽しみにしていたようだ。
「アタシは時間通り来て、まだガラガラだったのよ、前座から見て、
なのにお昼食べて飲んで来てさ、それならそう言えばいいじゃない、
アタシ一人でずっといたのよ、つまんないじゃない、
そんならもう帰る?どうすんのよ。」
私の背後のご夫婦も、小さい声で
「好きなのね。」
と言って笑っている。
夫のことも、寄席も、好きなのだろう。
ここまでオバちゃんの怒りの声はかなり高く、
周囲だけでなく離れた席の人も驚いた顔でこちらを見ている。
そんな緊迫感のある仲入りが終わり、後半の幕が開く。
そして思いがけない痛快な展開が!
つづく
隣の席のオバちゃんの携帯が鳴ること2回。
そして迎える仲入り。
※
仲入りに入ってすぐのことだった。
私からオバちゃんとその夫を挟んで向こう側にいる年配の男性客が、オバちゃんに向かって
「うるさいよ、迷惑だぞ」とキツく言った。
するとオバちゃん
「うるさいわね!電話かかってきちゃったんだからしょうがないでしょ!」
とキャンキャン吠え返す。
オバちゃんのあまりに堂々たる返答に、私はなるほどと納得させられそうにすらなった。
おそろしい。
男性客はそのまま立ってトイレへ向かった。
オバちゃんは席で夫相手に文句を言い始める。
オバちゃんの論理としては、自分だって寄席を楽しみたいのに、
電話が掛かってきてしまった、
しかも1度目は切ったものだから相手は再度掛け直してきたので、
自分はちゃんと外に出て掛け直すというマナーのある行動を取った、
ということになるようだ。
「○○さんからだったんだけど、いま寄席に来てるんだから、って言ったのよ。」
寄席に来ている時に電話を掛けてくるのが迷惑だ、と言わんばかりだ。
夫が何か返事をしているが、それは聞こえない。
オバちゃんの声だけは聞こえる。
「非常識って、あんなふうに言う方が非常識じゃないの!
知らないわよそんなのアタシ。」
やっぱり。
知らないのだ。マナーモードに設定する方法を。
ついに夫の声も聞こえる。
「あるだろう、マナーモードとか、音を消すボタンが。」
オバちゃん、カバンから携帯を出してしばしいじくって、またカバンにしまう。
横から見て思うに、これはボタンを見つけて設定できたのではなく、
わからなくて早々にあきらめてしまったのだ。
やはり、1分もしないうちにまた携帯を取り出して、夫に渡した。
「じゃあ、やってよ!アタシ知らない。」
よしよし。そうやって夫に甘えたほうが結果は良い。
これでおさまるかと思いきや、今度は夫をなじり始めた。
どうやらオバちゃんはこの日の寄席見物をとても楽しみにしていたようだ。
「アタシは時間通り来て、まだガラガラだったのよ、前座から見て、
なのにお昼食べて飲んで来てさ、それならそう言えばいいじゃない、
アタシ一人でずっといたのよ、つまんないじゃない、
そんならもう帰る?どうすんのよ。」
私の背後のご夫婦も、小さい声で
「好きなのね。」
と言って笑っている。
夫のことも、寄席も、好きなのだろう。
ここまでオバちゃんの怒りの声はかなり高く、
周囲だけでなく離れた席の人も驚いた顔でこちらを見ている。
そんな緊迫感のある仲入りが終わり、後半の幕が開く。
そして思いがけない痛快な展開が!
つづく
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