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過労死の労災申請における認定基準と手続きの流れを紹介します。

2012-02-11 15:52:07 | その他
 労災申請における過労死基準と手続き

 これまで過労死事例をいくつかご紹介しました。今回は、そこで出てくる過労死に関する労災申請について詳しく紹介したいと思います。

 まず、過労死の定義について確認しましょう。厚生労働省による過労死・過労自死の定義では、

過労死・・・「日常業務に比較してとくに過重な業務に就労し」「明らかな過重負荷を発症前に受けたこと」に
       よる脳・心臓疾患のもたらす死亡 例)脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、心不全など
過労自死・・・「客観的に精神障害を発症させるおそれのある業務によるつよい心理的負荷」に起因するつよい
        ストレスやうつ病などがもたらす自殺

とされています。労災として認定されるには業務起因性が証明されなくてはならないことが分かります。

 厚生労働省が出している現在の「脳・心疾患の労災認定基準」は、

1. 時間外労働が、発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える、または発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって月あたりおおむね80時間を超えると認められる場合は、業務との関連性が強いと判断する
2. 発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、時間外労働が月あたりおおむね45時間を超えない場合は業務と発症の関連性が弱く、45時間を超えて長くなるほど両者の関連性が徐々に強まると判断する

となっており、発症前6ヵ月にさかのぼって蓄積疲労が評価されます。過労死ラインとして週60時間が言われますが、週50時間を超えたあたりからでも過労死が起こりえることが基準に書き込まれています。昼夜勤の入れ替わりが激しく、生体リズムが著しく乱されるような働き方の場合だと過労死ラインの週60時間に満たなくても過労死が起きてしまうことがあります。

 一方、過労自殺の認定要件は、

1. 「判断指針」で対象とされる精神障害を発症していること
2. 「判断指針」で対象とされる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれがある業務による強い心理的負荷が認められること
3. 業務以外の心理的負荷および個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと

となっています。「判断指針」とありますが、ほとんど全ての精神障害が対象とされています。心理的負荷の評価については、こちらに評価表があります。職場における心理的負荷と個体側要因の二つを別々に評価するためのものです。以前こちらの記事で紹介したように、長時間労働がもたらす心理的負荷も具体的な時間をもって評価されるようになっています。こうした基準を知っておくことはとても重要です。なぜなら、身の回りで働いている人が過労死予備軍かもしれないことを認識することができるからです。なによりもまず、過労死を未然に防ぐことが大切なのです。

 さて、実際に過労死に関する労災申請・行政訴訟をするときの流れはどうなっているのか見てみましょう。

民間の場合だと、

1. 所轄の労基署への労災認定=労災補償請求の申請(給付金の種類によって2~5年の請求期限あり)
⇒業務外認定・不支給処分のとき、60日以内に都道府県労働者災害補償保険審査官に審査請求
⇒審査請求が棄却されたとき、60日以内に労働保険審査会に再審査請求
2. (再審査請求が棄却されたとき、または3ヵ月経過しても未決定のとき)
⇒地方裁判所に労基署の不認定・不支給処分の取り消し請求する行政訴訟の訴え
⇒一審判決に不服のとき、14日以内に高等裁判所に控訴
⇒二審判決に不服のとき、14日以内に最高裁判所に上告
3. 以上とは別に、地方裁判所に企業の責任を問う民事訴訟=損害賠償請求訴訟
(控訴、上告は行政訴訟のプロセスと同じ)

 一方、公務員の場合だと、
1. 地方公務員災害補償基金(以下、地公災基金)県支部長に労災を請求
2. (公務外決定・災害補償不支給決定のとき、60日の間に) 地公災基金支部審査会に審査請求
3. (審査請求棄却のとき、30日の間に) 地公災基金審査会に再審査請求
4. (審査請求3ヶ月後に)「公務外」決定の取消を請求する行政訴訟

となっています。労災申請をしてから認定がおりるまでは平均6ヵ月だと言われています。早い場合で3ヵ月、長くかかる場合なら1年以上とまちまちです。裁判に至るのはそこで労災認定されなかった場合になります。まずは国に労災認定されてから企業の責任を問う民事訴訟を行うのが一般的です。裁判で主に争点になるのは、

蓄積疲労の評価(死亡に寄与した過労はどこまで遡って考えるか)
実質労働時間の評価(どこからが業務上でどこからが業務外か)
業務起因性の評価(個人要因に帰着するか否か)
過労自発性の評価(強制的ノルマに追われたか自発的時間外労働か)

の4つです。実質労働時間を示すものや契約内容を示すものが証拠として重要になります。タイムカードだけでなく、PITAPAなどの電子データなど、通勤から帰宅までの時間を示すものがあれば証拠になります。

 残念ながら、こうした証拠を集めるのは遺族の方の仕事になっているのが現状です。上司や同僚から証言を得るのも難しく、タイムカードの記録提出にしても会社側からの協力が得られない場合があります。家族を亡くすという悲しみに加えて、過労死するほどに追い込まれたのは自分の責任もあるのではないかという苦しみの中、多大な労苦を伴う労災申請をすることは並大抵のことではありません。親戚などの周囲の反対や、「金がほしいだけだろう」といういわれなき非難を浴びることもあります。そんなとき、過労死を考える家族の会などが強い支えになっています。

 過労死で例えば夫を亡くした場合、悲しみもさることながら、そのままでは経済的にも苦しい状態に陥ってしまいます。いきなりシングルマザーになって、これからどう生計を立てるのかという課題にも直面します。労災申請の前に遺族年金の申請が必要になったりします。過労死のために具体的に出てくる問題については、参考文献として挙げている『過労死の労災申請(改訂増補版)』が詳しいです。

 現在の過労死の認定基準は、遺族の方々が粘り強いたたかいの中で勝ち取ってきたものです。蓄積疲労が評価されるようになったり、具体的な過労死ラインが定められたりしたのも、裁判で争って初めて得られました。それでも過労死は未だなくなっていません。だからこそ積極的に過労死を防止するような法律が必要なのです。過労死防止基本法は、そのスタートラインとなる法律です。過労死があってはならないことを社会全体で認め、責任が誰にあるのかはっきりとさせ、国による調査・研究・対策を求めること。まずはそこから始めたいと思います。


(参考文献)
熊沢誠 『働きすぎに斃れて』 岩波書店 2010
諏訪裕美子・色部祐『過労死の労災申請(改訂増補版)』 自由国民社 2010




***「過労死防止基本法」制定実行委員会が求めていること***********************

  「過労死」が国際語「karoshi]となってから20年以上が過ぎました。
  しかし、過労死はなくなるどころか、過労死・過労自殺(自死)寸前となりながらも
  働き続けざるを得ない人々が大勢います。

  厳しい企業間競争と世界的な不景気の中、「過労死・過労自殺」をなくすためには、
  個人や家族、個別企業の努力では限界があります。
  そこで、私たちは、下記のような内容の過労死をなくすための法律(過労死防止基本法)の
  制定を求める運動に取り組むことにしました。

  1 過労死はあってはならないことを、国が宣言すること
  2 過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること
  3 国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと

署名へのご協力のお願い
私たちは「過労死防止基本法」の法制化を目指して、「100万人署名」に取り組んでいます。
署名用紙≫(ココをクリックお願いします)をダウンロードしていただき、必要事項をご記入いただいた上で、東京事務所もしくは大阪事務所まで郵送をお願いしたいと思います。

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