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英語教師のひとりごつ

英語教育について考える。時々ラーメンについて語ることもある。

giveの指導の一考察

2017-03-16 21:20:00 | 日記
だいぶ前の研修でのある話を今さらながらしていきます。

研修の中で、要約すれば次のような話がありました。「」の部分は研修の内容だと思ってください。

「文法指導では、使用場面を与えてやることが大事だ。」

なるほど、私にとって100%同意できる話であることは疑いようがありません。問題は次から。

「例えばgive A Bとgive B to Aのような2つの形をただ書きかえの指導だけで終わらせていないだろうか。これら2つの形の使用場面の違いを理解させることが重要だ。使用場面が異なるのは、英語が新情報を文末に持ってくる性質があるからだ。だから(1)のような文は非文で、(2)のように言うべきである。

(1)He gave me it.
(2)He gave it to me.

(1)はitという旧情報を最後に持ってきているので(2)が適切な文である。このように考えると、give A Bとgive B to Aの使用場面の違いも理解しやすい。つまり、Bを文末に置くgive A Bでは、例えば友人に何をあげるかを話題にする時に使われる。一方、give B to Aはプレゼントを誰にあげるかを話題にする時に使われる。このような使用場面を生徒に与えて指導してみるとよい。」

さて、この「」の内容には賛成できない点がいくつかあるので、そこにツッコミを入れていきたいと思います。

まず、上の(1)と(2)の例文は適切か、という問題から。例文をもう一度見てみましょう。

(1)He gave me it.
(2)He gave it to me.

さて、旧情報、新情報という観点からすると、itと同じように代名詞であるmeも旧情報といえないのか、という問題が頭を過ります。実際にネイティブスピーカーの中には(1)を問題なく使う人も多いのです。ただし、(2)の方が一般的だと感じる人も多いようです。スコットランド出身のネイティブスピーカーはどちらも問題なく使えると言っていました。アメリカやカナダでは(1)についてイギリスほど容認度が高くない印象ですが、中には容認する話者もいますので、アメリカやカナダでも出身地と関係するのかもしれませんが、現時点ではよくわかりません。とりあえずの結論としては、(2)の方が一般的であるが、(1)についても出身地によっては高い容認度を示します。ただし、次のように代名詞ではなく、固有名詞が使われると、容認度は一気に下がります。

(3)He gave Mary it.

これは代名詞を用いた(1)とは異なり、Maryが明らかに新情報なので、itよりも後にきた方がよいから、というのが理由です。とにかく、情報の新旧という観点からは(1)や(2)のような例を出すのはふさわしくないでしょう。

もうひとつ、上記の発言で引っ掛かったのは、give A Bとgive B to Aの場面設定についてです。使用場面を考えることは確かに重要なのですが、これらの2つの形に関していえば、その違いはかなり微妙です。実際の会話の中では、これらの2つの形についてはあまり区別されずに使われていることも多いようです。実際の使用場面をみてもネイティブスピーカーでさえ従っていない違いについて生徒がどれだけ意識する必要があるでしょうか。もちろん、例えば受動態と能動態の使用場面の違い、それぞれの助動詞の使用場面の違いについて学ぶことは有益であることに疑いはありませんが、今回のgiveについてはそれほど神経質になる必要はないでしょう。それよりも私が重要だと思うのは、Celce-Murcia&Larsen-Freeman(1999;378)も下の例文を用いて述べているように、統語(つまりgive A Bとgive B to Aといった文の語順)によってではなく、音韻論的手段でも違いを示すことができる点ではないでしょうか。

(4)Pass the salt to me.(the salt にストレスを置くことで例えば「胡椒じゃなくて塩ね」という意味を表せる)

(5)Pass me the salt.(meにストレスを置くことで「ロジャーにじゃなくて私にだよ」という意味を表せる)

上記の文献では短い記述しかありませんが、こういった音韻論に関する指導は非常に重要です。実際に、多くの会話ではgive A Bとgive B to Aのような場合、統語的差異よりも、音韻論的手段の方が優先されてます。

こう考えると、統語的差異ばかりが強調され、その差異で使用場面がかなり厳密に限定されるように思わせるが、実際にはその他の(例えば音韻論的手段など)要素の方が大事で、しかも会話に全く支障のない問題、さらに使用の面からみてそれほど厳密に守られているとはいいがたいことを敢えて指導する必要はないと思います。もちろん、教員になるなら知っておくべきだと思いますが。

つまるところ、高校生ならせいぜい「英語では文末になるべく新しい情報を置きたがるから、give A Bでは何をあげるかに、give B to Aでは誰にあげるかに話題の重点が置かれているように感じることが多いよ」くらいの指導で十分ではないでしょうか。


