2013年7月5日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「横行する“古紙持ち去り”」
を企画、取材、執筆しました。
けさの東京新聞に、「持ち去り古紙の買い取り 問屋に拒否を指導」という記事がある。
「古紙の持ち去り」とは、住民が出す資源ごみ(新聞、雑誌、段ボールなどの古紙)を、自治体が回収する前に、トラックで持ち去る行為をいう。持ち去りは、各自治体の回収日を把握し、組織的にトラックで町を徘徊して、住民が古紙を出した途端にトラックに積み込んで持ち去るケースも多い。
社団法人東京都リサイクル事業協会によると、持ち去り業者は問屋に売り払い、その問屋は中国などの海外メーカーに売っている。同協会の試算では、都内の新聞古紙の待ち去り率は27.3%、推定42,675トンも持ち去られており、被害額は14億9362万5千円に達する。しかも古紙の持ち去りは東京だけではなく全国で横行している。
そのため、05年頃から全国各地で、持ち去り業者に罰則を科す条例制定が相次ぎ、取り締まりが強化されている。例えば08年7月には、東京都世田谷区でごみ集積所から古新聞を勝手に持ち去ったとして、区清掃・リサイクル条例違反の罪に問われた古紙回収業者ら11人に対し、罰金15万~20万円の支払いを命ずる判決が最高裁で確定。09年2月には資源ごみの集積所から古紙を持ち去ったとして、世田谷区成城署が埼玉県内の男(24)ら2人を同条例違反の疑いで逮捕。12年9月には、相模原市で古紙を違法に持ち去ろうとした男2人が神奈川県警に書類送検されいる。また、同月佐賀市は、古紙などを持ち去った市内の無職男(60代)を佐賀警察署に告発している。
このように持ち去りが横行する中、冒頭の記事によるれば、東京都西東京市と埼玉県松伏町などは、衛星利用測位システム(GPS)を利用して古紙持ち去り業者を追跡したところ、埼玉県内の古紙買い取り問屋に持ち込まれていたことが発覚。両市町の職員らはその問屋を訪問し、持ち去り業者と取引しないよう求め、問屋側は今後は買い取らない、と約束したという。
ちなみに、持ち去り業者や問屋のなかには、「生活のためだ。昔から古紙回収は民間業者でやってきた。そこに行政が割り込んできて、『この日この場所に置け』と言い始めた。集積所の古新聞は持っていっていいものなのだ」(東京都足立区の業者社長)、「そもそも『盗み』という表現がおかしい。古紙の回収は室町時代から民間でやっている。行政が介入する理由が分からない」(茨城県水戸市内の古紙問屋業者の会長)と言う者もいる。
また、費用がかさむため、古紙の行政回収を行っていない自治体もある。東京都中野区は07年度から、行政回収を完全にやめて、業者と個別に契約を結んだ町内会に区が報奨金を出すようにしたところ、回収費用は前年度の約2億2000万円から約1億円減ったという。荒川、世田谷の各区でも、町内会が業者に回収を任せた地域では行政回収をやめている。(読売新聞03年11月25日、04年2月4日、08年1月11日付の各朝刊より)
自治体の古紙回収の費用は、住民の税金で賄われている。自治体の古紙売却による収入は、住民の財源となる。そうであるがゆえに、古紙回収をどうするか、費用対効果を踏まえ、そこに住む住民が決めていく必要がある。(佐々木奎一)