中国旅行記: スーの「あら!中国」

中国・蘇州を拠点に定年後を楽しむ男が、中国での日常生活や旅行で「あら」「おや」「へー」と感じたことを文章と写真で綴る。

”閲兵村”

2009-09-11 07:19:04 | 政治

  今年は中華人民共和国建国60周年にあたります。10月1日の国慶節には天安門前で20万人も参加してパレードや演技が繰り広げられるそうで、ハイライトは軍の閲兵行進です。しばらく前から、その訓練の模様がテレビで連日のように報道されるようになりました(写真)。

  行進に参加する陸海空軍と武装警察の訓練専用基地があるようで、「閲兵村」と呼ばれています。ここで、機械仕掛けの人形のように手足を動かしたり、国旗や軍旗を掲げて行進する様子が画面に映し出され、教官や参加者代表のコメントや経歴やらが紹介されます。

  北京オリンピックの開会式ですら、当日まで内容が秘密だったこともありますが、こんなに練習の様子が報道されませんでした。この大々的な報道は、国民の愛国心や軍に対する尊敬の念を強化する、軍人の士気を高めるといった効果がありそうです。

  しかし、私にはどうも違和感があります。一糸乱れのない軍隊の行進はナチス、旧ソ連、いまの北朝鮮のように全体主義の象徴として映るからです。軍のパレードにしても、兵士によって動きがばらばらなところがあるほうが、何か安心感がありますね。

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中国の朝鮮報道は当て外れ

2009-07-06 06:37:18 | 政治

  北朝鮮がまたミサイルを連続発射しました。蘇州で見るテレビも5日朝のトップニュースで報道しました(写真は日本の反応を伝えているところ)。ただ、ミサイル発射という核心部分については「韓国の報道機関が伝えたところによると……」という伝聞の伝聞という形です。北朝鮮が正式にコメントしていないのでこういう形になるのです。

  中国で住む前は、中国では日本や韓国とは違う北朝鮮の情報が流されているのではないかと、多少の期待を持っていました。中国は北朝鮮を庇護している唯一の国といってもよく、中国政府はどこの国の政府より北朝鮮の内部情報を握っているはずです。中国政府が北朝鮮に不利になる情報を流さないにしても、西側の情報の問題点を指摘したり、北朝鮮のいいところを紹介する情報を流すのではないかと思っていました。

  それが全くといっていいほどありません。北朝鮮の正式発表を伝える以外は、腫れ物に触るような扱いです。メディアも中朝国境を独自取材するといった報道はしません。結局、北朝鮮については日本や韓国にいた方がまだよく分かります。

  「腫れ物に触るような」という状況は、今の中朝関係をよく表している気がします。中国政府にしてみると、今の北朝鮮体制を批判したくはないが、褒めることもしたくない、という状況なのではないでしょうか。

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多い台湾の情報

2009-05-25 07:45:17 | 政治

  蘇州にいるとテレビで台湾の情報が豊富に伝わります。香港やマカオよりはるかに多い。政府が意識的に増やしているのでしょう。その結果、台湾は中国の一部という意識が知らず知らずのうちに中国人の中に浸透していっている、という気がします。

  第4中国中央電視台は毎日朝7時半からの30分と夜8時半からの30分に「海峡両岸」という番組を持ち、台湾のニュースや解説を放送します(写真)。北京のスタジオにいる司会者と台北にいる台湾人の解説者がやり取りする姿が画面に映し出されますが、両方とも標準語を話すので、全く一国内の雰囲気です。

  このほか第6中国中央電視台が「台湾万象」という番組を持っていますし、台湾情報に限りませんが「華人世界」とい番組もあります。

  さらに最近は、一般ニュース番組でも台湾関係の情報が増えました。台湾で1年前に発足した国民党の馬政権が大陸との直行便や投資対象拡大など関係強化策を次々に打ち出したからです。

  蘇州に来る前は、共産党一党独裁の大陸と、国民党と民進党が選挙で政権交代する台湾とは「水と油」のように思っていましたが、このごろは「血は水より濃い」という言葉を思い浮かべます。

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太平天国は一つの王朝?

