中国旅行記: スーの「あら!中国」

中国・蘇州を拠点に定年後を楽しむ男が、中国での日常生活や旅行で「あら」「おや」「へー」と感じたことを文章と写真で綴る。

日本の剣道を支える竹刀工場

2009-09-27 08:34:24 | 経済

  蘇州に竹刀工場があると聞いて、蘇州竹園剣道倶楽部の楊会長に案内してもらいました。想像していたような小さな工場ではなく、従業員250人のれっきとした中堅企業。工程の70%を機械化しているとはいえ、手作りと同じよさを残す工夫が凝らされており、日本の剣道ひいては世界の剣道が中国人によって支えられていることを実感しました。

  工場は上海との中間の古鎮・甪直にあり、蘇州の中心から車で1時間以上かかりました。会社名は蘇州宏達竹剣有限公司。社長の林信宏さんは台湾人で、父が1966年に台湾で始めた竹刀作りを継ぎ、1992年に蘇州に進出しました。

  竹は今も台湾の山奥でとったものを使い、加工機械はすべて林さんが設計したといいます。品質検査に多くの人手を使って、製品になったものは不良品ゼロに近いと、林さんは胸を張っていました。職人気質を色濃く残した社長さんです。

  竹刀は日本で買うと、普通の稽古用で1本5000円から1万円しますが、ここでは5分の一から10分の一近い価格で出荷しているようです。「中国から世界に輸出している竹刀は年間550万本。その半分以上はこの工場の製品です」ということでした。

  写真はこの会社の応接間に飾られた各種の竹刀です。工場は撮影禁止でした。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


反日感情に気を使う日系企業

2009-09-25 07:23:37 | 経済

  昨日に続いて日系企業の駐在員の方たちから聞いた話で、労務管理以外の悩みをまとめてみます。一番は反日感情への配慮、次いで役所などとの付き合いが難しいようです。

  蘇州は中国の中で反日感情の弱い地域だと思いますし、ここ1年ほどは中央政府が日中友好ムードをかもしているので、具体的に問題が起きているわけではありません。しかし、駐在の方々の気の使いようはかなりのものです。

  例えば、公害規制、労働法規など法令に対して現地企業はいいかげんだけれど、日本企業はしっかり守る。もともと法令順守の考えが強い上に、もし違反で摘発されたときに反日感情に火がつくことを恐れる、と皆さん口をそろえておられました。

  1年ほど前に労働法が施行され、従業員の解雇条件が厳しくなったのですが、中国人を総務担当にしている日系企業では、従来と同じように簡単に首を切ろうとする総務担当と日本人駐在員の間でしばしば衝突が起きるそうです。

  次に役人や電力会社など準役所とのつきあいです。この国では役人が民間企業から飲食などの接待を受けたり、季節の挨拶など理由のつく贈り物を受け取るのは問題にされません。また、電力会社などは工事業者を指定することが多いようです。日本では汚職につながるこのような付き合いをどの程度まですればいいのか、悩みの種になっています。

  もうひとつ、日本の本社または親会社が中国の特殊事情を理解してくれないという悩みが大きいようです。これは経営を現地に任せないという大半の日本企業が持つ特性と裏腹です。

  中国にある日系企業の今後の最大の課題は、この現地に経営判断を任せることだと思います。単なる工場としてでなく、巨大な市場としての中国、しかも特殊な経営風土の中国で臨機応変に対応するには中国に精通した人材を登用し、判断を任せないとダメでしょう。

  写真は日系企業もたくさん進出している新区を獅山から写したものです。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


くすぶり始めた中国経済の火種(下)

2009-08-18 07:25:04 | 経済

  中国政府は景気対策として公共投資拡大のほか、家電下郷や汽車下郷(汽車=自動車)といって家電、自動車の消費拡大に力を入れました。今年の自動車販売台数は1100万台を超し、米国を抜いて世界一の市場になる勢いです。

  それなのに、家電、自動車、鉄鋼製品の価格が大きく下がっているのはなぜか。原因は生産過剰のようです。中国のほぼ全ての産業で設備が過剰、と前から指摘されていました。今回の景気てこ入れ策にのって生産に拍車がかかったのでしょう。

  ここで、ジャブジャブに貸し出された資金がどこへ行ったかが、問題です。生産設備がもともと過剰ならば、産業に回った分は過剰の上乗せか、不良在庫増につながっているはず。そもそも、設備には余り資金が回らず、不動産や株式市場に回った可能性も大きい。株式相場とともに大都市の住宅価格も急騰し始めたことと符合します。

