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映像作品とクラシック音楽 第99回 ジョン・ウィリアムズ×サイトウキネンオーケストラ コンサート(東京サントリーホール2023.9.5) 後編

2023-09-20 22:06:00 | 映像作品とクラシック音楽
23年9月5日サントリーホールでのジョン・ウィリアムズ来日コンサートのレポートの後編です。
前半ステファン・ドゥネーブによるE.T.などで会場は相当温まっております。休憩を挟んで後半が始まります。
オケのメンバーが席に着くとやはり緊張感が高まります。
そして、ついに登場です。ジョン・ウィリアムズ!!中学のころようやく映画の面白さに気づかせてくれた多くの映画でしょっちゅうその名前を見たJohn Williamsが、今目の前を、本物が歩いている!もっとも7年前にフィラデルフィアで見ているのですが、しかししかし我らがジャパンの地でまた姿を見る事ができるなんて!!
会場は当然の総立ち、万雷の拍手!
さすがに91歳、スタスタとは歩きません。おじいちゃんぽい歩き方です。指揮台の上り下りの際にはコンマスが介添えしておりました。
そしてマイクを持って会場に語りかけます。

また日本に来れた事、友人のセイジオザワに会えた事、3日前に松本で素晴らしい演奏ができた事などの喜びを語ります。
そして…
これからスーパーマンを演奏します。Super Manを英語から日本語に訳すと、セイジ・オザワになります。
などと言って会場を沸かせます。

実はウィリアムズのマイクを持ってのトークはこの最初のトークだけでした。ベルリンコンサートだともっと饒舌だったのですが、おそらく通訳を介さなければならなくて時間かかるからでしょう。それでもジョン・ウィリアムズの生の声で、日本のファンに語りかけてくれたことはとてもテンション上がりました。



⚫︎スーパーマンマーチ

さてさて「スーパーマン・マーチ」改め「小澤征爾のマーチ」です。
今までこの曲をいくつかのバージョンで聴いてきましたが、なんだかんだ最初のサントラ版のロンドン交響楽団の演奏が最高すぎて、だけどベルリンフィルの演奏も負けじと凄まじかった!なんて思っていたのですが、サイトウキネンによるこの演奏も熱くないですか!
生で聴いてるバイアスが強くかかっているのは否定しませんが、まさに怒涛の迫力!管も弦も打もオーケストラが一体となって我々に空を飛ぶ夢を見せてくれます。

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⚫︎スリーセレクションズ・フロム・ハリーポッター

そしてジョン・ウィリアムズの指揮による続けての演奏はハリーポッターの1作目2作目からの3曲です。
まず一曲目は私の大好きな「ヘドウィグのテーマ」
ピアノとチェレスタ担当の小林万里子さんによる印象的なチェレスタのソロによる出だしが素晴らしいです。実はこのコンサート、意外とどの曲でもピアノが重なり、小林さん結構大忙しです。
チェレスタのソロを追いかけるようにオーケストラが同じメロディをなぞりながら、次第にオーケストラが厚みを増していきます。
どこかムソルグスキーを彷彿とさせる曲で、ウィリアムズ流の上がる曲でも、うっとり系の曲でもありません。オーケストラの躍動がミステリアスな感じを膨らまし、聴くものを魔法の世界に誘います。まさしくジョン・ウィリアムズによる魔法の呪文のような曲です。

ハリーポッターからの2曲目は映画第2作『秘密の部屋』から「不死鳥フォークス」です。
ただまあ、わたくし、この第二作は観たはずなのにどんな物語かまったく覚えてなく、フォークスってなんだっけ?なのですが、どこか穏やかな安心感のある楽曲で、聴いていて良い気分になれました。
映画のクライマックスで使われたらしいです。不死鳥フォークスとやらが飛ぶ場面の曲であり、E.T.やスーパーマンとともにジョン・ウィリアムズがよく手がけるフライング(飛翔)テーマの一つとなるそうです(パンフレットの受け売りです)
ウィリアムズの楽曲には自由を愛おしみ、自由を誇り、自由を喜ぶ事が、共通テーマとしてあるように感じます(映画の都合で書いているだけで本人が意図しているわけではないにせよ)

そして3曲目、「ハリーの不思議な世界」ってドラえもん映画のサブタイトルみたいな曲名ですが、すっかりコンサートの定番であり今やジョンウィリアムズの代表曲かもしれないハリーと仲間たちの友情のテーマです。
この演奏におけるオーケストラのうねり方に少し独特なものを感じました。あえて調和を少しずらしてそれぞれのパートを競い合わせているような…気のせいですかね。

