犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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ストレスフロ前編

2020年06月26日 | 日々
[あらまし] 同居母87歳パーキンソン病ヤール4要介護5認知症状少々、
もうすぐ特別養護老人ホームに入居の予定。

[あらまし] 飼い犬ジーロくん去勢オス14歳11ヶ月慢性腎不全たまに癲癇。


飼い犬ジーロ、さみしがりやである。
生後5週目で、親きょうだいと離れて一匹だけ里親に引き取られた。
犬として、早過ぎる。
まだまだ母犬に甘え、きょうだいとじゃれ合う必要が有った。

もらわれた家で二日二晩鳴き続け「こんな犬飼えない」と戻されてきた。
以来、ひとりきりになると鳴いてしまう。
我が家では、きょうだいのうち一匹だけだった雌犬と一緒に
二匹で引き取った。
だから、人間が留守でもジーロひとりきりになることは無かった。

しかし、その雌犬が4年前に先に逝ってしまったのである。
さみしんぼう再燃である。
ここ一年あまりは、それに加えて耳も遠くなった。
庭や物干しに私がいても聞こえないので、置いて行かれた気がして鳴いてしまう。

こんな犬を置いて外出はままならない。
老母がいると、老犬の挙動と相まって室内はぐちゃぐちゃのわやわやだったが、
それでもジーロにとってさみしくはなかった。
母が老人ホームに入居したら、ひとりでお留守番という状況が出てくる。

車に乗る元気が有れば連れて行くところだが、それも難しい。
私は、老犬が眠った隙に買い物に出たりすることになる。

ささやかな外出を今週中に楽しんでおこう。



夕方に用事が片付いた。
そうだ。銭湯に行こう。
4階にある露天風呂からの眺めが最高の所に行こうか、
それとも最寄りのいつもの銭湯に行こうか、
車を出してしばらく走りながら迷う。

いや、近所の銭湯なら、犬がよく寝た隙に行けないことも無い。
今のうちに、ちょっと離れた所へ行こう。

とは言え家からせいぜい7㎞有るかどうかという所に行くことにした。
ここは温泉に入れるからだ。
昼間の作業で手が痛む。
ゆっくり湯に浸かって今日の疲れは今日落としてしまいたい。



一通地獄をかいくぐり、銭湯に到着。
浴室は特別広いわけではないが、
カランは20以上有るか。
全部埋まるほど混んではいないけれど、
一つおきくらいには人が使っている。
空いている所には石鹸や椅子と桶が置いて場所取りしてあったりする。

子どもがいない。
だから、騒々しくはない。
しかし人々が湯を使う音が絶え間無く、賑やかに繁盛している雰囲気が満ちている。
いい。

私は自分の場所を決めて、体を流し始めた。



ふと、
横の床を見ると、
何か、黄土色のふにゃりとした直径2-3㎝のモノが有る。

うーん。

なんだろう。
「なんだろう」と言っておきたい。
断定したくない。



斜め前のおばちゃんが、立って体を洗い始めた。
身体の都合で、座って洗うのが難しいのだろうか。
幸い、私の所まで泡や湯や水が飛んで来はしないので、さほど気にかからずに済んだ。



湯舟がいくつか有る。
水道水のお湯のところと、温泉と、大きく二つ。
温泉の浴槽は中の壁で更に三つに分けてあり、
ジャグジー、電気、何も無い所になっている。
私は静かに浸かりたいので、ここへ来るといつも隅っこの
なんでもない温泉の所に入る。

畳で2畳分くらいの大きさの浴槽に、
多い日なら4人くらい入る。
しかしこの日は、温泉に誰も入っていない。
ラッキー。
のびのびと入れるじゃないの。



しっかりと体を流して、石鹸箱は鏡の上の棚の上に置き、
鍵だけ持って私は湯舟に入った。
ほぼ同時に、隣の電気風呂に一人のおばちゃんが入ってきた。
七十過ぎくらいだろうか。

そして、割に大きめの声で私に話しかけてきた。

「そこね、さっき、茶色いものがプカーって浮いてきたのよ。
だからこうやって掻き出して、
お店の人を呼んで出してもらってさ。
だからそこ、誰も入ってないのよ。」

〈えーーーーー
聞かなきゃ良かった。〉

と、私は声に出して返事した。
頭の中では色々な思いが巡った。
この人の言っていることは本当だろうか。
汚いと思うなら、この人も同じ湯舟に入って来ないんじゃないだろうか。
そもそも、問題が有るなら銭湯側も一時的に入れないようにするのではないだろうか。

〈気持ち良くって出ちゃうんでしょうかねえ。〉
「さあね。
今もういないから、銭湯の人が言ってくれたんじゃないの?
出入り禁止でしょ。」とおばちゃんの声は強い。
「ここは下からお湯が出てるから、いっぺん沈んだ物も浮かび上がってくるんだよ。」
はあ…

東京の温泉特有の黒湯である。
湯の中にそれがまだ有るかどうか、幸か不幸か、まったく見えない。
私はさっき洗い場の床で見て流したモノのことを思い出す。



と、
この話はほんの入り口。
ここから私は温泉に浸かりながら疲れるという初体験をする。

つづく
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