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トップガン・マーヴェリック その1…ネタバレ物語沿い所感

2022-09-27 08:45:00 | 映評 2013~
観賞からだいぶたってしまいましたが、やっぱりこの映画の映評は書いておかねばなるまい…と思い書きます

トップガンマーベリック

といっても、もうこんな時期だし、観た人向けネタバレ全開で、批評なんてもんではなく物語に沿った副音声解説っぽく…

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映画が始まります
ビデオで何十回と見た『トップガン』のオープニングと同じ曲が聞こえてきます。
サントラでは「トップガン・アンセム(トップガン讃歌)」という曲名で収録されているインストナンバーの、エレキギターを抜いたバージョンです。
ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマープロダクションと表示されます。このプロダクション名は前作と同じです。しかしドン・シンプソン氏は90年代に亡くなっています。もちろんこれは当時の相棒だったジェリー・ブラッカイマーの、そしてトムクルーズからの敬意の表れですが、まるでみんな大好きだった『トップガン』のリバイバル上映でも始まるのか?あるいは俺たちは1986年にタイムリープしてしまったのか?と思わせるための演出でもあるのでしょう。
そして今時のアメリカ映画じゃあまりやらない、映画の前に出演者のクレジット。「トム・クルーズ」
そして海軍が失われつつある空中戦技術の育成に云々の字幕。前作で「men」だったところを「men and women」と時代に即した微妙な変更があるけど、それ以外は前作と同じ文言。で、字幕が
Today, the Navy calls it Fighter Weapons School. The flyers call it:
戸田奈津子さんの字幕だと「世界最高のパイロット学校の呼び名は…」
直訳っぽくすると「今日、海軍はそれをファイター・ウェポン・スクール(戦闘機兵器学校)と呼ぶ。飛行機乗りたちはこう呼ぶ…」
で、カットが変わって

TOP GUN

と大きいフォントで表示されてなんだか魂が熱くなるのです。
そして映像がフェードインして、空母の甲板上で、兵士たちが戦闘機を飛ばすためにわちゃわちゃしてるのをスローモーションで映し、前作ではF14だったのが、F18になってますが、映像の質感は前作まんまで、トップガン・アンセムは流れ続けて、空母上の映像にキャスト、スタッフのクレジットをオーバーラップさせながら…
っておいおい、86年のあの頃と同じじゃねーか!と魂のウォーミングアップが完了したところで、監督名の表示が終わると共に戦闘機が発進!すると音楽がケニー・ロギンスの「デンジャーゾーン」に変わったところで魂がトップギアに持っていかれます。
ここは!間違いない!80年代だ!!

前作だとそのまま発信した戦闘機が敵対国の戦闘機と遭遇する展開になるのですが、続編は物語が一旦ぶった斬られます。
話は変わって…って感じでどこか田舎で暮らしているマーベリックの姿を写します。
で、彼はなんかすごい飛行機を作ってそうな基地に出勤します。
そして上司の命令を無視して最新機を飛ばしてマッハ10の壁を破るスピード記録を樹立しますがその最新機は派手にぶっ壊してしまいます。なんだか『トップガン』を観に来たのに『ライトスタッフ』を見せられてるような感覚になります。トムに面目潰される上司がエド・ハリスってところもライトスタッフ感を助長してるのですが。
しかしこのシーン、これはこれで嬉しい出だしです。マーベリックは前作では管制塔スレスレを飛んで管制官のコーヒーをこぼさせる迷惑野郎でしたが、相変わらずどころかさらに輪をかけた悪ノリ迷惑野郎でいたってこと。そして相変わらず上司に嫌われる奴だってことがわかるからです。だいたい3機撃墜の英雄でまあまあの歳なんだからそれ相応の地位に出世してなきゃならんのに、まだパイロットってあたりが…嬉しいじゃないですか

それでエド・ハリスにお説教されます。前作のバックトゥザフューチャー校長のようなパワハラ的怒鳴り方は昨今の時代にあわないのか、とてもイヤミくさい叱り方です。軍隊から永久追放かと思いきや、あのアイスマン司令長官が言っておられるからトップガンに行け、と言われます。
前作なら「デンジャーゾーン」がフェードインしてきて場面転換なところですが、そこまでアホ映画に吹っ切れない本作は、トップガン・アンセムの例のエレキギターのメロディと共に場面転換になります。これはこれで魂を熱くします。

で、トップガン基地(などとZAT基地みたいに言いましたが、そういうものでないことは百も承知ですが、まあ、そういうもんでしょう?)に行き、基地に併設のパブに行くとその店の女将はジェニファー・コネリーです。『トップガン』と同じ頃に『ラビリンス魔王の迷宮』で僕らをキュンキュンさせてくれたジェニファーじゃないですか。あの頃と変わらぬわけではないですが、しかしはるかにいいオンナになっているわけです。アカデミー賞とってますしね。といってもそれも20年前か…
で、このジェニファー演じるマーベリックの元カノの名前がペニー・ベンジャミンなのですが、実はペニーさん前作にも「登場」していたってことはもはや一般常識でしょうね。
ま、しかし考えようによっちゃあの頃マーベリックはラビリンスのころのジェニファーちゃんみたいな娘に大人の恋を教えてやがったのか?そりゃ当時の司令官も怒るよ。#metoo でもされやがれ!

