読書の記録

評論・小説・ビジネス書・教養・コミックなどなんでも。書評、感想、分析、ただの思い出話など。ネタバレありもネタバレなしも。

世界の奇妙な国境線

2008年05月14日 | 地理・地勢
世界の奇妙な国境線---世界地図探求会---新書

 雑学本の域を出ていないような気もするのだけれど、ひとつ示唆的というか考えさせられるのはアフリカ大陸。大戦前の民族分布と、戦後の先進国が勝手にひいた国境線のありかたを左右の地図で対比して見せている。後者のヨーロッパ諸国による人間社会や地勢を無視した直線的な国境の引き方は、有名だが、前者の“ここまでアフリカの民族は群雄割拠しているのか”という状況にびっくりする。特に、中央アフリカエリアや大西洋岸エリアあたりの民族分布の目の細かさは凄まじい。

 ジャレド ダイアモンドの「銃・鉄・病原菌」を読んだときに、緯度の違いによる交流の妨げは、経度のそれと比べてはるかに大きい、という話があり、なるほどなあと思ったのだが、緯度の違いは、植生や家畜の成育に違いをもたらす。要するに、緯度の違いは気候風土の決定的な断絶をもたらすのだ。
 この緯度と似たような効果を出すのが、高地と低地の関係で、つまりアフリカ大陸のように、南北に伸びてしかも地勢も険しいところはどうしても少数民族が群雄割拠しやすい。その宿命的な“まとまりにくさ”が、西洋諸国の台頭を許し、あまつさえ直線的な国境線を大胆に引かれ、今日の内戦や貧困問題にも関係しているように思う。

 ところで、縦に長い国といえばチリで本書にも紹介されている。チリは逆に「緯度の多様性」を上手に活かして、様々な資源のポートフォリオを組むことができた。地勢に行政が勝った例として、むしろ珍しいほうだと思う。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 柿の種 | トップ | うさぎドロップ »