ポルトガルの空の下で

ポルトガルの町や生活を写真とともに綴ります。また、日本恋しさに、子ども恋しさに思い出もエッセイに綴っています。

エキゾチシズムとロマンチシズムのモンセラー宮殿と森

2019-03-06 16:19:38 | 海岸を散歩する聖人の旅行記
2019年3月6日

ポルトガルの西、シントラ旧市街から4キロの山中にモンセラーの森がある。
「モンセラー」の名の由来は、スペイン・カタルニア山岳地方の黒いマリア像があることで知られるモンセラー修道院で、その黒いまりあに捧げられた礼拝堂が16世紀にこの森に建てられたことから来る。



入り口にはキメラと呼ばれる仮装の動物一対があたかも森を護衛するかのように高いもんん上から入場者を見下ろしている。ミリに杯ってすぐ見えるのが巨大な岩戸「Vathekの門」だ。この象と門は英国の名門富豪で、しかもゴチック作家であったウイリアム・べックフォードの小説「ヴァテック(Vathek)」に因むのだが、それもそのはず、べックフォードは18世紀終わり頃、ここに住んでいたのだった。

広大な森を草木の茂るボタニックコースに沿っていくと、やがてなだらかな芝生の丘の上に華麗なドームをいただくピンクがかったエキゾチックな宮殿が姿を現す。


宮殿を今日の姿に改善したのは英国人富豪、フランシス・クックである。19世紀半ば、インドに造詣が深いクックは、朽ち果てていた館内外をイスラムの影響深い華麗なインド・ムガル帝国時代の建築様式に改築して一族の住まいとした。



2人の著名な英国人が造り上げ、それでいて英国雰囲気とは異なったモンセラー宮殿は、訪問者たちをしばし不思議なオリエンタルの世界に誘うことだろう。


え!鍵はふたつ?

2019-03-04 17:53:40 | spacesis、謎を追う
2019年3月4日

鍵二つって、そりゃspacesisさんはそうでしょよ。二つどころか三つ四つあっても自分の家から自分を締め出すのは再三起こりますってば。なんて、だれだぃ、そんなことを言ってるのは(笑)

そう言われてもあまり大きな声で反論できない、実は何度も自分を締め出している情けないわたしであります。

でも、今日はその鍵じゃないんです。

大学講師の仕事が休みの東京息子が帰国していた天気がよかったとある冬の日、急遽、以前から見たいと思っていた教会を見にポルト近隣のオヴァール(Ovar)まで探して行って来ました。ポルトガルでも美しい教会のベスト10に入ると言われておりずっと興味をもっていたのです。

オヴァールの町中にあると思いきや、探して行ったふたつの教会はどちらもかなり奥まったところにありました。今日はそのひとつ、Igraja Mátriz de Cortigaçaの紹介です。



Cortigaça(コルティガッサ)というオヴァールの村にある教会は、ポルトのイルデフォンソ教会のように建物の外側が全てアズレージュで被われています。12世紀のものであろうと言われます。残念ながら昨日は閉まっていて中が見学できませんでした。

アズレージュは向かって左が聖ペトロ(ポルトガル語ではサン・ペドロ)、その下がアッシジのサン・フランシスコ、右が聖パウロ、その下がサンタ・マリア(聖母)が描かれています。

教会入り口中央の上部にはサン・グラールこと聖杯が見られます。その下にも聖杯と十字架が交差しているシンボルが見えます。写真を撮っていると、ぬぬ?サン・ペドロは二つの鍵をもっているではないか。



サン・ペドロはイエス・キリストの12使徒の一人で、昨年初秋にわたしたちが旅行してきたバチカンの初代教皇でもあり、「天国の鍵」を手にしています。

すると、息子と一緒に後ろにいた夫も「あれ?鍵がふたつあるぞ」と言う。「あ、ほんとだね。ふたつって?」とわたしが応じると、夫、すかさず、「スペアキーだよ、君同様、サンペドロも時々自分を締め出してしまうので、天国に入るのに合鍵が要るんだろ」・・・・

側で我ら夫婦のやりとりを聞いて息子がぷっと吹き出している。我が家のフラット2階のベランダから入り込むのにご近所のジョアキンおじさんから長~い梯子を借りて、やっとこさ自宅に入ったと言うこの間の締め出し事件を彼に話して「また、やってたの?梯子のぼるの危ないよ」と息子に言われたところであった。

夫のこの手のジョークは毎度のことで、言い得ているのがこれまた腹が立つのであります。ちがうわ!なんでサン・ペドロが、天国に入るのに合鍵がいるんだぃ!と、いきり立ち、よし!家に帰ったら早速調べてみようと思い、したのでありました。

サン・ペドロが天国の鍵を持つ、というのは知っている人も多いかと思います。かつては国民のカトリック教徒が多かったポルトガルです、夫もカトリックではありませんが、こと聖書に関してはやはり色々知っています。

しかし、日本語では単数複数の表現はなく「鍵」です。ポルトガルの伝統陶芸家ローザ・ラマーリュのサン・ペドロも手に一つの鍵を持っているし、わたしは昨日までサン・ペドロの鍵は一つだと思っていました。


陶芸家ロザ・ラマーリュの作品「サン・ペドロ」

調べた結果がこの絵で分かりました。



上の絵はバチカンのシスティナ礼拝堂にある壁面画の一枚です。下に拡大しました。



確かにイエスから二つの鍵を受け取っています。

「わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」( マタイ伝 16:18)

金の鍵は天の国における権威を示し、銀の鍵は縛ったり解いたりする地上の教皇の権限を意味しているのだそうです。鍵の先は上(天)を指し、鍵の握り部分は下(この世)に向き、これらはキリストの代理人の手にあることを示唆しています。 二つの鍵をを結んだ紐は天国とこの世に渡る二つの権威の関係を示す、とあります。



上記バチカンの紋章にもペドロが授かった金銀の鍵が描かれています。現フランシスコ教皇はサン・ペドロから数えて266代目の天国と地上の権威を現す二つの鍵を預かる教皇ということになります。

ということなのよ、うちのダンナ!合鍵じゃないわ・・・