ところでトップガンの歌といえばケニーロギンスのデンジャーゾーンと同じくらいに有名なのがベルリンの「愛は吐息のように Take My Breath Away」なわけですが、本作にも結構ラブなシーンがある割に流れません。あの曲も聞きたかったなあ…という私に妻が言いました。「そんな元カノ(ケリー・マクギリス)との思い出の曲かけるわけにいかないでしょ」な、なるほど、そりゃそうだ。

するとパブにぞろぞろと、自分こそ世界一の腕前のパイロットだと信じているような、あの頃のマーベリックやアイスマンと同じ面構えの(バカそうな)若い男女がぞろぞろやってきます。
その中にマーベリックは見つけるのです。かつての相棒グースの息子を。
グースの息子ですが、いや本当にアンソニー・エドワーズそっくりですね。よく見つけたな…と思って調べてびっくり、マイルズ・テラーって、あの『セッション』でJKシモンズにパワハラ教育されてたあいつじゃないですか。こんなグースみたいな顔だっけ?と思いましたが、一方でいつも過酷な特訓をさせられる奴だなぁとかわいそうにもなりました。

そのグースの息子がパブのピアノで、「Great Balls of Fire」を歌います。
前作でグースが、ちっちゃかった息子をピアノに座らせて歌っていた歌です。グースが歌っている後ろの席でマーベリックとケリー・マクギリスとメグ・ライアン(!)がお喋りしていた、あのシーンを思い出すわけです。
ついでにいうと前作でグースは訓練中に「撃墜」されたときに思わず「Great Balls of Fire」と呟くなど彼の持ち歌を超えて口癖にもなっていた曲なわけです。
それをあの時のグースと同じようにピアノを弾きながら歌う息子、それを見るマーベリック… リズムが遅い!と言ってシンバルを投げたりはしません。ただ彼はその場を去るのです。といってもその直前に、「若者達がまさかこいつが教官とは思いもせずにめっちゃ失礼なからみ方する」シチュエーションがあり、続くシーンでお決まりの「めっちゃ失礼なことした人が教官としてみんなに紹介される」となります。この展開もまた前作『トップガン』の流れを汲んでいて、少し目頭が熱くなります。

そのあとトップガンの訓練になるのですが、ここでやろうとしていることが、「狭い溝に沿って猛スピードで飛んで溝の先にある標的にピンポイント爆撃をする」というなんかスターウォーズみたいな作戦になります。みんな飛行訓練なんかいいからフォースを学べ!トムよりオビワン呼んでこい!とアドバイスしたくなります。
トムの教育方針はとにかく慣れろ!すげーGがかかるが、対策は慣れろ!の一点です。
100パー無理だよそんな作戦と皆が諦めかけたら自分でやってみせるという荒技を見せつけます。
以外とこの映画、アメリカ人は認めたくないかもしれませんが山本五十六の名言をなぞっているようで面白いです。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」

ところでちょっと思うのはあれだけむき出しで配置されている敵の対空ミサイル設備を、トマホークで破壊することはできなかったのでしょうか?まあ、その辺は軍事オタクの方がもっともらしい説明をしてくれるのでしょう。

さて、訓練シーンについては特にどうこう言うこともないんです。
そんなことより問題なのは、これだけ若い奴らが揃いメンバーに女性までいるのに恋愛にうつつをぬかすけしからん奴がトム1人というところが、なんだか無駄に感動します。
前作ファンには浜辺でみんながスポーツしてバックにご機嫌な音楽がかかるというストーリー上どうでもいいシーンがちゃんと用意されていることでしょうか。
前作だとケニーロギンスが歌う「Playing with the Boys」をBGMにビーチバレーやってる謎シーンでしたが、今作ではワンリパブリックの「アイ・エイント・ウォーリード」をBGMに浜辺でアメフトやってるシーンになります。しかしちょい残念なのはこのシーンに言い訳説明台詞をつけたことですか。こんなことしてる暇あるのか?と上官に言われたトムが、結束が強まる、とその効果のほどをドヤ顔で語るわけです。トニースコットならそんなセリフばっさりカットしただろうなと思いますが、まあ、あのころの馬鹿なことの数々もまたトムの糧になっていることを示しているともいえましょう。