それでも絢爛豪華なハリーポッター組曲で、私たちはジョン・ウィリアムズの魔法にまんまとかかり、音楽世界に引き込まれていきます。

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⚫︎「シンドラーのリスト」
スーパーマン、ハリーポッターと気持ちを高ぶらせてくれる演奏に続けて、今度はグッと気持ちをクールダウンさせて色々考えさせる曲です。
といってもジョン・ウィリアムズの代表曲の一つでもある「シンドラーのリストのテーマ」です。
ウィリアムズが5回目のアカデミー賞を受賞した作品ですが、考えてみるとこの1993年の作品以降、受賞はしていないですね。
ウィーンライブでは「シンドラーのリスト」から追憶という曲を演奏し、ベルリンコンサートではシンドラーのリストからの演奏はありませんでした。
有名なテーマ曲のライブ演奏は久しぶりということになるでしょうか。
サントラだとイツァーク・パールマンが魂のこもったバイオリンソロを聴かせてくれましたが、東京でのコンサートでは豊嶋泰嗣さんがバイオリンソロを奏でます。
映画のサントラではユダヤ人の受難をユダヤ人のパールマンに表現させる事がウィリアムズにとって必要だったかと思いますが、あれから30年経ち純音楽作品としてよりグローバルな存在になったと言えましょう。
しかしだからと言って、たんに上手ければいいと言うものではなく、作曲者の想いを理解し、悲しみと苦しみとその奥に微かに灯る人間への希望を表現しなくてはなりません。
作曲者本人の前での表現を託された豊嶋さんの演奏には、名誉を得た高揚感のようなものは感じず、ただただ楽曲に心を乗せて悲しみを表現されていたように思います。

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⚫︎スリーセレクションズ フロム スターウォーズ

プログラムも終盤となり、いよいよスターウォーズです。

「レベリオン・イズ・リボーン」エピソード8最後のジェダイ より

スターウォーズファンの間ですこぶる人気の低いエピソード8ですが、実は私はエピソード8は結構好きです。むしろエピソード7と9はクソだと思っていて、続3部作と言われる7、8、9だと8が一番面白いと思うんですがね〜
ルークの最後の戦いに感動したんですけどね〜
映画作家としても7、9のJJエイブラムズなんかより、8のライアン・ジョンソンの方がはるかに作家性があり将来が期待できると思うのですがね〜
しかしながら現実としてスターウォーズファンの多くは8をけなし、興行収入の面では失敗と言ってもいい結果となり、あわてた製作陣が監督をジョンソンからエイブラムズに戻してストーリーを強引に軌道修正させた結果、エピソード9は惨憺たるものになってしまったと思います。だから9に関してはエイブラムズを責める気もあまりありません。

エピソード8と言えばもう一つ悲しい出来事があり、8で初登場の女性キャラのローズを演じたケリー・マリー・トランさんのインスタがいわれなき炎上攻撃を受けて、トランさんがインスタを閉鎖するという騒ぎがありました。
8を嫌いなSWファンが8の新キャラをイジメ対象にしたようです。
ローズは美人じゃないけど、好きな人のために一生懸命戦う姿は私は好きでした。

と、こんな話を長々したのは、ウィリアムズがエピソード8のこの曲をライブでやるのはウィーンライブに続いて2回目だからです。
「レベリオン・イズ・リボーン」は2つの楽想から成る曲で、その一つはローズのテーマです。
ウィリアムズのライフワークであるスターウォーズは、ウィリアムズから見たらどの子(エピソードという意味でも、登場人物という意味でも)も愛しいのです。
だからきっとウィリアムズはあえて不人気の8の、不人気のキャラのための曲を取り上げているのではないかと思うのです。

なんかのインタビューでジョージ・ルーカスはスターウォーズのキャラで一番気に入っているのは?と聞かれてジャージャービンクスだと答えました。
ジャージャービンクスはエピソード1に登場したカエル人間でいちいちウザい感じのキャラでした。当時のスターウォーズファンからも酷評され、最低映画の祭典ゴールデンラズベリー賞でもCGキャラなのに最低助演男優賞を受賞しました。
それくらいなら笑い話なのですが、ジャージャービンクスの声優が、トランさんのようにいじめられて彼は一時は自殺を決意したのですが、思いとどまったそうです。
決して自分のクリーチャーたちを悪く言わず、世間的な人気キャラも不人気キャラも等しく愛するところにルーカスの人間性の高潔さが表れています。
エピソード8のローズのための曲を好んで演奏するウィリアムズにもルーカスと同じ高潔さを感じるのです。

さておき、優しいローズのテーマと険しい戦争のテーマが交互に繰り返される「リベリオン・イズ・リボーン」はなかなか面白い楽曲です。ウィーンライブでの演奏よりも落ち着いた、荘厳さを感じさせる演奏でした。
生で聴いてるバイアスもあるのでしょうが、サイトウキネンの演奏の方が重厚で好きです。

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エピソード4『新たなる希望』より「王女レイアのテーマ」

こちらはベルリンコンサートのウィリアムズトークにもありましたが、ルークとレイアのラブテーマのつもりで作曲したのに、後でルーカスから実はあの2人兄妹なんだと打ち明けられて、エピソード5では急遽レイアとハン・ソロのラブテーマを作り、ルークとレイアの関係が明かされるエピソード6では兄妹としての2人を描く「ルークとレイア」を作曲したりとなりました。
おかげで旧三部作ではエピソード4以外ではレイアのテーマはあまり使われませんでした。
けれども、またエピソード8の話になりますがレイアがジェダイの血統として能力を覚醒させるシーンでは感動的にレイアのテーマが高らかに奏でられるのです。エピソード8はレイアを演じたキャリー・フィッシャーの遺作ともなりました。
なんとなく、レイアのテーマを持ってくるところにもウィリアムズのエピソード8贔屓を感じます。