2009-05-13 07:22:20 | 政治

  蘇州の庭園の中でももっとも有名な拙政園と蘇州博物館の間に、太平天国の蘇州の拠点だった忠王府が残っています(写真)。南京には、蒋介石の国民党総統府だった建物の隣に、太平天国の王宮だったところが残っています。両方とも立派で、「農民一揆のようなもの」という私が持っていたイメージは全く間違っていたことが分かりました。

  蘇州の忠王府の中には会議を開いた大きな宮殿や趣向を凝らした庭園などがあり、観光スポットとしても十分楽しめます。無料。

  資料を読み直してみると、清がアヘン戦争などで疲弊して末期に入った1850年に、洪秀全を指導者としたキリスト教を信じる人たちが乱を起こし、1864年まで中国の南半分を実質支配した。南京を首都とし、新しい制度も実施したといいます。

  今の共産党政府はこの動きを民衆の革命運動としてとらえているようで、史跡の保存に力を入れています。

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官僚が強引に引っ張る中国の消費

2009-03-23 08:21:33 | 政治

  中国の今年最大の課題はGDP(国内総生産)8%増。そこで打ち出された「家電下郷」「汽車(自動車)下郷」政策が徐々に効果を上げ始め、日本のプラスチックや鋼板などの素材メーカーにまで受注増となって波及し始めたようです。考えてみれば、この政策は中国だから実施できるもので、景気てこ入れの即効はあるが、市場に大きなゆがみを与える副作用の強い政策でもあると思います。

  内容は政府認定の商品を農民が買うと、家電は13%の財政補助、自動車は最高5000元の財政補助を出すというもの(1元は約14円)。景気刺激とともに、都市部と比べて経済発展が遅れている農村を豊かにするという”錦の御旗”が掲げられています。

  このような政策を日本でやろうとすると、なぜ農民だけ優遇するのか、という不公平論と、もっと実際的には農民とその他の区別をどこでつけるのか、という問題があってとても政策になりません。しかし、中国には農村戸籍と都市戸籍という戸籍上の区別があるし、中央政府の鶴の一声で有無を言わせない体制があります。このような体制は経済危機のような火急の時には有効性を発揮しますね。

  しかし、対象商品を政府が認定するのだから、露骨な市場への介入になります。認定の仕方が妥当でも問題があるのですが、役人が経済的に妥当な認定を出来るとは思えません。それに役人が経済に介入するときは、汚職の機会が増えます。

  観光地を抱える地方政府が消費促進策として競って始めた政策に、観光消費券を配るというのがあり、マスコミで話題になっています。世界に名だたる観光都市、蘇州市は早々と北京で10万枚の優待券を配りました。

  これも業者が自発的に始めるとすると、価格の割引でしょう。地方政府が優待部分を財政補助するというなら、市税を特定の地域から来る旅行客にだけ注ぎ込むことの妥当性が問われます。だいたい、蘇州市が旅行需要を掘り起こす対象として1000キロ以上も離れている北京が妥当なのかどうか。蘇州市幹部の中央政府に対するアピールと思えてなりません。

  消費促進策には中国のお国柄が色濃く出ていて、興味津津です。

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全人代に集まる世界の注目に中国人が注目

2009-03-07 07:38:51 | 政治

  昨日に続いて全人代の話題です。今年の大きな特徴は、世界の注目度が非常に高く、取材に訪れた外国人記者の数は約1000人にのぼると報道されています。そして、私が注目したいのは、そのことを中国のメディアが誇らしげに盛んに伝えていることです。

  日本の新聞、テレビでも報道されていますが、関心を集めているのは中国がどのような景気てこ入れ策を打ち出すか、ということです。いまや、中国は世界不況の中で”救世主”の扱いを受けています。初日に、温家宝首相の演説で今年度予算が示されましたが、今朝の中国メディアは「各国の主要メディアがこの予算と首相の演説内容を高く評価した」と伝えています。

  株式市場でも、中国株の動向が世界の市場に大きな影響を与えるようになってきました。日本の株式市場は米国株を見たり、中国株を見たり。「世界に先駆けて日本の景気を回復させる」といった麻生首相の言葉通りならば、日本の株式市場が独自の動きをしてもいいころなのですが……。

  自国に誇りを持つことはいいことだと思います。ただ、蘇州に来てから一年半の間、余りに愛国運動を繰り広げるマスコミ、あるいはその背景にある中国政府の姿勢に、胡散臭さを感じています。愛国心は行き過ぎると、全体主義に走り、個人の自由を圧迫します。言論の自由が大きく制限され、人権感覚が薄い中国社会の中で、愛国心が強くなりすぎるのは危険だと感じています。