【参考文献】
Celece-Murcia, M,&Larsen-Freeman, D.(1999). The Grammer Book An ESL/EFL Teacher's Course 2nd edition. Heinle&Heinle.

discuss aboutは間違いなのか

2016-07-29 21:53:00 | 日記
discussは他動詞なので、discuss aboutは間違いだ、とよく日本では指導されます。しかし、どの程度間違いなのか、ということはあまり知られていません。「この用法は間違いです」といわれても、明らかに不自然なのか、一般には誤りではあるがネイティブは頻繁に用いているのか、その程度によって果たして大学入試で問うべき価値があるかどうかは異なるように思えてなりません。

discussに関していえば、discuss aboutは日本人が思っているよりも、ネイティブはこの誤りを頻繁に犯します。ネイティブによっては、不自然とは感じない人もいます。つまり以下の(1)は意外と容認度が高いのです。

(1)We discussed about the matter yesterday.(私たちは昨日、その問題について話し合った。)

一般に日本では次の(2)が正答とされています。

(2)We discussed the matter yesterday.

もちろん、現在正答とされている(2)は問題ありませんが、(1)が誤りとなる文法の正誤問題は出題するべきなのか、検討する余地があるでしょう。言語は生き物なので。

夏休み、もうすぐ夏期講習も終わり。ラストスパートですが、部活は続くのです。。。

run into=come acrossには無理がある

2016-06-20 21:13:00 | 日記
単語や熟語は、なんでもかんでもイコールで結んで覚えていても、なかなか実際に使えるようにはならないので、どのようなニュアンスの違いがあるのかを簡単な例文とともに頭に入れておくことは非常に有益です。もちろん意味のほぼ同じものをイコールで結んで覚えることは記憶する上で有効であることは否定できないと思います。ただ、ニュアンスがかなり異なるものは、使うことを前提にするならば、その違いに焦点を当てることで理解を深めることが大事です。

ニュアンスを無視してイコールで覚えるように多くの学習参考書で書いてあるのがcome acrossとrun intoでしょう。どちらも「偶然会う」と覚えている人は多いと思います。しかし、実際にこれらの意味を詳しく見てみると、かなりの違いがあることがわかると思います。質の高い単語帳ではこの2つがイコールになっていないものも出てきていますが、そのような教材はまだ少数派といってよいと思います。

では実際にどのような違いがあるか、見ていきましょう。まず下の2つの例では、どちらかが不自然です。どちらでしょうか。

(1)I came across Mike, but he didn't notice me.

(2) I ran into Mike, but he didn't notice me.

この中で不自然なのは、(2)です。なぜならcome acrossが「偶然見つける」という意味であるのに対して、run intoが「ばったり出会う」という意味だからです。

come acrossはacrossの意味が生きており、目の前を人や物が横切るニュアンスがあります。よって、人や物にかかわらず、偶然見つけた場合には幅広く用いられます。

(3)I came across an interesting article.(偶然おもしろい記事を見つけたよ。)

首を動かしてたら、偶然ある記事が目の前を横切るようなニュアンスを感じ取れたでしょうか。

次にrun intoは、intoのイメージが生きており、正面から人に「ばったり会う」という感じの意味です。よって、相手が自分に気づかないわけはなく、少なくとも何かしら(挨拶などの)話をした、という感じを暗示させます。ただし、物を目的語にとると全く異なる意味になるので注意が必要です。

(4)I ran into the wall.(僕は壁に突っ込んだ。)

つまり、何かに衝突する、という意味になります。

このように、多くの単語や熟語は、イコールで結んでいても、お互いに少しずつ使われる文脈に違いがあることが多いので注意が必要です。もちろん、まずは使って覚える、ということが一番大切。間違って恥をかいて覚えたことや、使ってみてうまく通じた表現はなかなか忘れません。

意外と簡単で難しいrecommendの使い方

2016-05-22 20:40:00 | 日記
recommendを正確に使うのは、意外と難しいと思います。使う場面がわりと多いだけに、注意して語法を観察することが大事だと思います。高校では、recommendの後には「to+人」をとる、という正誤問題で大学入試に出たりするので、問題集などを見てもやたらとそこを強調して説明されています。しかし、実用的に話をするならば、それほどこの「to+人」にこだわる必要はないことは強調しておきたいと思います。

まず次の例を見てみましょう。

(1)He recommended going to this restaurant to me.

これは全く問題ない文ですが、会話の場面であれば話し相手が誰かにかかわらず、少し不自然です。それには2つの理由があります。まず1つめは、先ほど問題にした「to+人」についてです。多くの場合、これは会話の流れから明らかなので、わざわざ述べる必要はありません。もう1つは、これは不自然とまではいきませんが、「going to」です。レストランに「行く」とか「料理を食べる」のは当たり前なので、これもわざわざ言う必要はなく、つまるところ次のようにシンプルに表現することができます。

(2)He recommended this restaurant.

