ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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「武器輸出三原則」撤廃の波紋

2014年04月24日 | Weblog

 平成二十六年四月十一日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「「武器輸出三原則」撤廃の波紋」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 けさの東京新聞に「安倍政権が武器輸出解禁 平和主義崩れ技術流出も」という記事がある。同記事は安倍政権が今月1日に閣議決定した「武器輸出三原則の撤廃」について分析したものである。

 そもそも「武器輸出三原則」とは、1967年4月に佐藤栄作内閣が、共産圏諸国、国連安全保障理事会(安保理)が武器輸出を禁止した国、国際紛争の当事国、この三つの条件の国への武器輸出を禁止したことに由来する。その後、76年2月の三木武夫内閣は、憲法の精神にのっとり武器輸出を慎むものとし、実質的に武器の輸出を全面禁止した。
 その後、04年には小泉純一郎内閣が、米国とのミサイル防衛の共同開発を例外とするなど「例外措置」で対応してきた。(参考:「imidas」(集英社刊))

 ここまでは武器輸出禁止の決まり事は原則守らせれていたが、風向きが一変したのは民主党の野田佳彦内閣の時だった。11年12月、野田政権は国際協力についての武器輸出、日本の安全保障に資する武器の共同開発・生産については包括的に例外化すると決定したのである。そして、安倍政権は野田政権の遺志を引き継ぎ、ついに武器輸出を解禁したというわけ。

 冒頭の東京新聞の記事によれば、すでに安倍政権は豪州(オーストラリア)との間で潜水艦の共同開発をすることで合意。豪州が求めているのは日本の海自の「そうりゅう型」潜水艦だという。なお、防衛省関係者は「潜行深度、独自鋼材など潜水艦は秘密の固まり。技術の提供は高度な武器技術輸出を意味する」と話しており、武器輸出大国の米国や露国(ロシア)では、技術流出を避けるため、性能ダウンした武器を売っているというから、日本の豪州への武器輸出も簡単にはいかなそうだ。

 また、今後、安倍政権が武器の輸出先として想定しているのは、原発をトップセールスしたベトナム、トルコ、サウジアラビアなどだという。これらの国々に性能の低い武器を売って儲けようというのが本音といえそうだ。

 なお、上記各国は、一応、現状、戦争しない国と規定されているが、「将来、どんな国に変貌するか分からず、日本の武器が世界を不安に陥れる可能性は消えない」と同記事では指摘している。

 なお、今回の安倍政権の武器輸出の解禁は、国際条約で使用を禁じている化学兵器やクラスター弾、地雷などは禁止したり、安保理が禁輸対象としたイラン、イラク、ソマリア、リビア、スーダンなど12か国への輸出を認めなかったり、輸出した武器が紛争国に渡らないよう歯止めを示すなど、一定の制限がかかっている。(4月5日付日本経済新聞朝刊より)

 しかし、これまでの流れからみて、今後、その制限もどんどん緩和されていくことが予測されよう。そうなってくると、世界各国で戦争が勃発したり、一触即発の事態になるたびに、日本は「武器が売れて喜ぶ国」になる。民主党の野田佳彦、自民党の安倍晋三両氏は、「戦争を望む国」への道を開いた首相ということになろう。そして、私たちはそういう時代に生きている国民ということになる。

 なお、今回の安倍政権の決定に、防衛産業は儲かる道が開けたので喜んでいるそうだが、果たしてそれで、子どもに「何の仕事をしているの?」と聞かれて、胸を張って答えられるだろうか。もちろん、世の中には、子どもに言いづらい仕事もあるが、人を殺す兵器を輸出する仕事というのは、他とは次元が違う。この国の人々の精神がすさび、教育にも悪い影響を及ぼすのではないか?(佐々木奎一)


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