2011年11月21日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「朝刊ピックアップ」で記事
「中日・落合監督の散り際」
を企画、取材、執筆しました。
キーワードは「散り際」…。
三勝三敗で迎えた昨日の日本シリーズ「天王山」の一戦は、福岡ソフトバンクホークスが内川聖一選手のタイムリーヒットなどで3対0で中日ドラゴンズに競り勝ち、優勝を決めた。
ソフトバンクは、リーグ戦ではパリーグ二位の日本ハムに実に17.5ゲーム差をつける圧倒的な戦力で勝ち上がってきたが、2011年の最強チームであることを文字通り証明した形だ。
対する中日はリーグ戦でチーム打率が12球団ワーストの2.46だったが、日本シリーズでも打率1.55、34安打、9得点と、ワースト新記録を更新するなど、貧打に苦しんだ。逆にいうと、この戦力差で第七戦まで持ち込み紙一重の勝負をしてきたところに、中日・落合博満監督の“凄み”があったともいえそうである。
例えば、テリー伊藤氏は著書でこう記している。『兵力と武器は、たったこれだけしかないけど、死んでも勝つ』落合監督の戦い方には、そんな不気味さがある。『兵が少ないなら、1人で10人の敵を斬ってやる』『一撃必殺で仕留めてやる』『刀が敵の骨に当たって刃こぼれしたら使い物にならないから、ハラワタだけを狙いすまして突き刺してやる』そういう集中力と切れ味を落合監督は持っている」(「なぜ日本人は落合博満が嫌いか?」(角川書店刊)より)
そんな“勝負師”落合監督の散り際は次のようなものだった。試合後のファンとの別れ際には、竜党も、鷹党も、ヤフードームのスタンド360度からの『オチアイ』コールが鳴り響き、落合監督は照れ臭そうに両手を振って笑った。(サンケイスポーツより)
そして報道陣にもみくしゃにされながら、「負けたのは残念だけど、悔いはない。あいつらがここまで連れてきてくれた。大したもんだと思う。オレらはいなくなるけど、今までやってきたことを継続してくれればいい。自分を大事にして野球人生を送ってくれれば、それでいい」と語ったという。
さらに日刊スポーツだけは、去り際の秘話も掲載している。同紙によると、試合後、中日のロッカー室では選手、スタッフ全員が輪になり、みんなの顔を見渡して落合監督がこう口を開いた。「8年間、ありがとうな。今、この場に立っているのはみんなのおかげだ。9月で終わっていたかもしれないんだから。この場に立っていることに感謝している。ただ、ここからも下手な野球はやるなよな。でなきゃ、今までやってきた意味がないだろ」。こうして9月22日の電撃退任発表以来、初めて選手たちに別れを告げた落合監督の目には涙があふれていた。選手たちも号泣し、おえつが部屋中に響き渡ったという。
こうした落合監督の散り際も球史に残るエピソードといえよう。