カムアウトの反応 平然篇

[あらすじ] 私は、生物学的には女性だが、性自認は女性でも男性でもなく、恋愛対象は女性。
FtXといった概念は以前は知らなかったので、20代の頃は同性愛としてカムアウトしていた。
ゲイには芸術家が多いとか、レズはきれいなイメージがあるとか、そういったものは
差別の裏返しに過ぎないと思う。


ある時、付き合っている女性が、言った。
「そういう人はそういう人同士くっつくんだと思ってた。」

たしかに、二丁目や、コミュニティに参加することで、相手は見つけやすくなるだろう。
しかし、そういった場に出て行かない人も数多く、私もその一人だ。
私が今まで付き合った女性は、たいてい異性愛者だ。

※

20代の頃付き合った女性が、いつの日だったか、こう言った。
「私もレズってこと？？」

それまで男性とフツウに恋愛していたところ、女性である私が接近してきて、
なぜだか惹かれるようになって、受け入れて、恋愛関係になって。
ある日、ふと、はたから見た自分の見え方について、思いが行ったようだ。

※

それより前に付き合って別れたある女性は、ある時、私に告げてきた。
「次に付き合うとしたらやっぱり男性。私はあなたと同じにはなれなかった。」

とても真摯に接してくれて、同じになって同じことを経験して同じに感じなきゃ、
と思っていたのだろう。

※※※

カムアウトした時に、友人がすんなりと受け入れてくれることも多い。
「今までとなにも変わらない、須山は須山だよ。」

もし、私がカムアウトするまでもなく、私が性的に通常とちょいと異なるものを
内に持っていることに気付いてわかっていたのだとしたら、
ほんとに今までと何も変わらないかもしれない。
実際に、本当に変わらない人も、いる。
「ああ、やっぱりね。」
それまでも身の周りに同性愛者がいたとか、同性に告白されたことがあるとか、
自分も同性に強い思いを寄せたことがあるとか。

しかし、そういう人ではない人が、「なにも変わらないよ」と言うことも、
ままある。
ほんとに何も変わらないのか。
「 私は、生物学的には女性だけど自分では女性と思っていなくて
かと言って男性になりたいわけでもないんだけど、恋愛対象は女性。」
と聞いて、ほんとに何も変わらないのか。

前回の例の時に述べたように、これが、自分の子からのカムアウトだったら、どうか。
今までとなにも変わらずにいられるだろうか。

それに、女性の友人の場合、「自分も恋愛対象になり得る」という点に気付いたら、
今までとなにも変わらずにいられるだろうか。

※

すんなりと受け入れてくれる言葉は、私のカムアウトを、
自分と関わりの無い、ひとごととして受け取っているから
一見すんなりと受け入れるようになっているだけではないだろうか。

我が子が「お母さん、性転換したい。」と言ってきたら、平静でいられるだろうか。
友人が「あなたが好きだ、恋愛の意味でだ、セックスもしたい。」と言ってきても、
それまでどおりと変わらぬ友達でいられるか。

落ち着いているほうがおかしくないだろうか。