ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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新築マンションが売れる理由

2015年07月23日 | Weblog

 平成二十七年七月二十日付、auの「朝刊ピックアップ」で記事 

  「新築マンションが売れる理由」

   を企画、取材、執筆しました。

  17日付の日本経済新聞朝刊に「戸建て不振が鮮明に、首都圏6月中古住宅、好調マンションと対照的」という記事がある。それによると、首都圏では、中古の戸建物件は木造、敷地面積100~300平方メートルで2900万円前後の値動きがここ一年続いているという。投資用需要の多いマンションは値上がりが続いているのとは対照的である。

 同記事では、「戸建て住宅の購入者は大半が自身が住むことを目的とする。(略)中古戸建ての取引は住宅の実需を映す。国内消費者の住宅取得意欲は高まっていないようだ。東日本不動産流通機構によると中古戸建ての成約件数は2013年10~12月から15年1~3月まで6四半期連続で前年同期を下回っていた。4~6月は前年同期比で11%増加したものの、一般消費者の手が届きやすい3000万円台半ばまでの物件も多い首都圏郊外地域の戸建ての値動きが鈍い。価格も『ほとんど上昇しておらず、一部では値下がりしている地域もある』(野村不動産アーバンネットの神園徹執行役員)」。大和総研の長内智エコノミストは、「実体経済の弱さが戸建て価格の伸び悩みにつながっている」という。

 対照的に中古マンションは値上がりが続いているという。中古だけではない。15日付の日経産業新聞によれば、今年上半期に首都圏で発売された新築マンションの1戸当たりの平均価格は4.9%増の5256万円。「建設費の高騰が主要因だが、富裕層を中心に高価格物件への需要も旺盛だ」「首都圏の販売価格は1991年1~6月期(6450円)以来、24年ぶりの水準にある。14年も5千万円を超えるなど、近年はバブル期前後の高さで推移」している。「平均価格約1億9000万円の高額物件が発売日当日に完売する」事態もあるという。(15日付読売新聞朝刊より)

 ちなみに、7月3日付のジャパンタイムズによると、中国人が日本のマンションを買い漁り、価格の高騰を招いているという。例えば、北京では、40人の中国人が月2回、東京と大阪への3日間の「財産ツアー」と称してマンションを物色している。背景は、円安と20年の東京オリンピックにより、不動産価格がお買い得で、安全な投資のため。もうすぐ上海でも「財産ツアー」は始まるという。

 中国の不動産企業によると、中国人の買い手は昨年より20%増えており、需要は湯水のように急増しており、財産ツアーではなく個人的に日本にマンションを買いに来る中国人も数千人規模でいるという。また、台湾人の経営する不動産会社によると、日本での中国人と台湾人の買い手は、ここ3か月で70%も増えたという。

 なお、オーストラリアのシドニーでも同様は現象は一足早く起こっていて、シドニーではすでに新築の家の4分の1を中国人が買ったという。

 中国人の買い手の多くは所得19,320,000円~38,640,000円(100万~200万元)の階層。こういう中国人がオーナーとなって日本人に貸したりしている。

 こうして、東京でのマイホーム暮らしは、日本人にとってますます叶わぬ夢となっている。

 しかも、成り金中国人が円安の恩恵を被る半面、日本人には円安による原材料費高騰の値上げが押し寄せている。

 例えば、ここ1か月の間に、山崎崎製パン平均2.6%、明治10~20%、森永製菓約5.9~10%、カゴメ約4~10%、ブルドックソース3~9%、永谷園約5~10%、アサヒビール9~44%、タカノフーズ約20%といった企業が値上げを打ち出している。(7月1日付日本経済新聞朝刊より)

 さらに昨年、消費税を5%から8%に上げたことも影響し、国民の実質賃金は25か月連続で下落中。株価が上がったと政府が自画自賛する裏で、国民の家計は苦しくなっているのが現実である。

 今月2日に厚労省が公表した国民生活基礎調査では、昨年、「生活が苦しい」と感じている世帯は62.4%に上り、前年比2.5%アップで、上昇したのは3年ぶりで、1986年の調査開始から最も高かった。株価の狂騒の裏で、国民の家計はかつてないくらい苦しい。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が文化放送「くにまるジャパン」で次のように言った。この言葉が、今、問われているのではないか。

 「安倍政権からアベノミクスを取ったら、何が残るのか――」(佐々木奎一)


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