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映像作品とクラシック音楽 第44回 『ストリート・オーケストラ』マリン・オールソップはスラムの夢を見るか

2021-11-28 12:24:00 | 映像作品とクラシック音楽
クラシック映画が印象的な映画を紹介するシリーズ。今回は2015年のブラジル映画『ストリート・オーケストラ』を紹介いたします。

実話ベースのお話らしいです。ブラジルはサンパウロのスラム街の少年少女に弦楽オーケストラを指導していた男性がその後サンパウロ交響楽団のメンバーになるお話です。

バイオリンの才能はあるのにアガリ症でオーディションに落ちてしまう男性。その日もサンパウロ交響楽団のオーディションで失敗をやらかします。アパートの家賃も払えなくなり困っていた彼はスラム街の学校でオーケストラを指導するバイトの募集に応じます。
その学校に行ってみると、予想通り全員ものすごいヘタクソでこいつは指導のし甲斐がありそうだぜって思ったものの、スラムの少年少女たちは音楽学ぶ以前に、生活が不安定で、全員なんらかの訳あり、中には犯罪組織とつながっている子もいるのです。
しかし、いざ接してみると、素晴らしい才能を持った子もいたりするのです。美声の持ち主の女の子に、バイオリンの得意な男の子。
とくにバイオリンの男の子にぐっと来た主人公は、なんとか彼に音楽の指導を続けさせようと、そのために音楽をあきらめさせて働かそうとしている彼のお父さんを説得しようとするのです。
一方で少年たちを下っ端として使うマフィアたちもいて、主人公を銃で脅したりするのですが、主人公は銃を向けられながらも見事なバイオリン演奏でパガニーニを披露して銃を持った男を黙らせたりもするのでした(こうやって人前で弾く度胸もつけていきます)。銃にバイオリンで勝った男?として生徒の間でも話題になり、生徒たちの中にも主人公を一目置くものが現れたり、マフィアにも変に気に入られたりで、少しずつスラムの音楽教室に音楽が広まっていきます
そんな中、バイオリン得意の男の子の不良トモダチが警察とトラブルを起こし…

終盤、スラムの住民と警察が衝突。スラムは俺たちの街だと叫ぶ少年。貧富の格差が世界中で問題になっているなかで、社会の断絶を見る思いもしますし、若干ネタバレですが主人公は社会の問題に対して、大したことは何もできませんでした。しかし音楽が隔てられた階層間の懸け橋になるという希望を描いてもいます。

あんまり有名な映画ではないですし、有名な役者も出ていませんが、心に響く良品佳作なクラシック音楽映画ですのでぜひ一度ご鑑賞してみてください。

さて、サンパウロ交響楽団といえば、マリン・オールソップ女史なわけです。本作でも本人役で出演しております。さらにバーバーの弦楽アダージョの演奏を途中でとめて主人公に「あなた全然心ここにあらずじゃない。求めるレベルと違うわ」みたいな台詞まで吐いてなかなかの熱演をぶちかましてくれます。
それにしましてもこの方の凛とした指揮姿は画になりますね。どんなじいさん指揮者たちにも出せない彼女のオンリーワンな魅力ですね。

それでは本日はこんなところで
また素晴らしい映画と音楽でお会いしましょう

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