ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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国防軍だけではない、今夏の参院選で問われる『憲法改正』の実態

2013年01月24日 | Weblog

2013年1月1日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ 年末年始特別企画! 2013年のニッポンの気になる分野の行方を占う!」で記事 
 
「国防軍だけではない、今夏の参院選で問われる『憲法改正』の実態」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 2013年の政治で注目は夏に行われる参院選挙である。昨年12月の衆院選で大勝した自民党は、連立を組む公明党と合わせ衆院の議席の3分の2を占めるに至った。
 日本国憲法第九十六条には「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とある。
 現在、自公の参院の議席は過半数にさえ16議席足りない状況だが、今夏の参院選次第では、自公、もしくは自公プラス維新などの勢力と合わせて参院で3分の2の議席を獲得して、憲法改正が具体的に政治日程に上がる可能性が出てきた。
 よくいわれるように、自民党の憲法改正草案には、国防軍による集団的自衛権の発動が明記されているが、それ以外にも、国民が知っておいた方がよさそうな条文がある。
 それは、第21条である。現行憲法には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とある。ここまでは自民党も一緒だが、その後に自民党は次の一文を加わえている。
 「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」
 そもそも現行憲法で第21条ができた背景には、戦前、戦中の日本の苦い経験がある。たとえば日本はかつて治安維持法という法律をつくった。この法律は、「国体の変革」または「私有財産制度の否認」を目的とする結社を作ったり、参加したりする行為を処罰するもので、具体的には共産党の取り締まりを目的としていた。その後、この法律は改正されて、「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者ハ(中略)死刑又ハ無期」(第一条)と、国家権力にモノを申す勢力を広く統制するための法律に様変わりした。
 この「国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社」と、自民党憲法の「公益及び公の秩序を害することを目的とした(略)結社」との一文が、どちらもアバウトでいかようにも解釈できる点が似ているといえないだろうか?
 また、戦前は出版法で言論、出版の自由を取り締まっていた。同法の第19条には「安寧秩序ヲ妨害シ、又ハ風俗ヲ壊乱スルモノト認ムル」出版物は発禁にする、と明記していた。この「安寧秩序ヲ妨害シ」の一文も、自民党の「公益及び公の秩序を害する」との文言と似ている。
ちなみに、フランスの知識人ジャック・アタリは「21世紀の歴史」という本を06年に執筆した(日本語版は08年に作品社が刊行(訳: 林昌宏))。この本に、2025年の日本の姿の記載がある。そこには、「日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化には歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける」「ロボットやナノテクノロジーをはじめとする将来的なテクノロジーに関して抜きん出ている」としながら、その後に、こうある。
「個人の自由を日本の主要な価値観にすることはできないであろう」。
さらに、「日本を取り巻く状況は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。こうした戦略は、経済的に多大なコストがかかる」とある。
奇しくも自民党憲法案はジャックアタリの予測に沿っているといえるのではないか?
なお、ジャックアタリは同書の執筆動機を、こうなってほしい、という願望ではなく、「我々の未来が本書のようになってほしくない」との思いからだ、と記している。要するに、警世の書である。
われわれは、この国の未来を大きく左右する歴史の渦中にある、といえそうだ。(佐々木奎一)


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