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サンスクリットの韻律 シュローカ篇

2021年02月14日 | 梵語入門

[こころざし] カーリダーサの詩を読めるようになりたい。
[あらすじ] サンスクリットの詩は音の数で韻律を作るよ。
そして、音節には1拍分の長さのlaghu(軽)と2拍分の長さのguru(重)が有る。



詩の韻律の作り方には色々ある。

日本語の詩、つまり和歌は、音の数で韻律を作る。
いつの頃からか、それは「五」と「七」がいい、ってことになっている。
もっと古い詩は違ったとか、沖縄は「六」と「八」とか。

一方で、詩句の最後の母音を揃えて韻を踏むやり方をする言語も多い。
英語やラテン系の言語はそう。
その真似で今の日本のラッパーたちはいやに脚韻にこだわる。

漢詩も脚韻を踏む。
四行単位で最後の音を揃える。
一字が一拍の言語だから、音の数はそもそも「五」や「七」に揃えてあり、
その上で最後に残る音の響きを聴かせる。

どちらの方法も、その言語の特性に合ったものが使われている。

日本語の詩では脚韻はあまり用いられない。
というのも、活用形で語尾の母音が揃ったり、
同様の助動詞が来たりするから脚韻があんまり意味をなさないなり。
頭韻をそのかわりに使ったりする。
と、この五行はtdnの歯音始まりに子音を揃えてみた。(に、と、ど、と、と)

頭韻で有名のが百人一首に有る。
たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなほきこえけれ
滝の音は 絶えて久しくなりぬれど 名こそ流れてなほ聞こえけれ
たたななな
と、句の頭に歯音を使って全体の響きを作っている。
「なりぬれど」も「なぬど」という歯音の間にラ行音を挟んで滑らかな響きになりぬ。



サンスクリットは、音の数で韻律を作る。

最も一般的な詩の形式は、「シュローカ」と呼ばれるものだと言って良さそうだ。
16音ずつの四行詩である。

一昨日紹介した「パンチャチャーマラ」も16音4行の詩だったが、
「たたんたたんたたんたたんたたんたたんたたんたたん」という軽重交互のリズムだった。
samacatuṣpādi(サマチャトゥシュパーディ)つまり「同じ4つの韻」という分類に入る。

シュローカは4行とも同じではないが、
16の音の長さに、いくつかのパターンが有る。
16の音を4つずつに分けて、軽重のリズムを作る。

短い音節=軽い=laghu を、Uで表す。
長い音節=重い=guru を、_で表す。

例えば先一昨日紹介した「ガネーシャ様の21の名前を唱えよう」だと、
こんなリズムになる。

गणञजयो गणपतिः हेरम्बो धरणीधरः |
gaṇañjayo gaṇapatiḥ herambo dharaṇīdharaḥ |
U _ U _ | U U U _ | _ _ _ U | U _ U _
たたんたたん たたたたん たんたんたんた たたんたたん

महागणपतिर्लक्षप्रदः क्षिप्रप्रसादनः ||
mahāgaṇapatirlakṣapradaḥ kṣipraprasādanaḥ ||
U _ U U | U _ _ _ | U _ _ _ | U _ U _
たたんたた たたんたんたん たたんたんたん たたんたたん

अमोघसिद्धिरमितः मन्त्रश्चिन्तामणिर्निधिः |
amoghasiddhiramitaḥ mantraścintāmaṇirnidhiḥ |
U _ U _ | U U U _ | _ _ _ _ | U _ U _
たたんたたん たたたたん たんたんたんたん たたんたたん

सुमङ्गलो बीजम् आशापूरको वरदश्शिवः ||
sumaṅgalo bījam āśāpūlako varadaśśivaḥ ||
U _ U _ | _ U _ _ | _ U _ U | U _ U _
たたんたたん たたんたた たんたたんた たたんたたん

ってなことになる。
インド人はかなり「たたんたたん」を気持ちよく感じるらしい。

詩を読む時に、このリズムにテンポ良く乗って読めると
「読めた」気持ちになれるのだが、
私はまだなかなか滑らかに朗詠できない。
練習足らん。たらんたらん。



ただ文章を憶えるよりも、歌のほうが憶えやすかったりする。
インドの古典が韻文で伝えられるのも、憶えやすさのためが一つの理由のようだ。

ただその肝腎の韻律を間違っちゃったら意味が無い。
というわけで、韻律の憶え方というのがまた有る。

これがまた面白い。

つづく
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