読書の記録

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カラマーゾフの兄弟 ミステリーカット版・第三のチンパンジー・女の子が生きていいくときに、覚えておいてほしいこと

2020年01月29日 | 複数覚え書き

カラマーゾフの兄弟 ミステリーカット版・第三のチンパンジー・女の子が生きていいくときに、覚えておいてほしいこと

 

困ったときの複数覚書き。いわゆる落穂ひろい。


カラマーゾフの兄弟 ミステリー・カット版

ヒョードル・ドストエフスキー 編集:頭木弘樹
春秋社

 編者曰く「エベレストを高尾山くらいにした」という、文学史上最高傑作として名高い「カラマーゾフの兄弟」をたいへん食いやすくした版である。全体の量がおよそ20分の1になっているというから驚異的。
 といっても単なるダイジェスト版ではなくて、原作をうまいこと抜き出してミステリー小説のプロットにしてしまっているところがミソ。この文学の構成をことさらややこしくしているゾシマ神父とかをばっさりカットしてしまっているわけである。
 で、僕は原作「カラマーゾフの兄弟」はまだ完読していないのである。いつかは読んでやろうと思っているもののどうにも優先順位が後回しだ。とりあえず、このミステリーカット版は読んだ。これならものの数時間で読み切れる。それから、「まんがで読破」シリーズのも読んだ。ここまで前知識を得たうえでようやく光文社古典新訳文庫(もっとも読みやすいといわれている)を手に取ったのだが、現在、第3巻の途中で完全に止まっている。やはりミステリーカット版は上澄みの上澄み。「カラマーゾフの兄弟」の真価はそんなところにはない、というのは原作と向き合えばおおいにわかるのだがあまりの重厚長大で目下工事凍結中。いつか再開するときがくるのであろうか。


若い読者のための第三のチンパンジー 人間という動物の進化と未来

ジャレド・ダイアモンド 訳:秋山勝
草思社

ハラリの「21Lessons」を家人が先に読み始めたのだがいっこうに読了する気配がなく、なかなかまわってこないので、いったんこちらを読む。思えば、ダイアモンドのこの本はハラリの「サピエンス全史」よりも早かったんだよなあ。だけど、ダイアモンド流にハラリの「サピエンス全史」から「ホモデウス」までをカバーしちゃっているとも言える。ダイアモンド入門として位置づけられる本だけれど、これ1冊に人類のと希望と内省と教訓がもりこまれていると思う。


1万人のリーダーが悩んでいること

浅井浩一
ダイヤモンド社

ぼくもいちおう部下持ちの管理職ということでたまにこんな本を読んでみる。が、この類の本も何冊か読んでみるとどれが多くの著者が共通して言っていることで、どれが著者特有のものかというのが見えてくる。前者にあたるものは一種の真理とは言えよう。そのココロは「部下が話しかけてきたときはどんなに忙しくても必ずパソコンの手をとめ、話しかけてきた部下のほうに体をむけ、彼ないし彼女の顔をみて、しっかり話を聞く」ということである。ゆめゆめ手も止めず顔も上げずの応対だけはNGなのである。


二十世紀の音楽

吉田秀和
岩波書店

底本は1957年に書かれたもの。ストラヴィンスキーやヒンデミットが存命どころか現役作曲家として出てくる。にもかかわらずここに書かれたクラシック音楽業界が持つ限界、作曲家と演奏家と聴衆という三角関係がクラシック音楽を袋小路に導くことを本書は予言しているのだがまさに現在その通りである。吉田秀和おそるべしである。この人こそは知の巨人だった。巻末に出てくる人名辞典も興味深い。1957年にまとめられた本にあってブーレーズやシュトックハウゼンは出てくるが、ペンデレツキやクセナキスは出てこない。今となってはすっかり忘れられた「現代音楽」の作曲家の名前が気鋭の音楽家として紹介されていたりして栄枯盛衰、弱肉強食を感じる。


女の子が生きていいくときに、覚えておいてほしいこと

西原理恵子
KADOKAWA

この本の感想はこんな断片ではなくてちゃんと一篇として書けそうだけれど、十二分に話題になった本であり、いまさらぐだぐだ書くのもあれなのでまあいいや。およそ1時間くらいで読めてしまうが読後感は胸いっぱいである。彼女ならではの女子の生き方論であり、独特の迫力と無類の説得力があるのは確か。それを支えているのは彼女の人となりだろう。この人は無頼派の芸風ではあるし、たしかにそういう人なんだろうけれど、一方では繊細というか傷つきやすくもあるんだなと思った。たしかに一見雑に見えるが、あれだけ笑いどころや泣かせどころのツボをおさえたマンガを書けるということはやはりそうとうに繊細な神経を持っているといえる。「毎日かあさん」もたびたび心を痛めて休載していた。あの画風作風は気の赴くままなのではなく、周到に計算された超絶技巧ということになる。そりゃ神経すり減るわ。


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