日本ヒューレット・パッカード(HP)の元社員が不当解雇の裁判を起こしていた件で1月26日、東京高裁で逆転勝訴の判決が出た。この解雇は、元社員が職場内で嫌がらせに遭っていると訴え、会社側に実態調査を依頼。その間、社員は有給休暇を使い切り、さらにその後40日間、会社を休んだ。日本HP側は、そのことを理由に論旨解雇(退職金は受け取ることができる)としたが、控訴審では、無断欠勤には当たらないとの判決が下り、解雇無効とした。日本の判例法における正社員の解雇が、いかに特別なものであるか、経営側から見ればどれほどハードルの高いものか、を物語る判決だ。その詳細を報告する。(二審判決全文はPDFダウンロード可)
---------------------------------------------------------------------
【Digest】
◇職場の嫌がらせ
◇HPの社風を信じて調査依頼
◇欠勤40日で論旨退職処分
◇「え? なぜ解雇なの?」
◇逆転勝訴判決
---------------------------------------------------------------------
http://www.mynewsjapan.com/reports/1363
2011年1月28日付のMyNewsJapanで記事
「日本HP「欠勤40日で諭旨解雇」裁判、二審で元社員が逆転勝訴 」
を企画、取材、執筆しました。
ちなみに、「職場いびり―アメリカの現場から」(著者:ノア・ダベンポート、シルース・ディスラー・シュワルツ、ゲイル・パーセル・エリオット/緑風出版刊)によると、職場のいやがらせは、欧米では「MOBBING」と呼ばれる。MOBとは、「群をなす、襲う、騒ぐ」の意味。
モビングにはいくつかの種類があり、その一つが「意思疎通を否定する」。これは他人を侮辱し見下すための手段で、例えば、こんな行為かあるという。
・あなたの面前で軽蔑の笑いをする。
・あなたに関するいやみな冗談を言う。
・噂をたてたり偏見を作り出す。
・あなたと目を合わせようとしない。
・あなたは無視される。
・陰口をたたく。
また、モビングには進行過程があるという。
・第一段階は、意見の衝突、対立。
・第二段階は、攻撃的な行動、心理的な攻撃。潜在的職場いびりの段階。
・第三段階は、管理者層が巻き込まれる。管理者は状況判断を誤って、支援の手を差し伸べず、孤立化や追い出し工作を始める。
・第四段階は、被害者は、いまや、気難しい人、精神疾患にかかっているとの烙印を押されてしまい、危険な段階。
・第五段階は、解雇。
また、モビングの被害の度合いは、三つに分けられるという。
・被害度数一度は、なんとかモビングに抵抗して早期に逃れようとし、同じ職場あるいはどこか別の職場で十分に復帰を果たす。
・被害度数二度は、モビングに対して抵抗も逃れることもできず、一時的、あるいは長期の精神障害を被り、職場復帰が困難になる。
・被害度数三度は、職場復帰を果たせない。身体的精神的障害が著しく、極めて専門的な治療計画を適用しない限り回復しそうにない。
こうしたケースはこの国でも山ほどありそうだ。