ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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あの有名女優が「痛切な過去」を告白する講演会に潜入!

2012年03月27日 | Weblog

 女優の東ちづるが2月5日、東京都調布市で「人権について考える『人は変われます。変わろうと思えば』」と題し、講演会を行った。主催は調布市。

 東ちづる、といえば、「骨髄バンク」「あしなが育英会」などのボランティア活動や、国際紛争地域の子どもたちを支援するための「ドイツ国際平和村」の支援を行っていることで有名。また、「アダルトチルドレン」といって「子供の頃に精神的に不安定な家庭環境で育ち、成人後も生き方に悩む状態」に陥り、カウンセリングで克服した人物でもある。単なる女優の域を超えた女優、東ちづるは何を語るのか――。現地へ向かった。

 会場参加者は約200人。40代以上の主婦が圧倒的に多かった。まず、調布市長の長友貴樹氏が簡単にあいさつ。壇上横には、手話通訳がいるのが印象的だった。

 その後、東ちづると、司会役の道あゆみ氏(弁護士)が登場。道氏の質問に答える形で、東ちづるは約1時間、語った。中でも特筆すべきは買うアダルトチルドレンの話だった。東氏は「実は私、高校3年間の記憶がないんですよ。あるテレビ番組で、私へのサプライズで男の人が出てきたんです。でも、『え? この人誰だろう? 私の恩師かな? 』と思ったら、同級生だったんです。『え!? 同級生なのに記憶にない! 』という事態になってしまったんです。よくよく考えてみたら、高校時代については2つか3つの記憶しかなくて、当時の同級生に聞くと『ちいちゃん、いい生徒だったと思うよ。優等生だったよ』と言われて、ガーンと衝撃を受けました」と語る。

 そこから色々な事を思い出し、こんな出来事も思い出したという。「私が大学受験を失敗した時に、母がボソッとこう言ったんです。『あ~あ、18年間の期待を裏切ったねぇ』って…。母に悪気はないのですが、私にとっては“暴力的な言葉”でした。殴る、蹴るといった行為だけではなく、言葉により心理的、精神的にダメージを与えることも、虐待なんですよね…」。

 また、東氏は母親から「一番がいいのよ」「ちゃんとしなさい」「頑張りなさい」「いい子でいなさい」と言われて育ったという。ある時、母親がその言葉を、母の妹の子どもに対して言っているのを東氏は横で聞き、胸が痛くなり目まいをおぼえ、「そうだ! 私はこの言葉で育てられたんだ! この期待にこたえて生きてきたんだ! !」と気付き、それから自分で本屋に行き勉強するなかで、「自分はアダルトチルドレンだ」ということがわかったという。

 東氏は語る。「それは私のせいではありません。育てられ方により、生きづらさを覚えたのです。例えば、私は芸能界に入った頃は、『元気で明るく悩みもない、ちいちゃん』と言われて、『お嫁さんにしたいタレント』とも言われるようになりましたが、でも、そうじゃない私自身もいたんです。一人になるとクヨクヨしたり、ずいぶん昔のことを思い出して自分を責めてしまう…。それを人には言えなかったのですが、ついに母に言ったところ、“冷戦状態”が3年続き、『もうプロに入ってもらおう』と決めて、カウンセラーをお願いしました」。
 こうしたカウンセリングを受けたのは1999年、東氏が30代後半になってからのことだった。カウンセリングの方法は、基本的に東氏と母親の話をカウンセラーがずっと聞き役に徹し、時々、「つらかったね」「それはうれしかったね」などと相槌を打つもので、否定しない、導かない、とにかく協調する、共感する、共有する」というものだったという。

 カウンセリングを受けてから、東氏は「たとえ血がつながっている家族でも『他者』であり、自分とは全く違う人たちが寄り添って生きようとしている集団なんだとわかりました」という。

 また、こうも述べる。「以前の私は子どもが嫌いでした。苦手でした。なぜならそれは、自分自身が嫌いだったからです。でもカウンセリングを受けて、リハビリをして、私は私を大切に思えるようになったんです。すると、子どもも、ものすごく可愛く思えるようになったんです」。

 さらにこうも語る。「子どもにも人権があります。親は、よかれと思って、『あなたのためなのよ』と言いながら、自分の物差し、尺度で子どもに期待します。これは子どもの人権を迫害しているんです。娘に期待をして、娘が何か夢を叶えることが、自分の夢という親がいますが、それは“依存”なんですよね。それが私には重かったです」。

 さらにさらに、こんな話もした。東氏はテレビ朝日の朝の報道番組「ニュースバード! 」の水曜のコメンテーターをしている。その中で親が子どもを虐待したり、夫婦間で殺し合うといった凄惨な事件がよくある。そのとき、加害者を人でなしのモンスターのように言う人もいるが、「 私はそういうことは言わないように気を付けているんです。加害者は、かつての被害者だった可能性が高い人です」と言う。

 そして「刑務所に行って、たくさんの刹人犯や強盗犯などの受刑者たちにロングインタビューをしました。『お子さんの頃どうだった? 』『家族はどうだった? 』『どんなお父さんだった? 』といった質問を時間をかけしていくと、実は私が聞いた9割以上の人たちは暴力を振るわれていました。でも、受刑者たちは、自分はDVの被害者だということに気付いていないんです。愛された記憶も、大切にされた記憶もない。なので、他者を大切にすることができない」と言い、さらに「私たちは、自分自身や子どもたちに対し、『いじめられてはいないか? 被害者になったりしないだろうか? 』とは思いますが、『うちの子やうちの孫がいじめてはいないか? 加害者になってはいないか? 』という心配はあまりしません」と指摘する。

 そして東氏は最後にこう語った。「『あなたはどんな人になりたいの? 』という質問に対し、『優しい人』『責任感が強い人』というふうに言いがちですが、これは曲者です。これは世間から見た自分です。世間の目を気にすると、優先順位が世間が先になってしまうんです。そうではなく、まず、自分がどうしたいのか」という。私は『私の心を大切にする人間になりたい』と今思っています。自分を大切にするようになると、他人を大切にできるようになります。人権を大切にできない人。人を傷つけてしまう人、人に暴力を振るってしまう人、そういう人は必ず、自分を大切にできていない人です。学校でも、いじめっ子がいます。その子は自分を大切にできていないんです。もしかしたら親から押さえつけられているかもしれない。まず、ここからやっていかないと、私は世のDVはなくならないと思います」。

そしてこう述べた。「まずは自分を大切に生きる。誰とも比較されなくていい、地球上でたった一人のスペシャルな存在。そのことを、小さきもの、弱き者、お子さんやお孫さんに伝えてほしいなと思います」。

 

写真は痛切な過去を語る女優の東ちづる。
 
 
 

 2011年2月19日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「潜入! ウワサの現場」で記事
 
「あの有名女優が「痛切な過去」を告白する講演会に潜入!」
 
を企画、取材、執筆しました。 


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