犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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交通事故にまつわる一日

2015年03月19日 | のりもの
一昨日、交通マナーに関して書くのを再開した。
思えばその日は、兄の命日であった。

私が小学2年生だった。
兄は二十歳で、高速道路の分岐に突っ込んで死んだ。
横浜に住む彼女とデートの帰り、午前2時過ぎだった。

車が好きで運転が好きだった。
そのちょっと前だったと思うが、事故を起こした。
自分は無事だったが、助手席に乗っていた友達がけがをした。

二十歳になったばかりという頃だったので、両親が
相手の家に詫びに行った。
幼かった私は連れて行かれた。

小さな家で、相手の親が憮然としていて、
夜の暗さと電球の色が記憶に残っている。

帰宅すると、兄は食卓でダラリと座りタバコをふかし
テレビを見ていた。
酒も飲んでいたろうか、その態度に親が怒った。
まあ、バカ息子である。

その後、何があっても同乗者にけがが無いように、と
衝突しても車室が凹まないような、鉄パイプのようなものを購入した。
車内はものものしい雰囲気になった。

それを取り付けて、直後の事故で死んだ。

目撃したタクシーの運転手から、
自分の走っている速度よりずいぶん速く追い抜いて行ったので、
○○km/hは出ていただろう、などという話が聞けた。

いくら鉄パイプで車室を守ったって、
スピードを出し過ぎれば事故は甚大になる。

居眠りをしたのか、家に向かうよりは少し手前の出口への分岐に
突っ込んだ。

葬儀に集まった親しい人たちの前で、父が話すのを立ち聞きした。
息子をバカだと言わないでください。
そりゃ言われたくないだろう。
図星は突かれたくないものだ。

異母兄の命日の早朝、老母を乗せて車で40分の霊園へ行った。
医院へ、リハビリセンターへ、買い物へ、
母を車に乗せると、帰り着いた時にたまに母は、私の運転をほめる。
ちょっと良いヒトコマである。

その日の夕方、世田谷文学館に、岡崎京子展を見に行った。
漫画家の岡崎は、自宅近くで交通事故に遭い、休筆を余儀なくされて
20年経つ。

テーマ性も、ストーリーも、絵のスタイルも
作家として熟してきた矢先であった。
いつも新作を楽しみにしていたので、ひどく残念だ。

視線を動かすことによって操作し、意思を伝えるための
トビーという装置がある。
今、岡崎はこの機械の操作の訓練中だという。

会場の最後の展示は、トビーを使って岡崎が出したメッセージだった。
「みんな、ありがとう」

見られる、聞ける、けれど動けない、表現できない。
漫画家にとって、それはどんな苦しみだろう。

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