犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

怪しさ

2022年08月28日 | 椰子の実の中
夏だから、怖い話でもするか。



当時、同居していた女性と、車で2時間足らずの場所へ出かけた。

車を停めて、山に入る道を歩きながら、
以前にも一人で来たことが有る場所だと気付いた。

人の手が入ってはいるものの、
その後ずいぶん放置されている様子だ。
多摩の丘陵地によくあることだ。
フェンスの向こうもこちらも草木が繁り、
溝の流れは澱んで鉄分が錆びて赤く濁っている。

荒れた気配がする。
ただの自然よりも、人の手が一度入っている分、
荒廃するように思う。
作ろうとした物が果たせなかった思いがそこに残るような気配が在る。



道を登って行くと、途中、斜面が急な場所があった。
ずいぶんきれいに道はジグザグに整えられてある。
崩れたのを整備したようだ。

山で道を歩くといつも思う。
ここを道にしようとコースを決めて、
砂利なり、枕木なり、石なりを担いで運び、
道として整えた人がいる。
その労苦はどれほどだろうと思う。

大事に歩こうと思う。
道を整えた人の労働の大きさと、その思いを踏みにじってはいけない、と思う。



丘陵程度ではあるけれど、峠はある。
その峠の手前に大きな岩が在った。
こんな丘の中にしては大きな岩が在るのが思いがけない。

そしてその陰に、石碑が在った。
どういう碑なのか、読み取れなかった。
しかし、石碑を建てるほどのことが有ったのだろう。
ちょっと慎重に行動しようと思った。



来た道をそのまま辿って、車に戻ることになった。

途中、連れがずいぶん遅れを取った。
追い付いて来たら、オシッコをしていた、と言う。
どこでしたのかと聞くと、
あの、新しく整備されていた辺りの道でした、と言う。

あんな所で!と私は驚いた。
他の場所ならまだしも、あすこはダメだ。
さきほど書いたようなことも含めて話すと、連れは
そんなのわからない。それを理解しろと言うなら、一緒に山には行けない。
と怒り始めた。

日頃から感情に波の有る人だから、怒ることには驚かなかった。
しかし、それにしてもブリブリと、感じ悪い。
会話にならない。
車に乗って、私は運転しながら話しかけるが、
しかめっ面で涙ぐみながら頭を押さえて助手席の窓にもたれている。
何を話しかけても、返事をしない。

そこまで不機嫌になるか?
こうなると、まるで私がいじめているかのような気分にもなる。
たしかに、これでは一緒に散策を楽しむことはできない。



さて。
どれくらい時間が経ってからだったか、忘れてしまった。

実は、山道を出て車に乗る辺りからずっと、
若い女のすすり泣く声がつきまとっていて、頭が痛かったのだ、と言う。

何かを背負って来てしまったらしい。

やれやれ。
どこでどう収まったのか。
どこかで落としてきたのか。家に持ち帰ったのか。



何か、物を大切に使うこととか、他人への敬意とか、感情の制御とか、
そういったことの欠如が、
強い念のようなものにつけ入られる隙となってしまったのではないか。
と、私は考えている。



おおよその位置や道の雰囲気や地形を憶えているので、
十年以上経って、もう一度行ってみようと探したが、
なんだか見付けられなかった。

まあ、行かなくて良いのだろうと思う。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« エビ続報 | トップ | エビエビ続々報 »

コメントを投稿

椰子の実の中」カテゴリの最新記事