過労死防止基本法制定を求める署名にご協力ください!

大切な人を働きすぎから守るための法律をつくるために署名を呼び掛けています。

【事例紹介】1991年 電通の過労自殺事件を紹介します。

2012-01-12 18:16:30 | 事例紹介

 事件の経緯

 1991年8月27日、大手広告代理店の電通で働く大嶋一郎さん(24歳)が自宅で首を吊り、帰らぬ人となりました。厳しい入社試験を経てつかんだ電通への就職。そして、入社してからわずか1年5ヶ月での死。なぜ彼は死を選んだのでしょうか。何が彼を死に追いやったのでしょうか。

 大嶋さんは、大学卒業後、厳しい競争を経て90年4月に電通に入社。ラジオ広告の企画と営業の業務に就きました。当時の電通では、残業における「月別上限時間」(60~80時間)が設けられていましたが、それも実際は名ばかりのもので、過度の残業はむしろ恒常的でした。そのような労働環境の中で、大嶋さんの月平均残業時間は、カウントできるだけでも所定労働時間と同じ147時間にも及びました。

 90年11月ごろからは徹夜勤務も次第に増え、帰宅しても2時間後には出勤するということも頻繁にありました。両親が健康を心配して有給休暇を取るように勧めるも、上司に言いにくいなどと言い、拒み続けました。

 大嶋さんが長時間労働に追い込まれてしまった背景には、3つの事柄が考えられます。

 1つ目は、企業によるずさんな労働管理です。上司は大嶋さんの徹夜勤務の増加を受けて、納期や業務量の変更には触れず、「帰宅してきちんと睡眠をとり、それで業務が終わらなければ翌朝早く出勤するように」と「指導」していました。このような労働管理のあり方は、まじめな大嶋さんを過労に追いやる大きな原因になりえたでしょう。

 2つ目は、抑圧的な職場の雰囲気です。大嶋さんは上司から日常的なパワハラを受けていました。このような抑圧的な職場の雰囲気が、有給休暇を取ることができない要因になりました。

 3つ目は、仕事における喜びや満足感です。自分の企画案が成功したときの達成感や仕事を任せてもらえる満足感はあり、意欲的な勤労態度を保っていました。これはすばらしいことではありますが、長時間労働の問題を隠してしまったという側面もあります。

 91年7月まで大嶋さんの部署に人員補充はありませんでした。そればかりかこの月以降、単独で業務を遂行することになり、また新たに3局の営業を担当または補助する責務が加えられ、いっそうの働きすぎを強いられました。

 91年夏には、大嶋さんは疲労困憊し、同僚の見るところ職場でも元気がなく、目の焦点も定まらない状態になっていました。それでも8月1日から23日までほとんど毎日、長時間労働に就き、91年8月27日に自ら命を絶ちました。


 損害賠償提訴の画期的な勝訴

 大嶋さんの死後、父である久光さんは真相究明に乗り出しました。久光さんの度重なる和解打診を電通が無視した後、彼は企業責任を問う民事訴訟、損害賠償請求訴訟を起こしました。裁判において、電通は大嶋さんの自死は業務上のものではなく、まして会社に安全配慮義務違反はないと主張。裁判は最高裁までもつれ込み、原告側の勝訴に終わりました。この最高裁判決は、安全配慮義務が仕事量のしかるべき調整義務を含むということを明確に示す画期的なものとなりました。


 本事件の持つ意味

 入社1年5ヵ月の電通の社員が過労自殺した本事件は、就職活動においていわば「勝ち組」と呼ばれるエリート社員でさえも、過労死・過労自殺の犠牲者になりうるということを示しています。実際、2008年のウェザーニューズでの過労自殺など、このようなケースはあとを絶ちません。

 また、最高裁において、企業が労働時間を管理することを義務付ける判決が出たことも見逃せないでしょう。企業には、働き手の労働時間や健康状態をしっかりと管理し、しかるべき調整を行わねばならないことが示されたのです。この事件がその後の過労死・過労自殺に与えた影響は計り知れません。



 
 今回紹介した事件の裁判により、企業に過労死を防止する義務があることが明確に示されましたが、この動きを社会全体に広めていくことは未だできていません。過労死防止基本法では、国に対して「過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること」を強く求めています。過労死をなくすための責任は、働き手だけでなく国・自治体・事業主、ひいては社会全体にあるということを社会のコンセンサスとし、その責任を追及していくためにも、過労死防止基本法の制定が必要です。


(参考文献) 熊沢誠『働きすぎに斃れて―過労死・過労自殺の語る労働史』岩波書店 2010




***「過労死防止基本法」制定実行委員会が求めていること***********************

  「過労死」が国際語「karoshi]となってから20年以上が過ぎました。
  しかし、過労死はなくなるどころか、過労死・過労自殺(自死)寸前となりながらも
  働き続けざるを得ない人々が大勢います。

