
[あらすじ] 同居母86歳パーキンソン病要介護2認知症状少々、9日間のショートステイ中に、
家の片付けをする。亡父の蔵書や手紙類を処分するなど。
手紙は、差出人ごとに分けて透明の平たい袋に移し替えて
五十音順に並べて、本棚の大きな範囲を占めていた。
なぜこのようにしてあるかと言えば、
亡父は私小説を書く人だったからだ。
自分の過去の経験を元ネタに、小説を書く。
そのため、いつどこで誰が何を言った、といった事柄が重要だったのだ。
とにかく、視線が過去を向く。
現在の生活よりも未来の生き方よりも、過去に重きを置く。
私としては、ねちこくて湿っぽくてアンハピーな感じがイヤである。
他人様の私小説もかなり読まなくなった。
身内が小説家ともなると、鬱陶しくてたまったもんじゃない。
多感な十代前半の頃に、ウッカリ父の小説を読んだことがある。
そこには母と私の存在も書かれていた。
父は米国のミシガン大学かどこかに留学していた頃に
相思相愛となった女性と結婚し、一子が有った。
この女性は肝癌だかで亡くなっている。
兄が小学低学年頃に、母と再婚した。
現在の調布の住まいに引っ越して2年半後、
兄は夜中に高速道路でずいぶんなスピードオーバーをして事故を起こして
死んでしまった。
小説の中で、汽車の席に座った主人公の男は、
連れの妻と息子がいつの間にかいなくなって、
他の女と子どもがいる、どうなってんだ、と思うのだ。
そりゃそう書きたくもなるでしょうねえ。
しかし、小説を書くようなもんは生活者として家族として父としては
かなり不適格だったりする。
それは…(つづく)
※
五十音順にきちんと並べられた手紙の束の中に、
母から父に宛てた古い手紙を見つけた。
こういうものを読み始めると、部屋の片付けが頓挫することは分かっておる。
罠には掛からないぞ。
とは言え、これは捨てるに忍びず、
私は身内からの手紙は捨てないというルールを決めて、他は処分することにした。
※
何度も縛りかけたが、結局捨てる気になれず、置いておくことにした本が有る。
『Lands and Peoples』というタイトルだ。
世界各地の暮らしを紹介した本のようだ。
表紙の絵が、美しい。
切り絵のような表現で、淡い色も良い。
そして写真では分かりにくいかもしれないが、
地の焦げ茶色の部分など、エンボス(型押し)が掛かっている。
こういう美しい造りの本は、今はなかなか無い。
家の片付けをする。亡父の蔵書や手紙類を処分するなど。
手紙は、差出人ごとに分けて透明の平たい袋に移し替えて
五十音順に並べて、本棚の大きな範囲を占めていた。
なぜこのようにしてあるかと言えば、
亡父は私小説を書く人だったからだ。
自分の過去の経験を元ネタに、小説を書く。
そのため、いつどこで誰が何を言った、といった事柄が重要だったのだ。
とにかく、視線が過去を向く。
現在の生活よりも未来の生き方よりも、過去に重きを置く。
私としては、ねちこくて湿っぽくてアンハピーな感じがイヤである。
他人様の私小説もかなり読まなくなった。
身内が小説家ともなると、鬱陶しくてたまったもんじゃない。
多感な十代前半の頃に、ウッカリ父の小説を読んだことがある。
そこには母と私の存在も書かれていた。
父は米国のミシガン大学かどこかに留学していた頃に
相思相愛となった女性と結婚し、一子が有った。
この女性は肝癌だかで亡くなっている。
兄が小学低学年頃に、母と再婚した。
現在の調布の住まいに引っ越して2年半後、
兄は夜中に高速道路でずいぶんなスピードオーバーをして事故を起こして
死んでしまった。
小説の中で、汽車の席に座った主人公の男は、
連れの妻と息子がいつの間にかいなくなって、
他の女と子どもがいる、どうなってんだ、と思うのだ。
そりゃそう書きたくもなるでしょうねえ。
しかし、小説を書くようなもんは生活者として家族として父としては
かなり不適格だったりする。
それは…(つづく)
※
五十音順にきちんと並べられた手紙の束の中に、
母から父に宛てた古い手紙を見つけた。
こういうものを読み始めると、部屋の片付けが頓挫することは分かっておる。
罠には掛からないぞ。
とは言え、これは捨てるに忍びず、
私は身内からの手紙は捨てないというルールを決めて、他は処分することにした。
※
何度も縛りかけたが、結局捨てる気になれず、置いておくことにした本が有る。
『Lands and Peoples』というタイトルだ。
世界各地の暮らしを紹介した本のようだ。
表紙の絵が、美しい。
切り絵のような表現で、淡い色も良い。
そして写真では分かりにくいかもしれないが、
地の焦げ茶色の部分など、エンボス(型押し)が掛かっている。
こういう美しい造りの本は、今はなかなか無い。
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