ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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大学3年のインターンと、問われる「新卒一括採用」の意義

2012年11月21日 | Weblog

2012年11月2日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「大学3年のインターンと、問われる『新卒一括採用』の意義」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 けさの日本経済新聞に「働けない若者の危機 戸惑い生むインターン」という記事がある。これは同紙が連載している「シューカツ受難」という企画の2回目の記事である。

 これによると、東京都港区の慶応大学三田キャンパスでは、夏以降、リクルートスーツに身を包んだ学生の姿が目立ち始めたという。多くは3年生である。目的は、体験と称して企業で実際に働く「インターン」への参加だ。就職情報のマイナビによると、6年前に4人に1人だったインターン経験者は、今春の卒業生で約半分に増えているという。

 この記事にあるように、本来、大学は学業のために存在するはずなのに、3年時には就職活動をしているのが実態である。

 そもそも、経団連は、大学生の採用について定めた「採用選考に関する企業の倫理憲章」(11年3月15日改定)で、「学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する」として、募集は3年生の12月から、選考は4年生の4月1日から開始する、としている。

 それにもかかわらず、冒頭の3年夏からシューカツしているワケは、同倫理憲章の末尾に「その他」として、こんな一文が紛れ込んでいるためだ。それは「インターンシップは、産学連携による人材育成の観点から、学生の就業体験の機会を提供するために実施するものである」。

 この一文のあと、「その実施にあたっては、採用選考活動(広報活動・選考活動)とは一切関係ないことを明確にして行うこととする」としているが、記事によれば、同倫理憲章に賛同しているのは経団連加盟約1,300社のうち758社(12年7月現在)に過ぎず、その上、憲章に違反しても罰則はないので、実際はルールが「形骸化」しているという。

 こうして大学時代に身につけるはずの学問が、就職活動によって蹂躙されてしまっている。

 ちなみに、「新卒一括採用」は日本独特の風習である。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の国際比較調査によれば、大学生の就職活動の開始時期は、日本は「卒業前」が88%に達する。これに対し、欧州の「卒業前」の比率は、フランス9.9%、イタリア15.6%、スペイン22.6%、オーストリア29.9%、フィンランド41.8%、オランダ42.5%、ドイツ46.7%、イギリス49.2%など軒並み日本より低い。(「日欧の大学と職業―高等教育と職業に関する12カ国比較調査結果―」(01年3月)より)

 なお、厳密には、新卒一括採用しているのは、日本のなかでも、募集の多い大企業だけである。昨日付けの同連載記事によると、「中堅・中小企業に目を向ければ求人はたくさんある。リクルートワークス研究所の調査では従業員1000人未満の企業の場合、来春採用の求人倍率は1.79倍。300人未満では3.27倍だ」という。

 学問そっちのけでシューカツに明け暮れ、大企業の総合職の社員になって、どんな部署に配属されて、どんな仕事に従事するかさえ定かでない会社に入ることを目指すよりも、大学時代にしっかり勉強して、卒業後は、たとえ小さい会社でも、希望する職種に就きキャリアアップしていく道を取った方が、有意義かもしれない。(佐々木奎一)


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