  厳しい企業間競争と世界的な不景気の中、「過労死・過労自殺」をなくすためには、
  個人や家族、個別企業の努力では限界があります。
  そこで、私たちは、下記のような内容の過労死をなくすための法律(過労死防止基本法)の
  制定を求める運動に取り組むことにしました。

  1 過労死はあってはならないことを、国が宣言すること
  2 過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること
  3 国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと

署名へのご協力のお願い
私たちは「過労死防止基本法」の法制化を目指して、「100万人署名」に取り組んでいます。
署名用紙≫(ココをクリックお願いします)をダウンロードしていただき、必要事項をご記入いただいた上で、東京事務所もしくは大阪事務所まで郵送をお願いしたいと思います。

まずは過労死のことや過労死防止基本法を多くの人に知っていただきたいので、ツイッターでつぶやくなどして広めてもらえると助かります。記事の一番下についているボタンからも気軽にツイートできますので、ぜひともご協力お願い致します!
 

連絡先】 ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会準備会
HP:http://www.stopkaroshi.net/
twitter:@stopkaroshi ブログの更新のお知らせや過労死についての情報をお届けしています。ぜひフォローしてください!

◆東京事務所(本部)
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3 コメント

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埼玉県警 秩父警察署 山岳救助隊長が自殺 原因は署幹部によるパワハラか? (埼玉県警 秩父警察署 山岳救助隊長が自殺 原因は署幹部によるパワハラか?)
2016-10-14 19:10:17

埼玉県警 秩父警察署 山岳救助隊長が自殺 原因は署幹部によるパワハラか?
署幹部 秩父警察署署長は 斎藤保
http://blog.livedoor.jp/lvdoorsaitama/



<秩父署警部自殺>署幹部との関係で悩みか「無能」「小学生以下だ」
2016年7月25日(月)

 今月10日、自宅で自殺しているのが見つかった秩父署地域課長兼 県警山岳救助隊長の男性警部(52)が残した遺書に、「決裁をあげる都度、指示の内容が違う」「無視されている」などと署幹部との関係についての悩みが書かれていたことが25日までに、親族や関係者への取材で分かった。埼玉新聞の取材に対して親族は「(警部は)警察の仕事にやりがいを持っていた。こんな目に遭うのは自分が最後にしてほしいと思っているはず」「隠さずに真実を明らかにしてほしい」と話している。

 警部は8日朝まで勤務し、9日と自殺した10日は非番だった。県警は11日、警部が自宅で首をつって自殺したことを明らかにした。県警は、署幹部によるパワーハラスメントがあったかも含めて経緯を調査している。署幹部は現在、署に出勤していないという。

 親族によると、遺書はA4判のノート約4ページにわたって、仕事の苦労や「悔いなく後の人生を過ごしてください」などと親族へのメッセージが記されていた。

 遺書は「俺がいかに駄目で使えない人間であるかは、指導記録ノートに記録されています」という言葉で始まり、「書類も直しが多く、3〜4回差し戻されるので決裁は山積みになってしまう」「1カ月前には『そんな先のことは分からない』と言われ、別の日には『1カ月前に調査するものだ』と言って対応してくれない。その時々で方針が変わり、対応に苦慮する」などと書かれていた。

 親族の話では、署幹部が着任した今春以降、警部は週1回程度の当直勤務のほか書類作成のため週1回程度、署に泊まっていた。急きょ泊まった後には「徹夜でやっと仕上げた」と話していた。休日は月に1日程度で、「(署幹部のところに)行くだけで心臓がドキドキしてしまう」などと漏らしていた。署幹部に「無能だな」「小学生以下だ」と言われ、自殺直前にはうなだれ、目はうつろだったという。

 遺書には部下の頑張りや山岳救助隊員の体調を気遣う言葉もあった。警部は「訓練日数の確保は困難であり、厳しい環境下での訓練は事故発生の危険があります。将来を見据えて対応が必要です」と記し、「今回の件を境に、刷新を図る必要があるでしょう」と結んでいた。

 親族は「(警部は)もう戻っては来ないけれど、隠さずにしっかりと真実を明らかにしてほしい」と訴えた。

http://www.saitama-np.co.jp/news/2016/07/26/03.html



<秩父署警部自殺>何をやっても駄目…警部、書類通らず周囲に漏らす
2016年7月25日(月)

 今月10日、自宅で自殺しているのが見つかった埼玉県の秩父署地域課長兼 県警山岳救助隊長の男性警部(52)。「部下の面倒見も良く人望も厚かった」「心優しく、頑強な人だった」―。警部の突然の死に、仕事で付き合いのあった関係者は口をそろえる。