もちろん次の(3)ように表現することもできますが、これも先ほど述べた理由と同じ理由で、かしこまった感じに聞こえます。

(3)He recommended I go to this restaurant.

ちなみにrecommendの後に名詞節をとるなら、動詞は原形にするのが一般的ですが、動名詞よりもかしこまった感じに聞こえます。recommendの後には(1)から(3)の例のように、名詞、動名詞、あるいは名詞節のいずれかがきます。ここでまず考えるべきは、シンプルに名詞で表現できないかどうか、ということです。生徒にはこの発想がかなり欠けているような気がするので。

では、レストランで店員さんに何を食べるのがお勧めかを尋ねるには次のどれを用いるのが一般的でしょうか。

(4)What do you recommend?
(5)What do you recommend eating?
(6)What do you recommend to me?
(7)What do you recommend I eat?

答えはもちろん(4)です。文脈でわかるような無駄な部分を省いてシンプルに考えるようにしたいですね。もちろん省いてしまうと意味が伝わりにくい場合には、しっかりと述べてやるべきですが、会話ではだいたい流れでわかることがほとんどだということは知っておくべきでしょう。

現在完了進行形について、蛇足ながら

2016-02-11 20:59:00 | 日記
以前の現在完了進行形に関する記述の補足です。生徒に指導するかどうかは別にして、教員ならば理解しておきたいこと、という視点で読んでいただければと思います。ちなみに話が分かりにくくなるので、動作動詞に限定して話を進めていきます。

前回、現在完了進行形は現在完了と比べて「継続」の意味が強調される、と述べました。しかし問題は「現在完了進行形は常に継続の意味を表すのか」です。これに対する答えは「ノー」、つまり「現在完了進行形は必ず継続の意味を表す、というわけではない」ということです。つまり、すでに完了していることに対しても現在完了進行形は使われるのです。ミントン(1999;60)による以下の例で比較してみましょう。

(1)I've eaten the chocolates you gave me.
(2)I've been eating the chocolates you gave me.

(1)については「チョコレートを食べてしまった(よってチョコレートは残っていない)」という解釈が一般的ですが、(2)に関しては、実はチョコレートがまだ残っているかどうか、つまり継続なのか完了なのかはあいまいで、文脈に依存します。しかしミントンが指摘しているように、この2つの文の違いでもっと重要なのは、現在完了は行為の結果に焦点が当たっており、現在完了進行形は行為自体に焦点が当たっている、ということです。よってこの2つは、厳密にいえば使われる場面が異なります。次のミントンが挙げた例を見てみましょう。

あなたはついさっきまで車の洗車をしていました。あなたの両手は汚れ、シャツはビシャビシャ、そして髪の毛にはワックスがべっとりついています。そこで友人に遭遇します。あなたは友人にさっきまで洗車をしていた状況を説明します。この場合、下のどちらを用いるでしょうか。

(3)I've cleaned the car.
(4)I've been cleaning the car.

答えは(4)の現在完了進行形です。この場合、話の焦点は「行為自体」(つまり何をやっている、またはいたのか)にあるからです。今回の場合、その結果(洗車が終わっている)ことはさして重要ではありませんので(3)では少し不自然です。では次の場面ではどうでしょうか。

あなたは学校から帰るとすぐに母親に何も告げずにサッカーをしに公園へ出かけました。そして夜遅くにやっと帰ってきました。母親の「どこに行ってたの?心配してたのよ!」という言葉にあなたは下のどちらで答えるでしょうか。(田中(2015;190)をもとに作成)

(5)Sorry. I've played soccer in the park.
(6)Sorry. I've been playing soccer in the park.


答えは(6)です。この場合も、サッカーが終了したかどうかではなく、サッカーをやっていたという行為自体が問題になっているからです。

最後に、次の場面はどうでしょうか。一晩中雪が降り続いていたので、朝窓を開けてみると、すでに止んではいるもののたくさんの雪が積もっていました。あなたはこの状況をどう表現しますか。答えはもちろん、下の(7)でしょう。(田中(2015;190)より)

(7)It's been snowing all night.


このように、現在完了進行形は継続中の場合にも、完了している場合にも使えますが、現在完了と比較してみると行為自体に焦点が当たっている、という点で異なります。まぁ生徒はあまり神経質になる必要はありませんが、上級者ならば知っておきたいところです。それにしても、本当に毎日雪が降っております。春が恋しい。。。


【参考文献】
田中茂範.(2015).『表現英文法(増補改訂版)』.コスモピア.
ミントン.T.D.(1999).『ここがおかしい日本人の英文法』.研究社.