Speed Bird:Tokyoボンド&ボンドGirlのCoolなSPYスタイル

グルメと遊びは一級品の英国情報部員007御用達、Tokyoボンド&ボンドGirlの為のハイセンスで愛すべき店をご紹介。

Fat Duck開店顛末記

2005-09-28 19:07:07 | Spyなグルメ
今英国で、いや、世界で一番注目されているかもしれない、シェフ、それがレストラン「The Fat Duck」のシェフ、ヘストン ブルーメンタール。1966年5月27日生まれ、39歳。

彼を料理の世界に開眼させたのは16歳の夏休み。家族でフランスへ旅行へ行った際のプロバンスのレストランでの食事であった。その素晴らしい体験が彼をこの世界に導くきっかけに。

学校卒業後彼はレストランを持つ資金を貯めるべく事務機器セールスマンとして働き、1985年には妻となる看護婦のスザンナに出会う。そして貯金 をしては彼女と共に美食探求の旅にでることに。また彼はこの頃彼のバイブルとなるHarold McGeeの本に出会いベーシックなフードサイエンスを知 る。

そして1995年、ついに念願の自分のレストランとなる物件をBrayに見つける。それはBellと言う名の450年の歴史の古いPubであった。(これ が後に今のFatDuckになる) FatDuckという名前の理由は何か?とよく聞かれるらしいが、実は何かいい逸話が無いか探してるというのがホント のところらしい。

さて、古いPubをレストランとして改装開業する前に、彼は地元のお客さんの実態を掴んだりするためにしばらくBarとして店を数週間開くこと に。ところが、、、来店するのは辺りのPubで出入り禁止をくらった飲兵衛たち。地元警察がきたと思えば、何かトラブルがあったら通報するように、って言 われたらしい。

そんなこんなの試験開業のあといよいよレストランへの改装に着手。ここでも面白い逸話が。。

改装工事中、スカーフを巻いて杖をついた おばあさんが近くを通りかかった。おばあさんは店の中をのぞいて興味深そうに、何しているのかい?って聞いてきた。彼は熱心に彼のプランを説明し、おばあ さんが古いパブに変わって新しいビストロができることに喜んでくれるものと期待した。が、おばあさんは彼を見てこういったらしい。「今まで5年間に3人 オーナーがいたが、奴らの店は潰してやった。お前もだ!」
杖を彼に向け振りながら彼女は去っていった。。。

さらには数日後、Brayの自治体 から開店祝いのレターが届いたが、そこにはなんとこの店の名前が村のイメージに合わないという指摘があったらしい。そんな暖かい?歓迎ムードに包まれてのスタートであった。

開店してからも一苦労。オーブンは爆発するし、ガスは火力が弱いときている。料理界の教えでは沸騰したお湯に塩をいれて野菜の緑色を保つというのがある が、そのためにはお湯をずっと沸騰させておかねばならない。が、それはここのガスの火力を考えれば無理な話だった。が、災い転じて福となす、ここが彼の気付きの素晴らしいところだが、ブロッコリを使ってテストするうちに必ずしも塩が緑を保つために必 要ではないということに気付いた。いろいろ調べていくうちに彼はシェフというものには一緒に働いていくれる科学者が必要だということが分かってきた。

そしていろいろな人脈をたどりはじめた。その過程でNicholas Kurtiというオックスフォード大学教授のことを知る。彼は35年前に分子美食法 という言葉を作り出した人物であった。が、彼は数年前に亡くなっていたため、彼はその妻から分子美食法のワークショップの参加者名簿をもらい、そのリストをた どることにした。そうして彼はBristol大学のDr Peter Barhamに連絡することに。ブルーメンタールが彼に茹でるときに塩が必要ではない話をしたとき、彼はこういった。「ついに、シェフがこのことを理解したぞ!」

99年には彼は風味心理学に興味をもつようになっていた。彼がカニのリゾットにカニアイスクリームを添えて出すとき、彼はアイスクリームという表現が知覚 の世界を変えてしまうことに興味を覚えた。「カニ・アイスクリーム」と呼ぶことが、味覚にバリアをつくり実際以上の甘さを作り出すのであった。だが、「カ ニ アイスクリーム」が実はカニのスープの凍らせたものであると聞かされたときに反応は全く別のものになる。感覚のバリアが無くなりアイスクリームは実際 のとおりに味が感じられるのである。

2000年にはレストランは改装され(天井が崩れ落ちそうであったので!)、その翌年にはミシュラン2つ星を獲得し、2003年にはオックスフォー ド大学で300人近い聴衆を前に講演することにもなった。そして2004年にはミシュラン3つ星を授かり、彼の著書「Family Food」はグルマン・ワールド・クックブック・アオードのクックブック・オブ・ザ・イヤーを受章した。

そして2005年、記念すべきFat Duckの開店10年目に「レストラン」誌のベストレストランに選ばれるのであった。

英国情報部から入手したレポートを基に彼の人生を駆け足で辿ってみた。サクセスストーリーの裏にはいくつかの偶然的な出来事が重なっていると同時に、こうした機会を自分の人生のチャンスに変えてしまうトコロはやはりデキる男のなせる技なのでしょう。
うーん、ますます行ってみたくなってきました。この店。

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