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エピソード4『新たなる希望』より「王座の間とエンドタイトル」

スターウォーズから3曲目はエピソード4のラストシーンとクロージングクレジットを彩る「王座の間とエンドタイトル」になります。
勇壮なマーチ風に奏でられるオビ=ワン・ケノービのテーマから始まり、ルークたちに勲章が授与される場面には平和を喜ぶ授与式のテーマとルークのテーマのBメロ(タイトルテーマのストリングス部分)が奏でられます。
そして映画にない演奏用の編曲でオビワンテーマの木管と弦による悲しげな変奏を挟んで、エンドタイトルに移行します。
反乱軍のテーマのファンファーレから、ルークのテーマ、レイアのテーマ、またルークのテーマ、そしてコーダはエピソード4でなく、エピソード6のエンドタイトルのものになります。
ティンパニとスネアが熱いです。
これぞジョン・ウィリアムズ節な感じの勝利と歓喜、そして自由を讃える楽曲。サイトウキネンオーケストラの面々は宇宙に響くシンフォニーを堂々と演奏し、圧巻でございました。

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アンコール 「ヨーダのテーマ」

スターウォーズの演奏が終わり客席総立ちでの拍手の中、ジョン・ウィリアムズが退場します。
が、まあ、お約束ですぐ戻って来まして、指揮台に立ちます。
ぴたりと止む拍手。
そしてウィリアムズは客席を向いて、静まり返った会場にむけてマイクを使わずに肉声で「Yoda」と言います。
拍手と歓声。そして演奏が始まります。

実はこの時松本コンサートでのアンコール曲が何かはすでにわかっていて、おそらく同じ曲だろうと思っていたので意外性は無かったのですが、ウィリアムズがぼそっと呟くのは意外でした。

ヨーダのテーマはベルリンライブでも演奏しました。老境のウィリアムズにとって900歳のジェダイマスターヨーダは特に思い入れがあるのかもしれません。

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ヨーダのテーマの演奏が終わりまた拍手喝采。
ウィリアムズが2曲目の準備をする素振りを見せるとまた会場はぴたりと静かになります。
そしてウィリアムズはまたおもむろに客席を向いてボソリと言います。
「Indiana Jones」

待ってました!うぉぉ!と会場から拍手と歓声。
そしてお馴染みレイダースマーチです。
紅白のトリのサブちゃんの祭と同じですね。
ウィリアムズのコンサートならこれを聴かなきゃ
中盤のマリオンのテーマの部分の穏やかさからの終盤のレイダースマーチ繰り返しでのスネアの怒涛のリズムと躍動するオーケストラが素敵すぎます

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さあ、レイダースマーチが終わりました。会場は拍手です。そしてまた静かになります。多分全員が同じ気持ちです。知ってるよ。アレだろ。最後にアレやるんだろ。
ウィリアムズがまた会場を向いてボソリと呟きます。
「Darth Vader」
会場はうぉぉぉ!と歓声
そして、例のアレの演奏です
レイダースマーチが紅白でいうサブちゃんの祭なら、帝国マーチは蛍の光ですかね。
毎回毎回悪のマーチで締めくくるってのも面白いですが、やっぱ盛り上がっちゃうんだもん。
どうせならウィリアムズも赤く光る指揮棒振ればいいのに。

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3曲のアンコールを元気いっぱいに演奏したウィリアムズが退場します。
拍手は止まりません。
ウィリアムズが戻って来てまた挨拶します。
そして舞台からはけます。
オーケストラのメンバーも舞台から出ていきます。
が、しかし、会場の拍手は止みません。
普通のコンサートならこの辺でみんな拍手をやめて帰り出すかな?というタイミングを超えてまだ拍手は続きます。
すると、オーケストラのメンバーが舞台に戻って来ました。
まさかの4曲目?と一瞬期待しましたが、そんなわけはなく、会場に挨拶してまた去っていきます。
それでもまだ拍手は止みません。
もう一度くらいオケのメンバーが戻って来たように記憶しています。
そしてまたはけて
それでも止まない拍手

帝国マーチの後の拍手は何分続いていたのでしょう?20分か30分くらい続いた気がします。流石にこの鳴り止まない拍手をフル尺で収録した映像はないでしょうから、実際にどれくらいの長さだったのかはわかりません。
でも、こんなに長く拍手が続いたコンサートを私は知りません。

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演奏が終わり会場を出ます。
ついつい、物販コーナーでボストンポップス時代のジョン・ウィリアムズのCDを2枚買ってしまいました。

あのジョン・ウィリアムズがスーパーマンやスターウォーズやレイダースを日本で私の目の前で演奏してくれる日が来るなんて
91歳なのに、元気いっぱいで、帝国マーチをノリノリで演奏して。
ありがとうジョン・ウィリアムズさん。
この熱い感動を一生忘れません



…というところで、今回はこんなところで!
また素晴らしい映画と音楽でお会いしましょう!

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