2013年8月9日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「急増する“化粧する男性”」
を企画、取材、執筆しました。
けさの読売新聞の連載記事「激変 化粧品業界」によると、男性向け化粧品は、国内化粧市場の約5%(1021億円)で、富士経済の予想では、今後、年3%台の伸びが見込めるという。
そうした中、東急ハンズ新宿店では、昨年7月から男性用ファンデーションやコンシーラーの販売を開始。目の下のくまやシミを隠すためのメーク化粧品で、客層は営業マンや就活の学生が多いという。また、伊勢丹新宿本店メンズ館では一階正面入り口の一等地に化粧品コーナーが陣取り、美容液などが人気という。
このように男性を取り込みつつある化粧品市場だが、昔からこうした動きはあった。発端は戦後の1970年ごろ、ファッション界で男女の区別のないユニセックスという言葉が使われ出したことに始まる。その頃から徐々に男性の化粧が広がり、80年代には資生堂や鐘紡が男性用の顔面パックや口紅などを販売するなど浸透した。
さらに90年前半に転機がきた。化粧文化に詳しい石田かおり駒沢女子大准教授の話によると、この時期、X JAPANなどのビジュアル系バンドが台頭し、Jリーグ開幕でファッション誌から抜け出てきたようなスポーツ選手も増え、「男は中身という固定概念が崩れ始めた」という。(09年4月14日付、日本経済新聞朝刊より)
さらに2000年代には「メトロセクシャル」現象というのも起きた。これはサッカーのベッカムなどの米欧の都市男性の中で、メークやエステ、ファッションなどで自分の見栄えにお金を惜しまない層を指す。03年に米国で流行し、この現象が日本にも上陸して、男性の化粧品市場は急拡大した。
こうして09年度、ついに男性の化粧品販売額は1000億円を突破。これには汗の影響も大きいという。同紙の記事「男性向け化粧品、なぜまた人気?」(11年8月27日付朝刊)によると、節電や猛暑、マラソンやスポーツ人口の増加に伴い、香り付きの制汗剤や汗ふきシート、洗顔シートで身だしなみを整える男性が増加しているという。
そもそも歴史をひもとくと、日本は、貴族に始まり、武士、町人に至るまで、化粧をする男性は珍しくなかった。それが明治維新以降は、富国強兵の政策のなか、男の化粧は軟弱というイメージが固まっていった。
「もともと日本の女性は戦中の混乱期を除けば、筋肉質の男性よりも優男が好きという文化がある」(前出の石田准教授、08年11月12日付日経MJより)ともいう。やはり男性の化粧品市場は今後もじわじわと伸びるかもしれない。(佐々木奎一)