読書の記録

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the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

2018年10月15日 | テクノロジー

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

著:スコット・ギャロウェイ 訳:渡会圭子
東洋経済新報社

 そうなんだよな。結局、ぼくも買い物は楽天市場ではなくAmazonだし、スマホはソニーではなくてiPhoneだし、検索エンジンはgoo ではなくてGoogleだし、はてなもmixiもやらなかったけれどfacebookのアカウントは持っている。だいたいこの本だってiPhone上でKindleアプリにて読んだのである。

 本書の表現を借りるならば、脳も心も性器も掴まれてしまっているということになる! しかも四騎士の共通点に「偽の謙虚さ」すなわち「かわいいふりして近づいてくる」というのはもうものすごく納得したとともに、なんでそのことに今まで気づかなかったのかと思う。たしかにAppleもGoogleもFacebookもAmazonも、当初はとっても無邪気で着飾らず、善良の天使のようにして市場に現れたのだった。少なくともMicrosoftやIBMやウォルマートは彼らよりはずっと巨魁でビジネスライクで苦虫をつぶしたような印象を与えていたではないか。

 

 この4社がどれくらい市場を破壊しまくったかは本書にも様々なデータが載っている。めちゃめちゃ儲かっている一方で、かつてのメガ企業であるところの家電メーカーや自動車メーカーとちがって設備投資も少ないし従業員も少なくて済むから、利益は単純に純資産となって雇用などの経済循環に至らない。日本でいえば豊田市や日立市のような、アメリカでいえばデトロイトのような、企業城下町が形成されないのである。それどころか法人税さえまともに払っていない。

 しかしGAFAはこれからも止まらないのだろう。かつてのIBMやMicrosoftが絶対無敵を誇っていたにもかかわらず時代の流れによって当時の勢いがなくなったように、GAFAも永遠に不敗神話を維持するはずはないと著者は言っているが、GAFAが他の何かに交代しようとも、このような市場破壊による寡占かつ社会還元が極めてすくないビジネスモデルの企業が今後とも覇権をとっていくんだろうなとも思う。企業城下町をつくるような企業が現れることは今後もはやないだろう。

 したがってGAFAの張り巡らせた追跡網に抵抗してもこの世の中は生きにくくなるばかりである。ログをとられたくなくて遮断する安全よりも、GAFAのサービスを使わないことによる機会損失のほうがずっとダメージがでかい世の中になってしまった。いつのまにか世界を乗っ取られた格好である。

 

 ところで僕はfacebook、Instagram、LINE、LinkedInなど数あるSNSサービス(TikTokはまったくわからない)ではTwitterがわりと好きである。GAFAなんてコトバがなかったころ、とある本でGoogleとFacebookとAppleとTwitterを以下のように見立てていた。

 Googleが荒野、Facebookはそんな荒野の中で城壁に囲まれた都市、Appleは都市に住む華麗な衣装をまとう住人、そしてTwitterが荒野の中をどこからかやってくる旅人。

 つまり、Twitterは、真偽は定かでないが異国の地から面白い情報を持ち込んでくれる存在である。予定調和の外にある存在であり、文化人類学でいうところの親戚のおじさんみたいなものである。Twitterがあるからこそネットの言論は玉石混合であるとはいえ、その清濁併せのむところも含めてカルチャーが生き生きしているように思う。GAFAだけならば実はおそるべき言論統制&監視社会とは隣り合わせで、そんなところに生き生きとしたカルチャーが生まれるわけがない。

 そんなわけでTwitterには頑張ってほしい。日本人はTwitterが好きなようで、世界の利用率をみても日本は群を抜いている。そのわりに儲けが出ていないのがTwitterの大問題なところだ。本書によれば匿名性サービスはぼろ儲けができないということらしい。Wikipediaのように公共財的なビジネスモデルになればまた面白いと思うのだが。


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