  この様な想定が当たっておれば、GDPの順調な回復とは裏腹に経営が悪化している企業が増えているはずです。この点が、経済指標や報道を読んでもよく分からない。新聞やテレビは不況の中でがんばっている企業のことばかり報道しますから、実態が見えないのです。

  昨日の世界の株価は中国株急落の影響で全て軟調になりました。中国の影響力が強まっています。その中国経済の今後は、企業の経営悪化による不良債権がどれほど表面化してくるかがポイントだと思っています。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


くすぶり始めた中国経済の火種(上)

2009-08-17 08:02:24 | 経済

  先週、中国の株式相場が大きく下げる日が続きました。世界各国の株価が平穏だっただけに、中国の変調ぶりが目立ちました。強引な景気てこ入れ策が抱えていた火種がくすぶり始めた感じです。(追加:株価は17日も大幅下落)

  少し、理屈っぽい話になりますが、7月18日のブログで「中国の経済運営のしたたかさ」という記事を出稿した手前、その負の部分についても感じているところを書いておきたいと思います。

  先週の株価急落の原因は、中央政府が発表した7月の経済指標のなかで銀行の新規貸し出しが急激にしぼんだことが明らかになったことです。1ヶ月前に発表された今年上半期の経済指標では、新規貸出額が7兆3700億元と年間の目標5兆元をはるかに上回っていました。前年に比べると3,4倍のペースで、これ自体が異常だったわけですが、7月は一転して3559億元になりました。6月の4分の1以下です。

  一方、中国の株価は、上海証券取引所の総合指数で見ると、最近の底値だった去年11月初めから急激に反騰し、9ヶ月で倍になっていましたが、これを支えていた順調な資金の流入がしぼむという憶測が生まれ、変調をきたしたというわけです。

  実は、景気指標が示す中国経済の異常さは外にもあります。上に書いたように、銀行が資金をジャブジャブ貸し付けているうえに、対外貿易が大幅に縮小するなかでGDP(国内総生産)が8%近くも伸びているということは、国内景気が加熱しているはずなのですが、消費者物価は2%近く、工業製品出荷額は8%以上も下落していることです。

  1年前に比べ原油価格が下がったことは確かですが、それだけでは説明できません。家電製品、自動車、鉄鋼など政府が強力にてこ入れして販売が伸びている商品で大幅下落が起きているのです。

  銀行貸し付けの異常な伸びと物価の下落という、矛盾する現象の裏で何が起きているのか、明日、解説を試みます。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


蘇州に1元ショップ

2009-08-12 07:21:57 | 経済

  蘇州で100円ショップならず1元ショップを見つけました(写真)。1元は約15円ですから、物価の安い中国でも「割安感」があるのでしょう、女性客でけっこうにぎわっていました。

  蘇州古城(旧市街地)内の白塔西路という中規模道路に面しています。ネックレスなど女性向け装飾品とプラスチックや金属製の食器が多く、靴下、おもちゃなども置いてあります。確かに全て1元です。店主か従業員か、若い男性が店先の歩道の椅子に座り、レジ係りを務めています。

  中国でもこの形態の店が発展するのかどうか。一般の商店でも1元や2元の商品を売っていますし、日本の100円ショップと比べて品揃えがグーンと見劣りします。日本の100円ショップは中国との製造コスト差を最大限利用する商品調達システムと輸送・配送システムを確立したことで発展しました。見掛けは似ていても、1元ショップとは成り立つシステムが違うように思います。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 

  


壁切り屋?

2009-08-11 06:46:11 | 経済

  この写真は蘇州古城(旧市街地)の東南、葑門地区の路上で撮ったものです。電動自転車に大きな丸ノコをくくりつけた男性数人が客待ちしています。奥の自転車の上には看板が立ててあって「切墻」と書かれています(実際の看板の字は墻の省略形)。「墻」は壁、塀、仕切りといった意味ですから、客の家に行ってそのようなものを切るサービスをする人たちなのでしょう。

  経済発展した蘇州でも、自転車修理など路上で客待ちしているところはよく見ます。しかし、「切墻」を見たのは初めてでした。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


長期課題にも効果--中国の景気てこ入れ

2009-07-18 06:58:51 | 経済

  今年上半期の中国経済統計の発表があり、第2四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.9%増と急回復ぶりが明らかになりました。昨日の新聞(写真)や国家統計局のWEBサイトに詳しい数字が紹介されています。

  内容を見て、中国の経済運営のしたたかさに感心しました。単なる景気てこ入れだけでなく、内需主導型への転換、農村振興、西部振興といった長期課題にも大きな効果をあげているのです。

