OMITSU BLOG(おみつ ブログ)

オイラは“おみつ”シュガビのターギ弾き

本読み

2009年04月17日 09時41分32秒 | つれづれ
読書が好きなのですが、本腰入れて本読みする時間の余裕ってヤツが、なかなかありません。
最近読んだ本で、『高熱隧道』と言うのがあります。
この本の内容、凄いです。

先日、CX系で放送されたTVドラマ盤『黒部の太陽』前・後編を見ました。
黒部川第四発電所建設工事(所謂クロヨン)を題材に木本 正次さんが書かれた小説の、テレビドラマ化です。
この難工事に立ち向かった男達を描いた、史実を元にしたフィクションでした。
形は違いますが、拙者にとってやっと見ることが出来た『黒部の太陽』だったのです。
大元は、昭和1968年に公開された石原裕次郎、三船敏郎をメインキャストに据えた映画『黒部の太陽』です。
本当は、映画の方を見たいのですが、今現在ではほとんど見るチャンスがありません。
諸事情によりビデオ・DVD化がされていないのです。

話が逸れていますが、このTVドラマ盤『黒部の太陽』の中で伏線的に『高熱隧道』の話が出てきます。
第三工区を請け負った熊谷組の下請けで、大町トンネルの掘削をすべく現場入りした“倉松班”
(現実には笹島班。現:笹島建設株式会社)
香取慎吾が扮する倉松班の親方“倉松仁志”を筆頭に倉松班が工事出発に決起しているシーン。
倉松班の若い工夫の一人“沢井甚太”を工事に行かせたくない父親の“沢井甚五郎”
彼は、黒部川第三発電所建設工事(通称クロサン。仙人谷ダム)に先代の親方について
軌道隧道掘削工事に参加し、ダイナマイトの自然発火事故により片足を潰した。
その回想シーンで沢井甚五郎が語る台詞「あそこは地獄だったっちゃ…」
わずかな尺での回想シーンですが、なにか薄ら恐ろしい描写の数々。

そのシーンで、黒部川第三発電所建設工事に興味を覚えてしまいました。
そして、この本に行き着いたのであります。
この本も史実に基づいたフィクションとの事ですが、作者の吉村昭さんの作風は
地道な資料整理、現地調査、関係者のインタビューで、緻密なノンフィクション小説(記録小説と呼ばれる)
「彼ほど史実にこだわる作家は今後現れないだろう」と言われるほどです。
おそらくこの『高熱隧道』、登場人物の名前こそは架空のものとされているが
内容そのものは、限りなくノンフィクションに近いのでは?と思ってしまう。
読んでみての感想は?…凄すぎる…の一言に尽きる。
太平洋戦争直前のダム建設工事、そして黒部渓谷の野生の猿やカモシカ等の生息も阻む秘境(いや魔境)
そこに立ち向かった電気会社、建設土木会社、そして下請けの工夫達との人間模様
そして工夫達の貧困環境、一般的に知られていないごく特殊な自然災害…
どれをとっても、想いを疑うほどの知られざる事実…
『黒部の太陽』の題材になったクロヨン工事での殉職者は171名。
しかし黒部川第三発電所建設工事での殉職者は、なんと300名以上。
この近年、毎年雪遊びに出掛けている白馬連峰(後立山連峰)の裏側にこの本の舞台があるなんて…
『黒部の太陽』では、トンネル貫通の歓喜が描かれていますが、この『高熱隧道』では、
“祝”なんてシーンは出てきません、どころかそんな貫通の場でも人間模様の恐ろしさが
淡々と描かれており、読んでいて何とも言えない感情に襲われました。

興味を持たれた方は、是非この『高熱隧道』を読まれると良いと思う。
読むと必ず「黒部川第三発電所」「日本電力(株)」「日電歩道」「水平歩道」「歩荷」「泡雪崩」「上部軌道」等を
キーワードに検索のネットサーフィンに溺れること間違いないと思う。

この高熱隧道(欅平-仙人谷)軌道トンネルは、一般の観光では見ることができない。
関西電力が行っている「黒部ルート見学会」に応募し抽選で当たらなければならないのです。
今年の見学会は、34回ほど行われる予定になっているそうです。
う~ん、生きている間に一度は、訪れてみたい場所です。
つーか、今年の見学会に参加したいぞ!的な勢いなのです。