犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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剥ぎ紙

2020年07月06日 | 介護ウチのバヤイ
[あらまし] 母87歳パーキンソン病ヤール4要介護5認知症状少々、
一週間ほど前に特別養護老人ホームに入居した。



家の中のあちこちに、貼り紙が有る。
ヘルパーさんや訪問介護や訪問看護が入るので、
その人たちへ向けたものと誤解されがちだった。
すみません。

同居していた母のためのものだった。

貼らないと忘れる。
忘れるというか、混乱する。
どうするのが良かったのか、分からなくなってしまうのだ。
「〇〇しないでね」と言うと、後で
「〇〇してね」と言われたのか「〇〇しないでね」と言われたのか、分からなくなる。
思い出せるように、貼り紙をしていた。

ただ、そのうちに貼り紙に慣れて、見なくなった。
「見えなかった」と、本人は目と目蓋のせいだ、と言うけれど、
そこに手を出して物を使っているということは、見てはいる。
貼り紙効果も薄れてきて、やめてしまったものも多い。

家の中がごちゃごちゃした感じになって、よろしくなかった。
片っ端から剥がす作業をしつつ、以前貼っていたものも含め、
書いてみようと思う。



燃やせるゴミのゴミ箱に。
《食品の空き袋、汚れたプラやラップ、燃やせるゴミ》

流しに。
《汚れたラップや食品の空き袋は、洗わずにゴミ箱へ》

透明の袋をかぶせた段ボール箱に。
《プラ 汚れたものはゴミ箱へ》

調布市は燃やせるゴミとプラを分別して収集している。
プラは汚れたものは再生に使えないので、人の手で仕分けしている。
それはたいへんだ。
だからプラは洗ってから捨てること、という話をしたら、
洗ってくれるようになったのだが、きれいに洗えない。
いっそ汚れたものは燃やせるゴミに出して欲しいのだが、
この切り換えはうまくいかなかった。

最後には、プラの箱に燃やせるゴミが入っていたりして
私の脳裏にまたプリンスの'chaos and disorder'が爆音で流れる。

台所の出窓に。
《上まで手を伸ばさない 足もと危険》

背伸びして乗り出すと、バランスを崩して転倒しかねない。
手の届かない所に私が使う物を置くようにしていた。
物が有ると手を伸ばしてしまうというなら、私の使う物は全部天井からの吊り戸棚に隠さねばならない。
不便だ。背が伸びそうだけど。

洗面台の横のタオル掛けに。
《濡れた布巾やタオルはここに掛けないで お風呂場に投げておいてください。
壁がカビてしまいます。》

洗面所の一角のバケツに濡れ雑巾を入れる、
という習慣が有った。
雑巾が腐るし、湿気がこもるから、そこに雑巾を置くなら乾かしてからにしろ、
と、何十年も言ってきたが、変わらなかった。
おかげでその奥の壁はカビて、朽ちて、白アリが巣食ってしまった。

ある日、ヘルパーさんの声が洗面所から聞こえた。母の声は小さくて聞こえない。
「そこに洗ったハンカチを掛けたらいけないんじゃないですか?
ちょっとくらいはいいの?そうなの?」
♪chaos and disorder♪

電子レンジに。
《入れてはいけないもの ×金属 ×アルミホイル ×スプーンやフォーク
×やわらかいタッパーのふた ×お弁当のふた》

タッパーの蓋は歪んだものばかりで、どれも密閉容器としての役を果たさなくなっている。
アルミホイルで包んだ大判焼きをチンしたことが有る。
私が帰宅したら家の中が煙くさくて驚いた。
火事にならなくて良かった…。

冷凍庫の扉に。
《奥のひきだしに保冷剤が入っています。》

去年、冷蔵庫を新調した。
深い引き出し式の冷凍庫だが、中が二層になっている。
全体を引き出すと、上の浅い引き出しが奥に残る仕組みになっている。
氷や保冷剤が見つけにくいだろうと思って、書いた。

冷蔵室の扉に。
《野菜室だけ使ってください》

この貼り紙で、冷蔵室の扉の取っ手を封印している。
冷蔵庫に物を出し入れする時に、食品をこぼしてしまうからだ。
前述したように、タッパーが密閉できていないせいである。
曲がった腰で、高い段に物を入れようとすると、タッパーが傾いて中身がこぼれる。

低い段は使えるので、一番下が野菜室になっている商品を選んだ。
冷蔵室の取っ手を封印してあると、私が不便である。
が、実はこの冷蔵庫、両開きなのねーー。
母が見ていない隙に、右から開いて使っていた。

洗濯機に。
《失禁・食べこぼしの付いたものは 風呂場に投げておいてください。》

これだけは、まあまあヘルパーさん向けだったかもしれない。
気を利かしてくださる方は、濡れタオルも洗濯機に入れずに、
洗濯機に掛けたりしておいてくれた。
おかげでほとんどカビずに済みました。

トイレに。
《わきを切ると良い》

リハビリパンツ(大人用紙パンツ)を脱ぐ時に、
千切っているらしい。
尿を含んだ高分子吸収体が時々、床に散乱している。
ゼリー状でぺたぺたするので、ひどく掃除しにくい。

介護の現場で、すばやくケアするために、リハパンを千切って脱がすことが有ると聞く。
ある介護士さんがそうしてくれたので、母はまねしたのだろう。
介護士さんはちゃんと、横の部分を切る。
母は適当に手の伸びやすい部分を千切る。

私は、トイレの手すりにフックを掛けて鋏を置き、
貼り紙にはリハパンの絵を描いて鋏を描き込んだ。
なおかつ、何度も本人に説明した。
それでもやはり、最後までリハパンの真ん中を千切ろうとする母を目撃した。
暖簾に腕押し、糠に釘、婆に貼り紙、リハパンに鋏。

居間の隅に。
《5/19 隣室のエアコンのリモコン→
「ピー」と本体が反応します。
鳴らなかったら操作できていません。もう一度操作して下さい。》

これはスタッフ向けだな。
3年前の5月半ばか。

テレビのリモコンの、最少限のボタン以外は紙で覆った。
《赤く塗ったボタンだけを使う》

そうしないと、入力切替ボタンなどに触ってしまう。
しばしば「テレビが壊れて映らない。」と言うが、
大概はリモコンのどこかを触ってしまっただけだ。



ベッドサイドの棚に。
《ながらくお世話になりました。
6月××日(×)に△△△という新しい特養に入居することになりました。
皆さんのおかげで在宅を続けてこられました。
思い出たくさん、ありがとうございました。》

書いてから、「思い出いっぱい」にすれば良かった、と思った。
「たくさん」だと、
「ああもうたくさん!」
という意味にも取れるからだ。



さて、全部剥がしましょ
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