  《内需主導》中国は長年10%を超える高度成長を続けてきましたが、その牽引車のひとつが外需です。輸出が年々20~30%も伸び、経常黒字はGDPの約1割を占めます(日本は3%程度)。その外需が急激に落ち込みました。貿易黒字額は前年同期比マイナスです。
  日本以上に成長率が落ちても不思議でない体質だったのに、この急回復を示したのは、固定資産投資と消費を核に内需を大幅に伸ばした結果です。国内だけを見ると、もう好景気といってもいいぐらいです。

  《農村振興》前年と比べた小売り総額の伸びを見ると農村部(県以下)が16.4%と都市部の14.4%を上回り、固定資産投資の伸びでは農村部が32.7%で都市部の33.6%と肩を並べました。去年までは5ポイント前後、都市部の方が高かった数字です。

  《西部振興》固定資産投資の伸びを地域別に見ると東部が26.7%、中部が38.1%、西部が42.1%となっています。

  つまり、過を転じて福にするような政策を成功させているのです。財政が火の車なのに税金を返すという人気取りにしかならない政策を採った国とえらい違いです。国(共産党)の力が絶大、マスコミが協力するといった制度が、危機の時には有効だったようです。

  もっとも、政府の督促に応じて金融機関がジャブジャブに資金を貸し付けていることなど後遺症が心配になります。焦げ付きとインフレです。ただし、好景気なのに物価が下落しているのが不思議で(生産過剰?)、これも景気を長続きさせるかもしれません。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 

  


中国で一番豊かな華西村(10終)

2009-07-09 07:16:37 | 経済

  華西村のシンボルは雄牛です。村入口のアーチにも飾られていますし(シリーズ最初の写真)、公園の真ん中に大きな像が鎮座しています(写真、後ろの楼に世界一という太鼓が収められています)。

  この牛の姿勢は角を下げて、今にも突き上げる格好をしています。欧米の株式市場で上げ相場のことを「ブル(雄牛)相場」といい、下げ相場のことを「ベア(熊)相場」といいます。ベアは上から下に打ち下ろすからです。華西村のシンボルはこの株式相場から連想したのではないでしょうか。村の企業を上場させ、経済発展に全てをかけている村を象徴しています。

  このシンボルのように華西村の経済は発展を続けられるのか。判断材料不足を棚に挙げて感想を書かせていただくと、村長が企業の経営にも責任を持ち、村民を優先的に雇用するというふうに、村という組織に縛られた企業がさらに競争が厳しい市場で生き残れるか、私には疑問です。また、経済、政治、社会全てに絶大な力をもつ人物がいる社会が村民に何時までも歓迎されるとは限りません。5年後、10年後にまた訪ねて見たいと思います。

  今日は華西村(9)と(10)を出稿しました。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


中国で一番豊かな華西村(9)

2009-07-09 07:16:16 | 経済

  華西村には年間100万人を超える観光客が押し寄せるそうです。「どれほど金持ちか」「どのようにして成功したのか」と関心のある人が全国各地からやってきます。「指導者がよければ、集団体制で、立派に成功する」という、共産党指導下の中国の模範例ですから、国を挙げて宣伝してくれてもいます。

  歴史や伝統があるわけではなく、観光資源は新しくつくったものばかりです。写真は世界一大きな鐘つき堂。すぐ近くには世界一大きな太鼓を収容した鼓楼。中国の歴史上の偉人、中国や世界の宗教の聖人、革命の英雄らの像が所狭しと並べられた公園。村の境界にある小高い山の稜線にはミニ万里の長城。その麓には揚州の痩西湖を真似た人造湖……。共通入場券が140元とか。ほかに太鼓を打つのに20元といった料金が必要です(1元は約15円)。

  旅行客を受け入れるホテル、ガイドなどの観光業も村の主要な事業になっています。最近、村民1000人を3班に分けて台湾旅行に送り出すということがニュースになりましたが、その台湾に旅行社とホテルを立てる計画も発表したそうです。

  観光地としての華西村は成金趣味と宣伝臭が強くて、私は少し辟易しました。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/

 


中国で一番豊かな華西村(8)

2009-07-08 07:13:29 | 経済

  この写真は、ホテルと観光センターを兼ねた建物「華西金塔」の1階にある衣服の商店です。入口の上に「華西村」とあります。店の名前であるとともに、この村で作る衣服にもついているブランド名です。

  全国に有名になった華西村の名前をそのままブランド名に使うあたりも、なかなかの商才ですね。

  他に、ぶどう酒や白酒にも「華西村」のブランドを入れたものを売っていました。この村で酒造りをしているという説明は見当たらなかったので、どこかから仕入れてブランド名をつけて高く売っているような気がしますが…。

  今日は華西村(6)から(8)を出稿しました。

 一日一回クリックして投票をお願いします→http://blog.diary-ranking.com/cgi-bin/in/ueno/