過労死防止基本法制定を求める署名にご協力ください!

大切な人を働きすぎから守るための法律をつくるために署名を呼び掛けています。

これまで紹介してきた過労死事例を振り返ってみたいと思います。

2012-02-28 19:01:29 | 事例紹介
 これまで、10記事・11件の過労死・過労自殺の事例をご紹介してきました。今回は、これらの過労死・過労自殺事件で亡くなられた方の雇用形態と職種に注目してまとめてみたいと思います。

 これまで紹介した事件は以下のように分類することができると思います。

公務員:看護師、教師、市職員

民間企業正社員:管理職、「店長候補」採用、営業

民間企業非正規社員:派遣

 まず、これらに共通するのは長時間労働です。厚生労働省の労災認定の基準である過労死ライン(月80時間以上の残業)をはるかに超えるような労働時間が、多くの職種に広がっていることが見て取れます。これについては、現在働いている人の4分の一、500万人が過労死ライン以上の時間外労働をしているという調査結果も出ています。

 (調査結果についてはこちらを参照しています。 “ストップ!過労死”実行委員会 2007年就業構造基本調査

 併せて、それぞれの職種に特殊な労働条件についても考えなければなりません。

 国立循環器病センターの看護師をしていた村上優子さんの死には、看護師の仕事の過重さを見ることができます。看護師の労働条件は30年以上前からその過重性が叫ばれ、看護師の入れ替わりの激しさや若年化、職場流産など多くの問題を生み出しています。その原因は、深夜勤務を含む交替制や長時間の時間外労働にあります。村上さんの過労死も、そんな医療現場の過重労働からくるものだといえます。

 看護師が過労死するような医療現場で、患者さんの命を預かっていてよいのか?という問題提起は何度もなされています。現在も、医療現場は医師や看護師の責任感や個人の頑張りによってギリギリ維持されている状況です。過労死するほどの長時間労働をさせる職場はおかしいんだ、という社会的合意を作ることで、医療現場の労働条件の改善にもつなげていかなければならないと思います。

 同じことが、教育現場にも言えます。教師が子どもに向けることのできる時間の少なさが問題だとされる一方、教師の過労死・過労自殺も少なくありません。また、民間と比べて、教師の過労死は「過労死」と認定されない場合が多いのが現実です。愛知県の小学校教師、岡林正孝さんの過労死もその一例でした。教師の労働は、法的に残業を規制する労働時間管理がなじまないとされているのです。

 確かに、教師一般は、ましてや意欲的な教師であれば、自覚する責務の領域は極めて広いでしょうし、「公務」として時間外勤務命令が可能な事柄とそうでない事柄との区別は明確ではないでしょう。しかしだからといって、過度に仕事を引き受けたり、長時間仕事をしたりしたことで亡くなってしまっても「自分が進んでやったのだから仕方が無い」と判断されてしまうのはおかしいのではないでしょうか。仮に過労死された方が「自発的に」仕事を多くしていたとしても、それはその方自身の問題なのではなく、その方がそこまで仕事を負わなくてはならなかったことこそが問題なのではないでしょうか。

 下田市の職員だった河本繁雄さん(仮名)の長時間労働の背景には、仕事量の増加と人手の少なさがありました。行政改革によって不断に公務員減らしが進む一方、「地域おこし」のような様々なプロジェクトの企画に誘われる地方都市においては、河本さんのような事例は決して珍しいことではないはずです。

 過労死は、1人の命を奪うだけでなく、その周囲の人の人生をも大きく狂わせてしまうものです。本事例では下田市職員組合の支援により、遺族の方が役所に対しアクションを起こすことができるようになりました。しかし、支援の手が差し伸べられることなく、遺族自身が自分を責め続けてしまうという場合がほとんどです。これは公務員であろうと民間であろうと同様の事態と言えます。その原因は、過労死という問題があくまで当事者間の問題としてのみ捉えられ、国の施策上の問題は無関係であるとされているということにあるのではないでしょうか。

 今度は民間の事例をまとめてみましょう。

 中部電力火力発電所の環境設備課主任だった関川洋一さんは、長時間労働と上司からのパワハラでうつ病を発症し、過労自殺されました。この事例にみられるような、罵詈雑言や私生活への介入といった上司のパワハラは、企業体質の古さや上司自身の「品格」の低さを示していることは言うまでもありません。しかしその根底には、企業の命運がかかっている過重なチームノルマをなんとしても達成しようとする意識があります。

