「飼い主をしつる教室がなきゃダメだっつーの。もう、なっちゃいない、日本人は。動物の飼い方が、なっちゃいない」という「多摩川猫物語」(角川書店刊)の著者で、多摩川の猫たちの治療や給餌を続けるフリーランスのカメラマン小西修氏は、引き続き、こう語った。
「まあ、僕は多摩川しか知りませんけど、もう、猫の目の前で、犬をりしかけたり、その犬によって違うけれども、大型犬なんかは、猫を噛み付いて、引きちぎって殺す犬もいれば、前足で踏みつける犬もいるんですよ。そうすると、猫は骨折したり、大きなケガはその瞬間はなくとも、猫科の動物というのは、外傷性ショック死というか、びっくりして死んじゃう、というのがよくあるんですよ。そういう現場を見ているからこそ、ね」
「あとは、やっぱり飼い主の稚拙なところ、幼稚なところ。必要以上に猫を擬人化したりね。それはマスコミの影響もあるんですよ。
要するに、わかりやすくいえば、ぬいぐるみのような扱い方をするわけです。だから、今、テレビ、あるいは出版物、写真集でも、カワイイ、キレイ、カワイイ、カワイイ、キャーカワイイ、という番組しかつくらないじゃないですか。
ぬいぐるみのような感覚なものだから、たとえば自分の子供がペットショップで欲しがったら、親ばかというのがいますよね、親はバカだから、お金で買えるから買うんです。欧米だったら、お金出しただけでは買えないですよ。ペットショップじゃないんだから。商品じゃないんだから。商品ということは、このお皿と一緒なんです。だから、お金で買えるんです。
欧米の犬猫は、このお皿と違うから、命だから、お金出しただけじゃ買えないです。そこが違うんです。商品だから、売れると思うと、同じものを増やすんですよ。あまりゃ殺せばいいんだから。殺せますからね。だから、痛くもかゆくもないんです。お金だから、商品だから。向こうの国だったら、数つくらないです。数つくらないから、お金出してほしい、といっても、今年はないから来年きてくれ、って話になるんです。そうすると、犬猫、手に入りにくい。だから、大事にするんです。
いま、マスコミとか出版物、猫の写真集、みてごらんなさいよ。ばかみたいに、カワイイ、カワイイでお金出して買った挙句、やれ、引っ越しだの、病気だの、歳とっただの、かみつくだの、鳴き声がうるさいだの、トイレのしつけがわるいだの、でポンポンポンポン捨てちゃう。
その捨てられた猫が、今度は、追い打ちをかけるように、刃物で切られるは、石は投げられるは、もう滅茶苦茶です。
日本人、国民は、ペットとか、命をないがしろにするような、許せないことやっているわけですよね。日本と言う国は、情けない国だから、動物に関しては可愛くないとダメなんですよ。売れないと思うから。くさいものにはふたをして、ああいう可愛いような出版物でなきゃ売れないから。だから、これはいかん、もう許せん、ということで、とにかく、少しでも多摩川の現実を知ってもらいたい」
(続く)