 関係者によると、署幹部が今春に着任後、それまで決裁が下りていた書類が通らず、警部は繰り返しやり直しを命じられていた。ときには、署幹部から「これが警部の作る書類か」などと言われることもあった。警部は「何をやっても駄目と言われてしまう」「俺は何をやっていいのか分からなくなる」と周囲に漏らしていたという。

 自殺直前には、7月19、20日に行われた秩父川瀬祭の警備体制などの企画書の決裁が例年通りの時期に下りず、頭を抱えていた。決裁は、警部が10日に自殺した後に下りたという。関係者は「川瀬祭の企画書のやりとりが最終的な自殺の引き金になってしまったのでは」と話す。

 別の関係者は「押しも押されもせぬ山救隊の隊長。最高の技術を持っていたのに、なぜこんな形になったのか。彼の今までの経験を若い人に受け継いでほしかった」と惜しんだ。

http://www.saitama-np.co.jp/news/2016/07/26/04.html



<秩父署警部自殺>秩父署長が復帰未定 県警、警視9人の異動内示
2016年7月28日(木)

 県警は27日、秩父署長の斎藤保警視を警務部付とし、後任にサイバー犯罪対策課長の愛敬進警視を充てるなど、警視9人の人事異動を内示した。発令は8月5日付。

 秩父署では今月10日、地域課長兼山岳救助隊長の男性警部が自宅で自殺しているのが見つかった。親族によると、男性警部の遺書には「無視されている」など、署幹部との関係についての悩みが書かれていたという。県警は署幹部によるパワーハラスメントの有無も含めて調査している。

 県警警務課によると、秩父署の斎藤署長は今月15日から「休養」のため出勤しておらず、復帰時期は未定。臨時の人事異動を内示した理由について、同課は「署長不在により、署の運営に支障を来すため」と説明した。

 秩父署地域課長兼山岳救助隊長には、鴻巣署生活安全課長の坂田浩警部が8月1日付で就任する。

【警視】

 警務部付(秩父署長)斎藤保

▽監察官(刑事部管理官兼生活安全部管理官)木村宏志
▽サイバー犯罪対策課長(幸手署長)大村正幸
▽刑事部管理官兼生活安全部管理官(児玉署副署長)坂本雅彦
▽秩父署長(サイバー犯罪対策課長)愛敬進
▽幸手署長(監察官)三好幸彦
▽自動車警ら隊主席指導官兼副隊長(朝霞署副署長)浅見敏
▽朝霞署副署長(生活経済課環境犯罪対策室長)大塚和人
▽児玉署副署長(自動車警ら隊主席指導官兼副隊長)藤宮秋雄

http://www.saitama-np.co.jp/news/2016/07/28/06.html

埼玉県警 不祥事
https://twitter.com/saitamatwitt
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Unknown (Unknown)
2016-10-26 00:49:25
西脇労働基準監督署のどなたか、キリン堂というドラッグストアに抜き打ちで捜査に来ていただきたく存じます。「臨検」を切に望みます。
社員で13〜22時の勤務をすることが多いのですが、売り場作成など遅れるとブロック長に責めたてられるので残業しなければならないことが常態化しています。
その残業には手当は一切付きません。サービス残業です。会社は表向き、「夜遅く残って残業してはいけない」とアナウンスして、残業のない労働環境に改善されたように見えますが、実態は何も変わっていません。
残業をするとブロック長から叱られ、かと言って残業せずに売り場作成などが遅れると叱られます。仕事の要領が悪いわけではないのに他店舗でも多くの社員がサービス残業をせざるを得ない状況です。
22時になるとPCに退勤の打刻をした後、アルバイトさんたちを先に帰した後、社員は仕事を後日に残さないように残業をしなければなりません。PCの上では残業をしていないという「記録」がされているため、労基署に駆け込んでも、ブロック長やエリアマネージャーにとっては言い逃れが出来る彼らにとって都合のいい状況なのです。
ブロック長は「残業するな」とは言いますが、それは労基署が来た時のことを見越した「有利な証拠作り」として機能しています。
キリン堂の企業風土が根本的に改善されない限り、店舗で働く従業員の意識が改まらない限り、ブロック長やマネージャーが間違った意識を改めない限り、PCでの勤怠管理や「残業しないように」というアナウンスなど、いくら仕組みを整えたとしても、サービス残業はなくなりません。
毎日出勤するのが怖い。死んで楽になりたい。命を削ってまで、いじめに耐えてまで、やらなければならない仕事ってあるのだろうか?キリン堂には。
誰か助けてほしい。
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過労死 (渡辺 文吾)
2016-10-28 04:49:42
私も、今回の件と同じように、過去に過労で脳出血を起こし、本来ならば、死亡して世間には存在していない人間ですが。いまもこれ、繰り返されているようですねえ・・・。会社は違いますけど前と一緒!ちなみに、私は、明らかに過労が原因ですが、母親は国への認定断念したようです。

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