ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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「彼氏に会うため」駅トイレに子ども遺棄

2014年04月21日 | Weblog

 平成二十六年三月三十一日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「「彼氏に会うため」駅トイレに子ども遺棄」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 30日付の毎日、読売新聞の大阪版朝刊に、彼氏に会うために一歳児をトイレに放置したという、にわかには信じ難い事件が報じられた。

 記事によれば、新幹線も停まる交通の要衝「JR新大阪駅」構内のトイレに、長女(1)を置き去りにしたとして、大阪府警淀川署は29日、飲食店員の女(22、兵庫県尼崎市在住)を保護責任者遺棄の疑いで逮捕したという。

 淀川署によると、容疑者の女は28日午後9時前、長女を連れ、遺棄現場そばの交番に託児所がないか尋ね、近くの託児所を紹介された。その後、女は紹介された託児所に電話をしたものの、長女を預けなかった。そして、新大阪駅3階の多目的トイレに、数枚のおむつを置いて無施錠で長女を放置。長女がトイレ内で泣いているのを通行人の女性が見つけ、通報し、淀川署が保護した。長女にけがはなかったという。

 その後、警察は容疑者の女に何度か電話したが、29日昼ごろまで淀川署に迎えに行くのを拒み続けた末に逮捕された。「彼氏に会うためだった」と女は供述しているという。

 「彼氏」と言っているところからみて「シングルマザー」の可能性が高い。そして職業「飲食店員」というのは大雑把な表現だが、警察発表で飲食店員というのはキャバクラ嬢を指すこともある。

 ちなみに、この事件を聞いて、2010年夏、風俗店のマットヘルス嬢の女(当時23)が、三歳の女児と一歳九か月の男児を大阪ミナミの繁華街のそばのマンションに放置して、男と遊び回り、子どもを餓死させて逮捕された事件を彷彿とさせた人もいるのではないか。

 犯人の女を取材した「ルポ虐待――大阪二児置き去り死事件」(著: 杉山春/筑摩書房刊)によれば、女は結婚し、子どもを二人産んだ後、離婚。その後、一時期、名古屋市の繁華街、栄地区のキャバクラ「M」やJR金山駅近くのキャバクラで働いていた。女は託児施設を使っていなかった。それはお金がないからではないかと指摘して、こう記している。

 「店長によれば、二〇〇〇年代半ばごろから、十九歳~二十歳で子連れで面接にくる女性が増えたという。二〇〇八年のリーマンショック後には、面接を受ける女性の半分が子連れになった。シングルマザーは従業員の供給源だ。都会の店では、長期で一つの店で過ごす例は余り多くない。店を変わることで、いったん下がった時給が上がるからだ。若いシングルマザーが幼い子どもを抱えて店を転々とする。ネグレクトの温床は急激に拡がっている」

 要するに、子どもの育児放棄(ネグレクト)の背景には、「シングルマザーの増加」という現象が横たわっている。

 よくいわれるように日本の年間の離婚件数は、47年79,551件から年々増加傾向で71年に初めて103,595件と10万件を突破。その後もうなぎ上りの増え、96年には206,955件と20万件を超え、02年289,836件をピークに逓減し、直近11年は235,719件。そのうち、子どものいる夫婦の離婚は136,808件(離婚全体の58%、11年)。うち子どもの親権を妻がもつ割合は84%に上る。(国立社会保障・人口問題研究所の統計より)

 こういう状況のなかで、シングルマザーの貧困、婚活、恋愛に伴う育児ストレス、キャパシティオーバー、育児放棄といった事態も生じている。

 ではどうすればよいか。一つの方策としては、離婚した子どもの親権を現状のように父か母どちらにするのではなく、「共同親権」という選択肢も可能にすれば、今よりもシングルマザーの経済的負担を減らすことができるのではないか。(佐々木奎一)


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