 居酒屋チェーン「和民」での過労自殺事件が話題になっていますが、その原因も長時間労働と過重ノルマでした。外食産業での社員募集では店長候補や独立オーナー候補しかないことが多く、「店長候補なんだから」と過労に追い立てられてしまいます。これは決して「和民」だけの問題ではありません。この事件は「和民」という特別ブラックな企業での特殊な出来事というよりは、外食業界全体にわたる過労死と隣り合わせの労務管理が過労死という形で爆発し、表に現れた事件なのだと言えます。

 同じく居酒屋チェーンで、吹上元康さんを過労死させた「日本海庄や」では、巧妙につくられた給料体系が暗黙のノルマとなって長時間労働を生み出していました。最低支給額は月19万4500円とされていましたが、給与体系一覧表の但し書きに「時間外(労働が)80時間に満たない場合、不足分を控除するため、本来の最低支給額は12万3200円」と書かれていたのです。

 大手広告代理店の電通で営業を担当していた大嶋一郎さんが長時間労働で過労自殺に追い込まれてしまった背景は、企業のずさんな労働管理、上司からの日常的なパワハラ、そして仕事における喜びや満足感にありました。やりがいを感じることはすばらしいことではありますが、長時間労働の問題を隠してしまう側面があります。この事件は、就職活動において「勝ち組」と呼ばれるようなエリート社員でさえも、過労死・過労自殺の犠牲者になりうるということを示しています。

 また、この事件では、最高裁において、企業が労働時間を管理することを義務付ける判決が出たことも見逃せないでしょう。企業には、働き手の労働時間や健康状態をしっかりと管理し、しかるべき調整を行わねばならないことが示されたのです。企業に過労死を防止する義務があることが明示されたといえますが、まだこの動きを社会全体に広めていくことができていません。

 一般に、過労死は正社員の働きすぎに多くみられます。しかし、非正規労働者の労働条件もひどいもので、ニコンで実質的には偽装請負の形で派遣社員として働いていた上段勇士さんが過労自殺されています。正社員と同等の仕事内容でありながら、ニコンの請負・派遣社員削減の方針のなかでリストラの不安にさらされて休暇を取ることもむずかしい上段さんの疲労は相当なものでした。

 本事件では地裁、高裁ともに、ニコンおよびアテスト(旧称ネクスター)への損害賠償請求が認められました。この判決は、派遣先と派遣元の損害賠償責任をはじめて認定した画期的な判決です。正社員と変わらぬ重い仕事責任を課しながら、休暇取得などがよりむずかしい非正規労働者を使い捨てた責任を、派遣会社だけでなくニコンのような派遣先の大企業にも課したのです。

 企業が社員に過重なノルマを課すことを制限し、過労死するほどの長時間労働をなくすためには、過労死は社会の問題であると宣言し、国・企業の責任を明確にする「過労死防止基本法」の制定が必要であると考えます。そして、この法律の制定をきっかけに、それぞれの職種で人が死なずに働くことのできる環境を作っていかなければなりません。過労死防止基本法は、過労死をなくすためのはじめの一歩です。




***「過労死防止基本法」制定実行委員会が求めていること***********************

  「過労死」が国際語「karoshi]となってから20年以上が過ぎました。
  しかし、過労死はなくなるどころか、過労死・過労自殺(自死)寸前となりながらも
  働き続けざるを得ない人々が大勢います。

  厳しい企業間競争と世界的な不景気の中、「過労死・過労自殺」をなくすためには、
  個人や家族、個別企業の努力では限界があります。
  そこで、私たちは、下記のような内容の過労死をなくすための法律(過労死防止基本法)の
  制定を求める運動に取り組むことにしました。

  1 過労死はあってはならないことを、国が宣言すること
  2 過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること
  3 国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと

署名へのご協力のお願い
私たちは「過労死防止基本法」の法制化を目指して、「100万人署名」に取り組んでいます。
署名用紙≫(ココをクリックお願いします)をダウンロードしていただき、必要事項をご記入いただいた上で、東京事務所もしくは大阪事務所まで郵送をお願いしたいと思います。

まずは過労死のことや過労死防止基本法を多くの人に知っていただきたいので、ツイッターでつぶやくなどして広めてもらえると助かります。記事の一番下についているボタンからも気軽にツイートできますので、ぜひともご協力お願い致します!
 

連絡先】 ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会準備会
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1 コメント

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農協もたしか (変える)
2012-07-01 20:31:02
農協でも過労死で人が死んでる。人が死んでいるってどんな組織何ですか。

農協っそこそこ大きい組織ですよね?

そんな組織でさえ、サービス残業あるなんて。

ネットで農協のサービス残業を検索すると今でも改善されていないみたいですな。農協は人が死んだということの重さがわかっていないみたいですね。
そもそもこれだけネットで叩かれるのは問題だと思います。
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