そしてまあ、色々あって実戦です。
前半で敵の基地を写した衛星写真から今回の攻撃目標の敵基地にはF14が配備されていることが説明されます。

トップガンと言えばF14トムキャットだったのです。あのころ私もトムキャットのプラモ買いましたよ。Hasegawaだったかな?TAMIYAだったかな?
しかしあの当時においてさえベテランの域に入っていた戦闘機です。2022年にもなってアメリカが、映画の中とは言え、使うわけにはいかないのです。
とは言えマッハ3を出せて空母に離発着できて超遠距離から空対空ミサイルで攻撃できる戦闘機です。今だってそこそこ戦えるはずで、かつてのアメリカの友好国で今は敵対国になってる国、ぶっちゃけイランは実際F14を運用しているようです。

だからって今回の敵国がイランと決まったわけではありません。前作同様敵のパイロットはスモークのかかったヘルメットで人種を特定できないように配慮されており、具体的な国名も言及されておりません。とは言えあそこなんだろうな…とは思いますが、ここは製作陣の意図を汲んで架空の国Xとして鑑賞するのが正しいでしょう。

とは言え敵がF14を持っている、という情報からもしかして今回トムはかつての愛機F14と空中戦でもするのかと予想したものの、敵は敵でもっと最新型の戦闘機を持っていることも説明されるのです。
で、まあデススター作戦みたいなやつで標的を吹っ飛ばすのはまあ予定通りとしてトムがまさかの撃墜されます。
しかし脱出描写いっさいなしで当たり前のようにトム生きてましたってカットが出てくるこの端折り方、思わず笑っちゃいましたがトムならではの正解のつなぎ方ですね。
とは言え敵の真っ只中。ロシア製っぽい戦闘ヘリに追われて大ピンチなところにグースJr.が戻ってきて助ける…のもまあ想定内でしたよ。
しかしここでグースJr.も撃墜され、トムと2人で敵中に投げ出され、さあどうするってなって敵のF-14奪うって!なんだこの神展開!
イ〇ンさんF-14大切にしてくれてありがとう!
そんなわけで複座式のF14にトムとグースJr.が乗り込んで飛び立つ、この胸熱展開。まさか2022にもなってマーベリックがまたF14に乗る姿が見れるなんて!しかもグースの息子と!
でもって空中戦となってあれやこれやで空母に着艦!みんなでわーわーしてるの、前作の凱旋シーンがフラッシュバックするじゃないの。ブリッジかすめ飛んでほしかったけど。

で、前作よろしくヒロインとの再会で終わるわけです。最後でジェニファー乗せて飛んでるプロペラ機は映画用に調達したものでなくトムの私物だそうです!こういう公私混同大好きだぜトム。

そしてレディガガの歌をかけて、これまた前作同様にメインキャストの映像付き再紹介です。80年代のあの頃はこういうキャスト映像紹介のエンディングは多かった気がする。『プラトーン』とかもやってたなぁ。まあ、ここもまたがっつり80年代感で締めくくるのですよ。徹底してますね。

あ!書き忘れたけど、トムとアイスマンことヴァル・キルマーが再会するシーンが実は本作で一番くらいの感動シーンでした。
ヴァル・キルマー、トップガン組俳優の中ではトム以外ではメグ・ライアンと並ぶ出世でした。ま、前作ひっそりとティム・ロビンスもいたりしますけどそれはノーカウントで。
90年代は主演映画もバシバシ作られ、バットマンにもなったヴァル。00年代出番が少なくなり、2007年のトニー・スコット監督『デジャヴ』で久々見た時にはタイトルをデブジャと間違えたかと思うくらいお太りになられていて、でその後咽頭癌を患い声を失ったのだそうです。
だからメッセンジャーみたいのでマーヴェリックとずっと会話していたのもヴァルの体調を気遣うトムやスタッフたちの配慮だし、彼が一言喋るのはさらに感動なのです。(調べたところによるとあの声はAIで合成したものなのだそうだ)

それにしても今回出番のなかったケリー・マクギリスもヴァル・キルマーもトシ考えれば致し方ないが皆あの頃から老いて変わったのに、トムだけはあの頃のように、いやあの頃より元気で、映画の中で恋して走って戦闘機を飛ばして…青春時代だった『トップガン』のころから『トップガン・マーヴェリック』の今に至るまで変わらず青春スターであり続けてくれてありがとう。トムの生き様そのものが『トップガン・マーヴェリック』の魅力なのではないかと思うのであります。

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