蘇州旧市街地の北西角にある閶門の内側に西中市という準幹線道路があって、この周辺は清末、民国初期に建てられた住宅や商店がたくさん残っています。1年ほどかけて、蘇州市が一帯の道路、住宅の屋根や外壁を修理しました。写真は化粧直しが終わった西中市です。
市が道路を整備するのは日本人の感覚でも分かります。しかし、個人の住宅や商店の外観を修復するのに税金を使うのはなぜか。多分、次のような事情だろうと思います。
中国では住宅や店舗は政府や公営企業が支給していましたが、1990年ごろから土地の使用権(住宅用は期間70年以下)を売り出すようになり、その上に建てられたマンションなどは売買されるようになりました。しかし、古くからあった住宅については、建屋についても所有権は政府に残り、住民は使用権だけを譲られたのではないか。これなら、政府は大家さんとして修繕の義務を負います。反面、住民は勝手に建て替えができません。
あるいは、建屋の所有権は住民にあっても、歴史的景観地域ということで権利行使に制限があり、見返りに市が外観に責任を持っているのかもしれません。
いずれにせよ、住民が勝手に建て替えができるのなら、とっくの昔に高層ビル群に変わっていておかしくない地域です。不動産に対する公の権限が強いからこそ、伝統的な蘇州の雰囲気があちらこちらに残っているのだと思います。
一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/