ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

※ブログ下記移転しました(2015年7月以降)
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環境汚染の微細プラスチック「マイクロビーズ」の実態

2015年07月11日 | Weblog

 平成二十七年五月十七日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「潜入! ウワサの現場」で記事
 
「環境汚染の微細プラスチック「マイクロビーズ」の実態」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 「プラスチック・マイクロビーズ」(以下、「マイクロビーズ」と表記)という言葉をご存じだろうか?これは、1mm以下の「微細なプラスチック粒子」で、「洗顔剤」「歯磨き粉」「ボディソープ」の「スクラブ」(肌表面の古くなった角質を除去する)などに使われる。マイクロビーズには、古い皮膚や汚れをこすり落とす効果がある。

 これが消費者のバスルームや洗面所から下水処理施設のフィルターを通過して川や湖、海に、毎年何百万トンも流れ込んでいる。しかも、マイクロビーズは殺虫剤など化学物質がつきやすく、それを食べた魚が体内に有害物質を蓄積する恐れがあり、食物連鎖で環境全体を汚染し、人間にも深刻な影響を与えるリスクがある。そのため、欧米では昨年来、規制が進んでいる。

 だが、日本では一向にそのことが問題視されていない。日本でも状況は同じはずなのに…。

 そこで筆者は昨夏、実態調査を敢行した。調査方法は、まず、売れている商品をリサーチするため、ネットで賑わっている「@cosmeランキング-コスメ・化粧品・美容の最新ランキング-」のなかの、「洗顔料」「歯磨き粉」「ボディソープ」のランキング上位20位をピックアップ。

 ただ、「洗顔料」については、同サイトは女性向け製品が多かったため、「カスタマー・コミュニケーションズ」というサイトの直近の「『洗顔料』の購入個数ランキング」の上位20位を加えた。それでもまだ男性向けが少ないように見受けられたので、「Yahoo!ショッピング」の「男性用洗顔料人気売れ筋商品ウイークリーランキング」の上位10位も入れた。

 「歯磨き粉」については、上記サイトで性別による差異は見当たらなかったが、より偏りをなくため、「カスタマー・コミュニケーションズ」による直近の「歯磨き 購入個数順ランキング」を加えた。

 「ボディソープ」については、やはり「@cosmeランキング」が女性向け中心のため、「アマゾン」の「ボディソープのベストセラー」上位20位を追加した。

 これで合わせて、130商品(重複含む)。これらの各メーカーに対し、「上記製品にマイクロビーズが含まれるかどうか」、「含まれていれば、表示には何と記載しているのか」を聞いた。さらに、より広く実態を知るため、上記各メーカーに対し、「こちらで指摘した製品以外にも、御社でマイクロビーズを使っているものがあれば、何という製品で、何と表記されているのか」を聞いた。

 そして最後に、「欧米で規制の流れができていることに対し、どういう見解なのか」を質問した。

 調査結果をみてみよう。まず、ランクイン130製品のうち、メーカーが「マイクロビーズを使っている」と回答した製品は、以下の通り。

 「歯磨き粉」の「アクアフレッシュ エクストリームクリーン ホワイトニング+」(グラクソ・スミスクライン製)。

 「洗顔料」の「アラミスラボシリーズ マルチアクションフェースウオッシュ」(ELGC製)。

「洗顔料」の「ギャツビー薬用フェイシャルウォッシュ パーフェクトスクラブ」(マンダム製)。

 グラクソ・スミスクラインのお客様センターによると、成分表示の「含水ケイ酸(美白ビーズ)」がマイクロビーズに当たるとのことで、同社の他の製品にはマイクロビーズは使ってないとのこと。欧米で規制していることについては、「海外の製品は、それぞれの規制にのっとり発売しています。日本には日本の規制がありますので、それを遵守していきます」と、暗にこれからも販売し続ける意志を示した。

 ELGC社は、「洗顔製品にはやさしく洗浄効果を高めるために小さなプラスチックビーズが使用されております。弊社では現在、プラスチックビーズを取り除くよう進行中でございます」というが、いつ取り除くのか具体的な期日は明示しなかった。

