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大切な人を働きすぎから守るための法律をつくるために署名を呼び掛けています。

【事例紹介】1992年 下田市観光課係長の過労自殺事件を紹介します。

2012-02-07 22:50:15 | 事例紹介
 当事者問題から社会問題へ

 1992年6月23日、静岡県下田市の観光課係長をしていた河本繁雄(参考文献中の仮名)さんが自宅裏で首を吊って亡くなりました。

 同年3月23日~6月7日までの77日間、河本さんが休暇を取得したのはわずか2日のみであり、その間の拘束労働時間は880時間、日平均12時間弱に及んでいました。深夜1時、早朝4時にまで勤務した日も存在していました。

 それほどまでの長時間労働の背景には、仕事量の増加と人手の少なさがありました。

 下田市では5月16日~18日に、市職員の3分の1が投入される年中行事「黒船祭」が行われます。観光課の職員はそのため例年、4・5月には月100時間を超える残業を強いられていました。観光課は「残業課」「残酷課」と呼ばれていたそうです。中でも、観光課係長であった河本さんには、準備期限と材料費や人件費の予算枠を守らねばならない黒船祭の準備という心労絶え間ない司令塔としての役割を担わされていました。それだけでなく、92年の6月2日~7日に日本で始めての国際企画「レスキュー92世界大会」が下田市の共催により当地で開かれることになり、91年末に河本さんがその大会実行副委員長に選任されてもいたのです。

 それ以来、21カ国から選手1000人、国内から選手・役員500人の参加が予定されるこの催しのため、河本さんは通訳手記、宿泊の手配、中央諸官庁、海上保安庁、県警などへの協力要請、マスコミ対策などの大会の企画と運営に多大な労苦を強いられました。さらに、この大会の準備担当はほかに観光課スタッフが1名いるだけと、極めて重い負担がかかっていました。

 以上の二大事業以外にも87年度に始まった観光施設整備に関する仕事も引き続き担当していました。加えて、人事異動によって観光課で一緒に仕事をしてきた課長とベテラン主査が異動となり、報告書作成や懸案事項の相談など経験を要する業務が河本さん1人に集中するようにもなっていました。

 こうして、河本さんは次第に不健康の度合いを深めていきました。92年6月には土日なしに残業が続いて疲労困憊し、自信もなくして「仕事に行くのが怖い」「仕事を辞めたい」と妻、真弓さん(参考文献中の仮名)に口走るようになっていたそうです。亡くなる直前の20日と22日には河本さんは、真弓さんがすすめていた心療内科の受診をせずに、点滴を繰り返しながら半日勤務をしていました。そして23日、出勤はしたもののやはり気分が悪くなり点滴をして、真弓さんに早く帰ると連絡をしました。真弓さんは「明日こそは」と心療内科の予約をとり、急いで自宅へと駆けつけたところ、自宅で首を吊って亡くなった河本さんを発見しました。

 河本さんの死後、真弓さんはひどく打ちのめされ、「なぜ夫は亡くなったのか」「結局私が助けてあげられなかったからなのではないか」という疑問、自責の念に駆られました。心のバランスを崩し、五感や人を認知する力さえも失うような状態になっていたそうです。とても、役所に対してアクションを起こせるような状況ではありませんでした。

 ためらう真弓さんの背中を押したのは、なによりも下田市職員組合の支援でした。組合は長時間労働の実態や担当業務の過密性・困難性を明らかにした「調査報告書」を作成するなどし、真弓さんは河本さんが亡くなってから4年後、公務災害を申請するに至りました。

 地方公務員災害補償基金(地公災基金)静岡県支部長は公務外と認定しましたが、真弓さんや組合などの調査により、地公災基金静岡県支部審査会は98年2月19日に公務災害であると認めました(公務災害の認定手順については教師の過労死事件参照)。

 結果、下田市観光課の人員体制は見直され、人員の補充が行われるようになったそうです。

 行政改革によって不断に公務員減らしが進む一方、「地域おこし」のような様々なプロジェクトの企画に誘われる地方都市においては、河本さんのような事例は決して珍しいことではないはずです。

 過労死は、1人の命を奪うだけでなく、その周囲の人の人生をも大きく狂わせてしまうものです。本事例では組合の支援により、遺族の方が役所に対しアクションを起こすことができるようになりました。しかし、支援の手が差し伸べられることなく、遺族自身が自分を責め続けてしまうという場合がほとんどです。これは公務員であろうと民間であろうと同様の事態です。これは、過労死という問題があくまで当事者間の問題としてのみ捉えられ、国の施策上の問題は無関係であるとされているということに原因があるのではないでしょうか。


参考文献:熊沢誠『働きすぎに斃れて―過労死・過労自殺の語る労働史』岩波書店 2010
文責:京都大学・法学部・2回





***「過労死防止基本法」制定実行委員会が求めていること***********************

  「過労死」が国際語「karoshi]となってから20年以上が過ぎました。
  しかし、過労死はなくなるどころか、過労死・過労自殺(自死)寸前となりながらも
  働き続けざるを得ない人々が大勢います。

  厳しい企業間競争と世界的な不景気の中、「過労死・過労自殺」をなくすためには、
  個人や家族、個別企業の努力では限界があります。
  そこで、私たちは、下記のような内容の過労死をなくすための法律(過労死防止基本法)の
  制定を求める運動に取り組むことにしました。

  1 過労死はあってはならないことを、国が宣言すること
  2 過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること
  3 国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと

署名へのご協力のお願い
私たちは「過労死防止基本法」の法制化を目指して、「100万人署名」に取り組んでいます。
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