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全人代は政府主催の国民総決起集会

2009-03-06 07:49:25 | 政治

  昨日、中国の第11期全国人民代表大会(全人代)第二回会議が開幕しました。写真は開幕式の様子を伝える中央電視台です。13日まで、新聞、テレビはその内容を大々的に報道します。

  全人代のことを日本では「国会に相当」と紹介するのが慣用になっています。しかし、この紹介は日本人に誤解を与えると思います。こちらでの報道から判断すると、実態は政府主催の国民総決起集会といったほうがいいでしょう。

  全人代は憲法を含め国の法律を制定したり修正できる機関ですから、形式的には国会=国権の最高権力機関といえます。しかし、3000人近い代表は普通選挙で選ばれるのではなく、実質的には共産党の意向で選ばれるのですから、日本や欧米の議会で行われているような意見を異にする政治家の討論の場とは全く違います。

  この国の実権は共産党中央政治局常務委員会(今は9人)が握っていて、そのメンバーから選ばれた首相、副首相が率いる政府が法律や、予算を作り、全人代に諮るという形をとります。しかし、代表が上に書いたような人たちですから、提案が否決されるようなことは有りません。代表は政府に対する要望を表明するのが精一杯のところでしょう。

  新聞、テレビはこの政府提案の中身を詳しく報道します。今年はGDP8%成長が最大の課題ですが、そのための予算がどうなっているか、十分実現可能という識者の解説などをつけて報道するといった具合です。

  また、話題の代表に焦点をあてて、意見を言わせたり、人物紹介をしたりします。今年は大地震があった四川の代表がよく登場して、要望を表明していました。これは住民の不満のガス抜きになるかもしれません。また、人物紹介では小、中学校の先生のように、一般庶民に近い地位にいる代表がよく登場します。政府が期待する国民像を体現している人たちでしょう。昨日は、代表の何人かが開幕式で歌う国歌の練習をしているところが長々とテレビで報道され、「これも愛国運動を盛り上げる手法なのか」と、少しあきれました。

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おかしな”お役所仕事”

2009-02-09 07:07:18 | 政治

  中国人であれ、日本人であれ、こちらで商売をしている人たちがそろって不満を持つ”お役所仕事”があります。税務署が受け取る領収書は、税務署が指定したメーカーの機械(タイプライターのようなもの)を使って作らなければいけない、というのです。

  インターネットでこの機械のことを調べてみると、3メーカーほどの機械が税金用に指定されているので、1メーカーが全国的に独占しているのではなさそうです。しかし、蘇州にある税務署はある特定のメーカーの機械を使うよう指示するといいます。各地にある税務署がそれぞれ特定のメーカーを指定している可能性があります。

  「指定された機械の値段は同等の機械の2倍から3倍」といい、役人や政治家の利権が絡んでいるといううわさも絶えません。

  ほかにも、工場を立ち上げるときに電力会社から電気設備の会社を指定された、という話を当事者から聞いたことがあります。中国では公正な競争が十分保証されていないことがまだまだ多いようです。

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公共の文化施設は入場無料

2009-01-21 07:23:02 | 政治

  蘇州博物館、蘇州民族博物館など公共の文化施設が去年半ばから無料になりました。蘇州だけでなく、中央政府の指示に基づいて全国の施設で無料になっているようです。

  中国はいま、景気対策のために巨額の財政出動を計画していますが、それでも10年末の国債残高が国内総生産(GDP)の20%台前半という予測で、健全な財政が無料開放の裏づけになっています。ちなみに日本の国債残高は先進国の中で一番悪く、GDPの2倍近くです。

  蘇州博物館は有名な庭園、拙政園の隣という地の利もあり、大勢の人が訪れます。歴史の古い街ですから、紀元前3000―2000年ごろの陶器や玉器なども展示されています。そのころの日本の状況を想像すると、ものすごい差があったことを感じます。

  今は、中国の方が日本から学ぶことが多いほど、日本もよく追いたものだと思いますが、最近の日本の政治や社会の劣化を考えると、いつまた追い抜かれるかもしれません。

  蘇州博物館の建物は近代建築として高く評価されています(写真)。

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