安保法制が国会で審議されて以来、実に多くの識者が安倍自公政権について語っている。例えば、7月18日付の神奈川新聞電子版によれば、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏はこう語っている。
http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/kanaloco-20150718-109833/1.htm
強行採決に反発する世論に広がる中で衆院を通過した安全保障関連法案。「すでに独裁が始まっている」と指摘する思想家の内田樹さん(64)は一方で「安倍首相は強行採決せざるを得なかった」と述べ、安倍政権もまた追い詰められているとみる。そのわけは。そして、私たちができることとは。
内田さんが言及したのは国会審議で「ぬらりくらりの答弁」を繰り返した安倍政権の狙いだ。
「無意味な答弁を繰り返すことで、国会審議は茶番だということを印象づけようとしている。NHKの電波を通じて全国民にアピールする。それがあの不誠実な答弁の本当の狙いだったと私は思います」
メディアコントロールに神経をとがらせている官邸が、国会が機能していないという報道をあえて放置した。
「自民党が目指しているのは、行政府による独裁。そのためには、国会が機能していないという現実をまずつくり出したい」
「党本部の言うことを聞くだけのイエスマンを(国政選挙の)候補者に選ぶようにした」「官邸内の密室合議で国家の大事が決定されている。その意味ではすでに独裁は始まっていると言ってよい」
ただ、安倍政権には大きな誤算があった。内閣支持率の低下だ。憲法学者たちの「違憲」発言や「メディアを懲らしめる」発言などで自民党への反感が一気に広がった。全国各地でデモが繰り広げられ、反対世論のうねりが日に日に大きくなる。
「国会審議が長引くほど内閣支持率は下がる。強行採決すれば支持率は急落することが分かっていても、さらに低い支持率になってから強行採決するよりは、ましだという判断。安倍首相は強行採決を選んだわけではなく、それ以外に生き永らえる選択肢がなかった」
内田さんはそう見立てる。
安保法案の審議はこれから参院に移る。
「またあのぬらりくらりの答弁が繰り化されるなら、支持率がどこまで下がるか。もし30%を切ると政権は死に体になり、法律ができても官僚たちが動かなくなる」
国政選挙は来年の参院選までない。しかし内田さんは「絶望的な気持ちはない」という。期待を寄せるのが、国会前の抗議行動で中心になっている学生団体「SEALDs」をはじめとする20代の若者たちの活動だ。
「目標はシンプルです。内閣の支持率を危険水域まで下げること。みなさんがつぶやくだけでも、それは一つの意思表示になります。雄弁である必要もありません。60日後までに支持率を30%以下に引き下げることができるかどうか」