第一話物語…
さいたまのとあるポンコツオーケストラの立て直しのため市長の息子でヨーロッパで活躍する指揮者の常盤朝陽が呼び戻される。あまりのオケのポンコツぶりにやる気を無くす朝陽だが、その市役所で働く地味な女性が実はかつて天才バイオリニストとして一世を風靡しつつも、突如楽界から姿を消した谷岡初音であることを知り、彼女をコンマスに迎えてオケを一流に叩き上げようとする。しかし初音は頑として演奏を拒むのだった…
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普段あまり連ドラを見ない私ですが、オーケストラネタであることと、「映像作品とクラシック音楽」のネタ作りのために観てみました(笑
いや、それだけではないです
主演の門脇麦さんが好きなのです
自分自身とまったく違う人間になりきれるすごい女優です
『さよなら、くちびる』という映画がありまして、インディーズのガールズボーカルユニットの1人を門脇さんが演じました。ギター弾きながらあいみょんや秦基博の曲を歌っていたのですが、歌唱力というより演技力でもって、女の子としては不器用だが音楽にはストイックなカリスマシンガーという役に説得力を出していました。もちろん歌もギターもうまかったのですが。
あるいは『愛の渦』という映画で見せたあの「豹変ぶり」は、役者だからこその表現でした。(映画の内容が内容なだけに具体的に書けないのがもどかしいですが)
あるいは『止められるか俺たちを』という映画では伝説の若松孝二監督の撮影スタッフになってしまう女性を演じ、若松組の過酷かつ熱気漂う撮影現場に、私たち観客を誘ってくれました。
そうです、私の好物の、メジャーというよりマイナーというかインディーズに近い日本映画で活躍してきた女優です。
そんな門脇麦さんが日テレの深夜枠じゃない時間帯のドラマに出るわけです。そういう時間帯で視聴率とれる人になったんだな…と少し感慨深いです
残念ながらドラマっぽいゆるい演出、ゆるい脚本で彼女の魅力を出しきれたとは言い難いのですが、それでも第一話のクライマックスで、「ウィリアムテル」を弾く姿は(バイオリンの音は後付けなのでしょうが)、元天才バイオリニストという役に説得力を与えていました。
アンサンブルなどと言えないほどバラバラな演奏をしていたオケが、門脇麦さんが弾き出すと急にそこそこまともに演奏し出すのですが、んなわけあるかいと思いつつも門脇麦さんの自信と喜びに溢れた演奏(する演技)を見ていると、そういうこともあるのかな…などと心地よく騙されてしまいます。
しかし、第一話しか観てないのでまだなんともですが、ドラマと映画って違いますよね
私は映画やアニメやドラマなんかで傑作と思う基準として、そこに無いものを感じさせるか、だと思ってます。
写していないものが見える(気がする)
発していない音が聞こえる(気がする)
喋っていないのに心情が伝わる(気がする)
リバーサルオーケストラ第一話にはそうした私的な傑作要件は一つもありませんでした。
門脇麦さんがバイオリンを弾き出した時、オケの一員がわざわざ「すげー」というセリフを吐いて、その演奏がどれだけすごいのかを説明しています。小さな一言ですが余計な一言だと思いました。
門脇麦さんの演技力を信じて欲しかった。
あるいは、演奏を終えた門脇麦さんが家で妹に、とても楽しかった、と心情を説明します。
なぜ、あの場での演奏がそれほどグッときたのか、そもそも脚本がそれを感じさせる説得力ある展開になっていないから、だからしゃべって説明させたのです。
「すごい演奏」とか「楽しかった」って感情を、脚本で、カット割や映像で、編集で、音響で、説明なしで伝わるようにディレクションするのが演出というやつですし、監督の仕事なわけです。
なので残念だなと思いましたが、まあ連ドラというやつは、家事したり酒飲んだりの「ながら見」ができるように作らなくてはならず、しっかり見なくてもストーリーが伝わるようにしなくてはなりません。だから台詞で説明しちゃうのもまあ仕方ないですし、それはそれであまり頭使わずに観れるので、気楽ではあります。
とは言えまだ第一話、今後の展開次第では面白くなるかもしれませんし、なんだかんだで門脇麦さんはすごいです。ドラマのゆる〜い世界にもきっちり馴染んで、またコミカルな彼女を見たくなります。
というわけで第二話以降も見ようかと思います。最終話まで観たら改めて全話通じた評でも書こうかなと思います。