 マンダムは、上記製品にマイクロビーズが入っていることは認めたものの、「その他の質問については、回答を差し控えさせて頂きます」と言い、他製品の使用状況や、成分表示にマイクロビーズは何と書いてあるのか、今後どうするのか、といった説明は一切拒否した。

 では他のピックアップ製品には入っていないのかというと、全然そんなことはない。「花王」を筆頭に、全26社41製品は、筆者の質問に対し、無回答だったのだ。

 また、ランク外製品のマイクロビーズの使用実態についての調査では、以下の製品にマイクロビーズが入っていることが明らかになった。

 「ユニリーバ・ジャパン」の男性向け洗顔料「ダヴ ディープクリーン洗顔」。

「ザ・ボディショップ」の洗顔料「フェイシャル クレンジング ポリッシュC」「スクィーキークリーン スクラブ TT」。

 「ジャパンゲートウェイ」の洗顔料「リガオス フェイスウォッシュ スクラブ130g」。った。

 「ヤクルト ビューティエンス」の「グランティアEX ホワイトアップ ベース UV」。

 「ロゼット」の「ハローキティクレンジングウォッシュ」。

 では他のメーカーの製品には入っていないのかというと、全然そうではない。

 例えば、「資生堂」は、「(ランクインした)ご指摘の製品にはマイクロビーズは入っていませんが、その他の製品には普通に使用しています。(表示成分名称「ポリエチレン末」)。製品名については回答差し控えさせて下さい」という。そこで調べたところ、資生堂のハンドクリーム「薬用モアディープ」と「ベビーパウダー プレスド」にポリエチレン末が含まれていることを突き止めた。ほかにも色々な製品で使っているに違いない。

 また、「サンスター」は、「一部の化粧品にはマイクロビーズを配合した製品がございますが、法令に基づいて全成分を表示しております」と言いつつも、成分名とどの製品なのかは答えなかった。

 また、「ロート製薬」は、「ノウハウ上非開示とさせて頂いており、ご理解くださいますようお願い申し上げます」「欧米におけるマイクロビーズの環境への件についてはかねてより聞き及んでおり、今後も官公庁の指導に基づき対応していく所存でございます」というのみ。

 「カネボウ化粧品」は、「今後も国内外の研究機関の科学的な研究データや、欧米の業界団体などの情報を収集しつつ、動向を注視してまいります」というのみ。

 これらのメーカーには、マイクロビーズが含まれるものが大量に販売されているはずなので、注意してほしい。

 このように、開示する企業、しない企業があり、実態は明白ではない。では、マイクロビーズが入っているか表示で確認するにはどうすればよいか――。取材で明らかになったのは、マイクロビーズの表記は一律ではなく、資生堂、マンダムでは「ポリエチレン末」、ユニリーバ・ジャパン、ザ・ボディショップ、ジャパンゲートウェイ、ロゼットでは「ポリエチレン」、花王は「コポリマー」と表記していたと見受けられる。

 つまり、製品の成分表示に「ポリエチレン」「ポリエチレン末」「コポリマー」とあれば、マイクロビーズとみてよい。

 ただし、マイクロビーズのことを、ヤクルト・ビューティエンスは「メタクリル酸メチルクロスポリマー」、グラクソ・スミスクラインは「含水ケイ酸(美白ビーズ)」と表記していたりもする。取材に答えない会社のなかには、もっと他の表示をしている可能性もある。

 そういう場合の見分け方は、表示よりも先に、製品にスクラブや歯磨き粉の「粒々」、つまりスクラブを使っているかをみていく必要がある。もしそれらを使っていればマイクロビーズが入っているとみていい。

 なお、マイクロビーズは環境に悪いだけではなく、目に入ると、眼表面を傷付ける恐れもあるので注意してほしい。

 この国は、異様に企業が擁護されており、製品のリスクについて消費者は「見ざる言わざる聞かざる」の“三猿政策”を強いられているので、アンテナを張り巡らせていく必要がある。(佐々木奎一)

 

 


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1 コメント

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参考資料として紹介させていただきました (Unknown)
2016-01-22 09:50:52
佐々木奎一 様

突然のコメント失礼致します。
グリーンピース・ジャパンの吉野良子ともうします。
以下のブログで佐々木様の記事を参考資料として紹介させていただきました。
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/55348/

何かあれば、ご連絡戴けましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
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